10 黒鎖牢獄
「おそらくは、間違いあるまい。お前はエレノアに縁のある人間なのだろう? なんらかの理由で牙を宿し、そして暗黒竜王へと受肉、転生した」
告げる魔導王。
その辺りのことは、『暗黒竜王の神殿』に行ったときに大体理解していた。
俺は魔導王の軍勢に殺された後、神殿に魂を運ばれ、一か月かけて暗黒竜王の幼体へと転生した。
ただ、『暗黒竜王の牙』というのを宿していたことは分からなかったが……。
「お前の体の核には、その牙があるはずだ。余はそれを媒介にして、お前の力を手に入れる──」
魔導王が立ち上がった。
こつ、こつ、と玉座から続く階段を下りてくる。
俺たちのところまで。
こいつ、何をする気だ──。
『ミラ、コレット、リーリア。気をつけろ』
俺は背から彼女たち三人をいったん下ろした。
『奴の狙いは俺だ。いざというときは、お前たちだけでも逃げろ』
「ドラゴンさん、あたしたちも戦います」
剣を抜くミラ。
「当然でしょ。あたしが魔法であんたたちを守ってやっから」
コレットが錫杖を構える。
「私もだ。奴を倒す」
勇ましく杖を掲げるリーリア。
「抵抗は無駄だ。余が生み出した禁呪法の前には」
魔導王が両手を掲げた。
まるで神に祈りを下げるように。
「さあ、我が元に来たれ、竜王の力よ! ──禁呪法【黒鎖牢獄】」
その瞬間、俺の視界は反転した。
「ここは──?」
気が付くと、いつの間にか、竜ではなく人間の騎士の姿になっている。
場所も、さっきまでの謁見の間じゃない。
精神世界である『内なる境界』のようだ。
「さっきの魔導王の魔法で、強制的に転移させられたのか……?」
『正確には魔導王様の魔法とあたしのスキル【精神石化】の合体技だね~』
前方の空間が揺らぎ、一人の少女が現れた。
十代半ばくらいの、可愛らしい女の子。
ただし、その髪は蛇でできていた。
石化魔女だ。
『あたしは「聖蛇姫」。魔導王様の側近よ』
神樹伯爵や機甲巨人、天翼覇竜と同格のモンスターか。
見た目は単なる女の子だが、油断していい相手じゃない。
俺は腰の剣を抜いた。
『暗黒竜王の依り代。人間としての名はガルダ・バールハイト』
聖蛇姫が俺を見据える。
ギラギラと輝く妖しい瞳で。
『あんたを消せば、暗黒竜王の「力」は持ち主不在の状態になる。それを魔導王様が手に入れる──だから』
聖蛇姫の蛇髪が、ざわり、と揺れた。
『あんた、消えて』
その蛇がいっせいに俺に向かってくる。
「くっ……!?」
剣でその蛇を薙ぎ払うが、数が多すぎる。
腕に、足に、無数の蛇髪が絡みつき、俺はあっという間に拘束されてしまった。
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