14 暗黒竜王VS天翼覇竜4
るおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
咆哮とともに、天翼覇竜の全身から漆黒のオーラが立ちのぼった。
『あれは──まさか、竜戦気!?』
ナビが叫んだ。
なんだ、竜戦気って?
『選ばれたドラゴンだけがまとうことのできるエネルギーよ。あのエネルギーの前では魔力も物理もほとんどがはじき返されてしまう。攻撃に使えば、防ぐ手段はほぼないわ』
ナビの声が硬い。
『まさに攻防無敵──最強の力ね』
そういえば、と思い出す。
俺が見たビジョンで暗黒竜王が全身からオーラを放出していたことを。
『そう、七大竜王やそれに近いクラスの竜しかまとえないはずの竜戦気を、天翼覇竜は放出している。今までとは攻撃も防御も比べ物にならないくらいアップするはずよ』
そいつは難儀な敵だ。
ナビ、神殿のシステムを使うって言ってたけど、準備はどうだ?
まだ時間はかかりそうか?
『ええ、解析は終了。起動シークエンスも半分がた終わったわ。後は私ができることはないわね。ただ待つだけよ』
と、ナビ。
『時間にして、残り五分程度かしら』
五分……か。
日常においては、すぐに過ぎ去るような時間だが、今の天翼覇竜を前にして五分を稼ぐというのは、なかなかの重圧だ。
けど、やるしかないよな。
『聞こえていたか、ミラ。俺の攻撃準備が整うまでに五分ほどかかる。その間は、奴の攻撃を凌ぐ必要がある』
「分かりました」
ミラはうなずいて、コレットとリーリアに俺の話を伝える。
と、
『まずはこいつで──どうだ!』
天翼覇竜がブレスを吐き出す。
閃光のブレスにオーラがまとわりつき、紫色に輝く別種のブレスに代わった。
自分のブレスと竜戦気を融合した強化ドラゴンブレスか!?
ちいっ、こっちも──!
俺は青白いドラゴンブレス──【滅びの光芒】を吐き出す。
きゅごおぉっ……!
俺のブレスは敵のブレスに飲まれ、一瞬で消え去った。
な、何……!?
ここまで威力に差があるとは──。
スキル【飛行】発動!
俺はとっさに前脚でミラたちを抱え、全力で羽ばたいた。
その場から高速で離脱する。
強引に飛行を行ったため、翼の付け根がちぎれそうな痛みが走った。
ぐうううっ、飛べ、俺の体!
もっと速く──。
ごおおおおおっ……!
間一髪、俺は天翼覇竜のブレスの射線上から逃れた。
翼の端をかすめ、焼き焦がされる。
遺跡の床が溶け、吹き飛び、その下の地面がえぐれて爆発した。
衝撃波が周囲を激しく揺らす。
空全体に震動が走り、あちこちに亀裂が走った。
さすがにすさまじい威力だ。
俺も、ブレスがかすめただけで翼を負傷してしまった。
痛みが走るものの、飛行には支障ないだろう。
『ほう、よく避けたな』
天翼覇竜が耳元まで裂けた口の端を吊り上げ、ニヤリと笑った。
『だが、次は外さん』
確かに、この翼では次のブレスが来たときに同じような回避はもうできない。
ナビ、残り何分だ?
『……三分よ』
なかなかハードだな。
俺は、ふしゅうっ、と細い息を吐き出しつつ、天翼覇竜を見据えた。





