プロローグ
皆様、初めまして!メア・デザートと申します。小説初心者です!
プロローグだったので、もう少し短めにしようと思っていたのですが、書きたいことが溢れ出てこんなことになってしまいました…(これでも削減した方なんです(汗))。
誤字や状況説明の言葉が足りず、意味が分からないなどのご指摘がありましたら、コメント欄にてご指摘いただければと思います!
西暦2020年、とある寒い日の夜、廃ビルの外階段を登っていく一人の女がいた。その女は、20歳くらいで、蒼いロングヘアー、動きやすそうに改造された着物を着ていた。カンカンと鉄の音がよく響き、何処か寂しさを感じられた。
女がビルの屋上に辿り着くと軽くため息をついた。視線の先には、18歳くらいの少年が大の字になって寝そべっていた。その少年からは呼吸音はおろか心臓の音すら聞き取れずまるで死んでいるかのようであった。女が少年を見つけてから数十秒後、女はさらに深くため息をつき、口を開いた。
「探したよ…。何してるの、リーダー?今日はリーダーの誕生日だって、皆張り切ってるのに主役がいないと始まらないんだよ…。」
少年はその言葉に反応して体を起こした。目が隠れるほどに伸びきった紫色の髪と左目を両断するかのように生々しく残る傷痕が特徴的である。リーダーと呼ばれた少年はそのまま立ち上がり、フードを被ってビルの転落防止柵を飛び越え、ビルのへりに腰かけた。女は左隣に腰かけ、共に街の景色を眺めた。眩しく光る車のライトや家々の明かりが街を明るく照らしている。そんな街の様子を眺めながら、少年はおもむろに口を開いた。
「誕生日なんてよく覚えてたな…。誰だ…覚えてたの…。」
「さあ?誰でしょう?リーダーにとっては一番の親友だと思うのだけれど…。」
「テッシーかよ…!俺、誕生日のことなんて気にするなって言ってなかったっけ…?」
少年は天を仰いで苦笑した。この少年にとって誕生日には苦い記憶があるのだ。親友を6人、同時に目の前で自分の誕生日に失ったことはいつまで経っても忘れることなど出来ない。
「今日は俺の誕生日じゃなくて、あいつらの誕生日だろ…。俺の生前の誕生日の日にちなんて忘れろよ。それと、今から太平洋に用事があってね、パーティーには行けなさそうだと伝えておいてくれ。」
それだけ言うと少年はビルの屋上から飛び降りた。廃ビルは25階建てだったため、「普通の」人間ならば、柵を飛び越えることすら恐怖する。それを躊躇なく行える少年は勿論「普通」ではない。半分ほど落下したところで、少年は黒く大きな翼を生やし、太平洋に向かって飛び立った。
「あ~あ、怒られるぞ~、私はどうなっても知らないからね。テツさんはリーダーのこと大好きなんだから、早く帰ってあげないと…。」
少年が飛び立った方を眺めながら女は可笑しそうに笑った。女の名前は冷座凍飛。地球の裏側、「裏世界」に住む住人である。
同時刻、太平洋上空では空中で爆発が起こっていた。高校の卒業旅行でハワイに行っていた学生達、76人が乗った旅客機のエンジンが爆発したのだ。突然の出来事に学生達はパニックに陥っていた。操縦席や他の乗務員との連絡が出来ないため、混乱は深まっていった。その中でただ一人、福口哲博だけが静かに席に座っていた。彼は落ち着いているのではない。諦めているのだ。素直に自分の運命を受け入れようと、悟りを開いていただけであった。
「う~ん、飛行機事故に巻き込まれる確率ってどれくらいだったかな…。」
「ちょっ…ちょっと!?こんな時に何を冷静に分析してるの!?」
周りがパニックに陥っている中で冷静な分析を始めた哲博に、的確な突っ込みを入れてきたのは、黄戸万結。テツヒロの元クラスメイトであり、3年間生徒会長を務めあげた学校内生粋の美少女である。「学校内で彼女にしたいランキング」(公式)で殿堂入りを果たすなど、本物の武勇伝を持つクラスの姉御的存在である。この二人はいとこ同士で家も近いため、とにかく仲がいい。
「いやぁ、もうこの運命を素直に受け入れるのも悪くないかなって。」
「真顔で言うことじゃないでしょ!?もう少しその運命に抗いなよ!」
周りには二人の話し声は聞こえていないのだが、この状況下でこの会話はかなり滑稽である。
「あぁ、思い出した。確か、468万分の1の確率だ…。」
「この状況下で一番要らない情報だぁ!」
そうこうしているうちに太平洋はどんどん近づいてくる。ガタガタと飛行機の揺れもだんだんひどくなってくる。学生達がこれから起こることを想像して頭を抱えたその時だった。飛行機の外から人の話し声が聞こえたのだ。
「本当にごめんな、「時空固定」。俺の気まぐれに付き合ってくれて。」
