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3 神官級と竜王級

「……大丈夫、怖くないよ」


 優しく微笑んで、ミラが近づいてくる。


 どう対応すべきだろうか。


 彼女は俺に敵意を持っていないように思える。

 が、他の連中は別だ。


 あからさまに警戒している者。

 さっさと狩ろうと身構えている者。

 興味がなさそうにしている者。


 大別して三種といったところか。


 俺だって、こいつらとわざわざ事を構えようとは思わない。

 戦うメリットも皆無だし、何よりも人間のときの故国の連中だからな。

 戦いたくなんて、ない。


「ミラ、何をしているの」

「相手はモンスターよ。早く討伐を」


 ミラの側で魔法使いと僧侶の少女が言った。


「このドラゴンから邪悪なものは感じません。コレット、鑑定していただけませんか?」


 と、ミラが僧侶の少女に呼びかける。

 黒髪を三つ編みにして、眼鏡をかけた美少女だ。


「討伐した方が早くない?」


 彼女──コレットが肩をすくめる。


 いや、そんなに軽く言うなよ。

 俺だってこんなところで殺されたくはない。


 騎士として死に、今度はドラゴンとして死ぬ──。

 あ、もしかして、次もまた転生したりするんだろうか。


 ……試してみたいとは、まったく思わないな。


「あら、善良な竜は神の御使いと言っていたじゃないですか」

「むー……あたしよりあんたのほうが僧侶っぽい台詞を言うね」


 コレットが口を尖らせた。


「しゃーない、【鑑定スキル(神官級)】──発動」


 告げた彼女の両目が妖しく瞬く。


 鑑定スキル、か。


 それって俺が持っているのと同じものだろうか?

 じゃあ、あいつにもナビみたいな存在がついてるのか?


『失礼ね、格が違うわよ』


 と、ナビ。


『あの子──コレットが所持しているのは「神官級」の鑑定スキル。私は「竜王級」の鑑定スキル。同じ鑑定スキルという名前でも、まったく別物』


 へえ、そうなのか。


『そうよ。感知できる範囲、情報量、効果対象──すべてが違うわ。私は高レベルになれば、世界のあらゆる物事から運命すらも鑑定できるんだからね。もっと敬いなさい』


 よく分からんけど、成長したらすごいスキルになる……って認識でいいか?


『オーケーよ。人間なんかが身に着けている鑑定スキルとは次元が違うの』


 かなり鼻息が荒い感じだな、ナビ。


 彼女(?)のプライドに触れる話題だったんだろうか。

 普通の鑑定スキルと一緒にして悪かったよ。


『ふふ、分かればいいの。というか、あなたって自分のスキルに謝ったりするのね』


 スキルっていわれても、お前はナビっていう人格みたいなものだろう。

 他の人間に接する感覚で話してるだけだ。

 と、


「鑑定終了。そいつの属性とおおまかな種族名、戦闘能力を見切ったよ」


 コレットが大きく息を吐きだした。


「戦闘能力はC+……それなり、といった評価ね。といっても、あたしたちの脅威になるほどじゃない。で、ミラの言う通り、善良なドラゴンみたい」

「では、討伐しなくてもいいですか」


 ミラがたずねる。


「んー、いいんじゃない? 善良なドラゴンは人に危害を加えないし、下手に殺すと上位の竜種に報復される危険性もあるしね」

「上位の竜種? 私……ワイバーンとかバジリスクとかけっこう狩ってるけど、そんな目に遭ったことない」


 魔法使いの少女が首をかしげた。


「普通の下位竜種を殺したところで上位竜種から報復されることはないよ、アビー。ただ、そのちっこいのは違う」


 彼女……アビーに説明するコレット。


「そいつ、暗黒竜王の下位眷属」

「暗黒竜王……?」

「古代神話の一節に登場する伝説の最強竜種よ。エレノアの宝物庫にその牙が保管されている、とか聞いたことがある」


 下位眷属というか、俺は暗黒竜王そのものだと思うんだが……。

 ……だよな、ナビ?


『ええ。あなたは「暗黒竜王」の称号を受け継いだ存在。今はただの雑魚だけど、成長を重ねていけば、真の暗黒竜王として覚醒するはずよ』


 ナビが言った。

『ただの雑魚だけど』は余計だ。


『あはは、ごめんごめん』


 あっけらかんと笑うナビ。


『たぶん、彼女の鑑定能力ではあなたが「暗黒竜王」の称号持ちということまで読み取れないんでしょ。で、現在の戦闘能力や成長度から見て「下位眷属」と推測したんじゃないかな』

「ともかく、そいつを殺すと暗黒竜王に目を付けられる危険性があるってこと。脅威になりそうな個体でもないし、見逃すのがベストじゃない?」

「なるほど……」


 うなずくアビー。


「では、他の方々も……このドラゴンは見逃すということでよいですか?」


 ミラが全員を見回してたずねた。


「……まあ、いいだろう」


 答えたのは連中のなかでリーダー格らしき壮年の騎士だ。


 他のメンバーも異議なしという様子だった。

 どうやら一戦交える必要はなさそうだ。


「ごめんね、ちょっと驚かせちゃった」


 ミラが俺に頭を下げた。


「あたしたちには任務があるから、そろそろ行くね。ここは危険な場所よ。なるべく安全なところを選んで生活してね」


 にっこり微笑んだミラは、しゃがみこんで俺の頭を撫でた。


 ……ドラゴンになってから初めて触れた人の手は。

 なんだか、すごく温かく、懐かしい感じがした。

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