5 出発
「魔導王に決戦を挑む──そういうことですか、ドラゴンさん?」
ミラがたずねた。
緊張の面持ちだ。
『現在の奴は、アルバ公国の近くに陣取っていたはずだ。各国への侵攻状況を見る限り、新たな側近モンスターは補充できてないようだし、今が好機だろう』
神樹伯爵、機甲巨人、天翼覇竜。
俺は魔導王の側近をすでに三体撃破している。
そして、俺自身のステータスも、その側近たちと大差ないほどに高まっている。
さらに切り札ともいえるスキル【魂の根源】を得た。
『そうね……魔導王の側には強い生体反応が一つあるだけ。たぶん、それが側近モンスターでしょうね』
と、ナビ。
『つまり、奴の周囲にいる側近は一体だけ、ということか』
『私が鑑定する限りではね』
俺の問いにナビが答える。
『よし、行ってみるか』
俺は決断した。
もう少し熟慮した方がいいだろうか?
きっと──俺の行動は性急に過ぎるんだろう。
だが、これ以上待てなかった。
魔導王を一刻も早く止めたい。
魔導王を一刻も早く倒したい。
それは、暗黒竜王に転生して以来、ずっと俺の心の真ん中にある思いだ。
今こそ、その思いを果たすとき──。
『敵の本拠に乗りこむ、となれば、今までとは危険が段違いだ。ミラたちはここに残ってくれ』
俺はミラたち三人に言った。
「そんな! あたしはドラゴンさんと一緒に行きます!」
ミラが首を振る。
『だが危険が──』
「危険じゃない戦いなんてありません」
俺をまっすぐに見据えるミラ。
思った以上に意思が固いようだ。
「あたしだって、魔導王の軍団に姉を殺されてるんですよ。その仇を討ちたいです」
「それにアビーの仇も、でしょ?」
コレットが言った。
「あたしも一緒についてくから。拒否なんてしたら許さねーからね」
『コレットまで……』
「ま、仲間を殺されて黙ってられるほど達観してないし。落とし前つけに行かねーと」
コレットがふんと鼻を鳴らした。
「当然、私も行くぞ」
さらにリーリアが進み出た。
「成り行きで君たちとともに行動することになったが……今はもう、君たちは大事な仲間だと思っている。最後まで付き合わせてくれ」
『危険だぞ』
「分かっているさ。だが、君が守ってくれるんだろう? 私たちのナイトとして」
リーリアが悪戯っぽく笑う。
「だね」
「お願いします、ドラゴンさん。もちろん、あたしたちだって戦力になれるよう努めます」
うなずくコレットと、あくまでも生真面目なミラ。
『危なくなったら、まず自分の身を守ることを第一に考えてくれ』
俺は小さく息をついた。
『人間はドラゴンに比べて耐久力がずっと低い。生命力もな。俺は、お前たちに死んでほしくない』
「はい、ドラゴンさん」
「あたしだって死にたくねーし」
「私もだ」
ミラたちは異口同音にうなずく。
よし、出発だ。
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