「いえいえ、リーダー、お安い御用ですよ。ただ、固有名で呼ぶのは勘弁してもらえますか…?時定竜時という名前でお願いしたいのですが…。」
「リュウジね、OKOK。じゃあさっそくだけど…。」
「分かっております!この航空機の時空間のみを停止させるのですね!」
「話が早くて助かるよ。このドアを蹴り飛ばすからそれを合図に…頼むね。」
話し声が止んだ瞬間、左前方のドアが吹き飛ばされた。哲博と万結の二人は話が聞こえていたため、そこまで驚きはしなかったが、その他の人間はドアが爆発したのかと思い、飛び上がって驚いた。しかし、ドアは吹き飛ばされた後、空中でピタリと止まった。破片等も空中に浮いたままなのだ。ドアには、くっきりと蹴り飛ばされた跡が残っていた。その場にいた全員が呆然としていると、開かれた入り口から一人の少年が現れた。少年は、迷彩柄の長ズボン、「4229」と白い文字でプリントされたフードつきの黒いパーカーを着用し、顔はフードを被っているせいで見えづらいが、紫色の髪が左目を覆いつくしていたのである。すると突然、
「おい!何睨んでるんだ、お前!」
少年の目の前にいた大男が立ち上がり、胸ぐらを掴みにいった。大男の名前は都本強獅。身長が180センチを超えており、喧嘩も強い。ただ、早とちりしやすいのが珠にキズな男である。少年の身長は170センチほど。このままでは少年が怪我をしてしまうと考えた万結が立ち上がろうとした瞬間、強獅に黒い影が飛びかかり、背中を蹴り、床へ叩きつけたのだ。あっという間の出来事にまたも呆然とした一同だったが、黒い影は背中を押さえて苦しんでいる強獅の脚を掴み、逆エビ反り固めを極め始めた。
「イッ…イデデデデデデッ…!?」
「いけない人です…、僕らのリーダーの胸ぐらを掴もうとするとは…。なんて愚かな、野蛮人でしょうか。」
黒い影は、10歳くらいの男の子だった。かわいらしい体躯に似合わないその野太い声に聞き覚えがあった哲博と万結は男の子がリュウジだということを推察した。
「さあ、僕らのリーダー、虎根友様!この者達にあなた様の素晴らしい御言葉を!」
リュウジは虎根友という人物に酔いしれているらしく、声が陶酔していた。だが、当の本人は、
「嫌だよ。面倒臭いし、時間無いし、取り敢えずさぁ…。」
トモはパーカーのポケットに手を入れ、何かを取り出した。その手に握られていたものは桃色の液体が入ったピンポン玉ほどのサイズの丸いカプセルだった。
「え…?な、何、あれ…?」
万結は目を凝らしてトモの手元を注視する。万結の行動に気づいたのかは不明だが、トモはそのカプセルを思いっきり床に叩きつけた。パリンという高い音がして、カプセルは粉々になった。桃色の液体はカプセルが割れた瞬間に蒸発し、桃色の気体となって機内の人間に襲い掛かった。
「この場にいる俺達二人を除いた全ての人間に眠ってもらう。恨むなよ、受け入れろ、これからの出来事を。」
気体に触れた人間がすやすやと寝息をたて始めたことにより、機内はまたパニックになった。万結も何をされるか分からないと判断し、シートベルトを外そうとしたが、まるで時間が止まっているかのようにピクリとも動かなかった。
「う、嘘!?何で!?シートベルトが…外れない!?」
それは、隣の席にいた哲博も同じ状態であった。
「か…固え…じゃねえ!まったく動かねえ!?一体何が…!?」
シートベルトと格闘しているうちに気体が哲博達を襲った。朦朧とする意識の中、哲博が、最後に確認できたのは、フードを外して左前髪を掻き上げ、生々しい左目の傷を晒した少年の顔であった。
自分とリュウジ以外が全員眠りに落ちたことを確認した友は、操縦席に行き、息絶えた操縦士の亡骸を優しく丁寧に端に寄せ、飛行機を操縦し始めた。
「リーダー、良かったですね!また新たな命が救われました!彼等を支配するおつもりは…?」
「無いって…。俺が支配欲無いの知ってて言っただろ、今。」
「勿論ですよ、さあ、早く裏へ帰りましょう!僕たちもパーティーに参加するのです!」
「嗚呼…、そうだな…。」
学生達76人と裏の人間二人を乗せた飛行機はそのまま姿を消した。
後日、日本では飛行機の墜落事故が新聞の一面を飾っていた。機体は行方不明、生存者は絶望的ということで、遺族や高校の後輩達、先生方、その他関係者達は深い悲しみと絶望に心を沈めた。
後々の話になっていくのですが、こういった能力を出してほしいというリクエストを受け付けようかと思っています。一応、80個ほどのストックはあるのですが、敵キャラの能力をまだあまり考えついていません(焦)。なので、そういったリクエストもコメント欄にて受け付けます。
ここまで、読んでいただき、ありがとうございました。次回も楽しみに待っていてください(1ヶ月に2、3回ほど投稿する予定です)。