15 暗黒竜王VS天翼覇竜5
……さっきのブレスは厄介だな。
俺は緊張感を高め、天翼覇竜を見据える。
とにかくブレスを吐くための予備動作を見逃さないことだ。
反応がわずかでも遅れれば──やられる。
そうだナビ、『災いの波動』のクールタイムが終わったら、もう一発撃って、奴の竜戦気を無効化する──ってのはできないのか?
いちおう確認のために聞いてみる。
『駄目よ。あれはあくまでも「特殊防御」に効力を発揮するの。竜戦気は防御能力も備えているけど、本質は対象者の能力アップスキルみたいなものだからね。「災いの波動」の効果はないわ』
やっぱり、そうか……。
じゃあ、地道にやるしかないな。
とりあえず、さっきのブレスにまず気を付けよう。
『天翼覇竜のドラゴンブレス自体も威力が高いけど、竜戦気がその威力を何倍にも高めてるからね。竜王とまではいかなくても、古竜並の威力よ』
竜王を除けばドラゴン族の中で最強と呼ばれる種族、古竜。
それと同等のブレスでは、さすがに今の俺のブレスでは撃ち勝てない。
『どうした? かかってこないなら俺からいくぞ』
天翼覇竜が大きく口を開いた。
ドラゴンブレスか!
俺は奴の射線上から逃れようと、横に移動し──、
『ブレスだと言った覚えはないぞ!』
その瞬間、天翼覇竜が一歩踏み出した。
そのまま突進してくる。
翼を羽ばたかせ、【飛行】スキルの推力を上乗せし、巨体からは信じられないスピードで俺に肉薄する。
ちいっ、ブレスを吐くと見せかけたのはフェイントで、本命はこっちの突進攻撃か!
俺も翼を羽ばたかせ、その推力を使って加速した。
さっき負傷した翼の先端部が痛むが気にしていられない。
天翼覇竜から距離を取ったところで、
──食らえ、『大罪の氷雪』!
ドラゴンブレスを吐き出した。
『無駄だ! その程度のブレスで俺を凍らせることなど──』
ああ、無駄だろうな。
天翼覇竜の本体を凍らせようとしたならば。
だから──俺の狙いは、別の場所だ。
『むっ……!?』
『大罪の氷雪』は天翼覇竜ではなく、その足下に着弾した。
たちまち床一面が凍りつく。
次は、こいつだ!
俺は続けざまに『滅びの光芒』を放った。
ごがぁぁぁぁぁっ……!
凍りついて脆くなった床が、ぼろぼろに砕ける。
『む……うっ』
足元が悪くなり、天翼覇竜の動きが鈍った。
その間に俺は後退し、さらに『大罪の氷雪』と『滅びの光芒』を交互に撃って、床一面を砕き続ける。
これで、奴の機動力は奪った。
あとは、時間を稼ぐだけだ。
『ちっ、動きづらくはなったが──逃げられはせんぞ!』
天翼覇竜が床を踏み砕きながら、ゆっくりと近づいてくる。
そう、逃げるのは無理だ。
このフロアはかなり広いが、しょせんは遺跡内。
いずれは壁際に追い詰められるだろう。
空に逃げたところで、俺の傷ついた翼では天翼覇竜を振り切るのは無理だ。
だけど、逃げはもう必要ない。
そろそろだよな、ナビ?
『ええ、たった今、タイムカウントが0になったわ』
ナビの声がする。
『神殿内のシステム起動を確認──反撃開始よ、ガルダ!』





