17 脱出
『馬鹿な……こんなことが……ぁぁぁぁぁっ……!』
天翼覇竜が愕然とうめく。
苦鳴とともに、奴の体が体内から連鎖爆発を起こす。
いくら竜戦気で無敵に近い防御力を誇ろうと、体内に直接攻撃を受けてはどうしようもない。
紅蓮の炎を吹き出しながら、天翼覇竜がゆっくりと倒れる──。
『……だ、だが、ただでは死なんぞ……』
ばさり、と巨大な翼を羽ばたかせ、天翼覇竜がふたたび立ち上がった。
こいつ、まだ──。
『いえ、様子が変よ。どう見ても戦える状態じゃないし、もしかしてあいつ──』
『くくく、お前たちも吹き飛ぶがいい……暗黒竜王の力が手に入らないなら、せめて魔導王様の邪魔になりそうなお前をここで始末する……!』
『……っ!? ミラ! コレットやリーリアと一緒に、俺に乗れ!』
慌ててミラに呼びかける俺。
「分かりました、ドラゴンさん!」
彼女もすぐに事態を悟ったのだろう。
コレット、リーリアを連れて、俺の背に乗った。
俺は翼を広げて飛び上がる。
スキル【大飛行】発動──。
ほぼ同時に、
『ま、魔導王様に栄光あれーっ!』
天翼覇竜の体がどんどん膨らんでいった。
さながら風船のように。
そして、爆発──。
俺たちは空に開いた穴から脱出した。
が、最下層を飛び出しても、周囲が爆発によって崩落していく。
「【フラムプロテクション】!」
コレットが中級の防御魔法を唱えた。
俺の体全体を防御フィールドが覆う。
「長くは持たねーから! 早いとこ脱出して!」
コレットが叫ぶ。
了解だ。
俺は心の中でうなずき、翼を最大限に羽ばたかせて上昇した。
神殿全体がどんどん崩れていく中、俺はブレスで前方を吹き飛ばし、通り道を確保しつつ、全速力で飛ぶ。
コレットの防御魔法が飛んでくる瓦礫をすべて防いでくれる。
が、緑色の防御フィールドには少しずつ亀裂が入ってきており、やはり長くは持たないようだった。
その前に──脱出してみせる!
俺はひたすらに飛び続け、とうとう神殿の上部を突き抜けて、空に出た。
ふう、なんとか崩落による圧死は免れたようだ。
と、
「見てください、神殿が……」
ミラが呆然とした顔で崩壊した神殿を見つめている。
コレットとリーリアも同じような様子だ。
そして俺も。
天翼覇竜の自爆によって、『暗黒竜王の神殿』はほぼすべてが崩れ落ち、瓦礫の山と化していた。
『鑑定してみたけど、神殿のシステムは完全に壊れてるわ』
ナビがつぶやいた。
神殿のシステムを流用すれば、俺の精神力を利用して『真の暗黒竜王』の体を作ることができる──だが、そのシステムは失われてしまった。
魔導王に対して切り札になり得るシステムだったかもしれないが、また別の戦う手段を見つけなければならない……。





