5 暗黒の力の真実2
『我が力はお前の周囲の人間が生け贄に捧げられるほどに大きくなる』
暗黒竜王が告げた。
『生け贄がお前により近しい者であればあるほど、生け贄がより多ければ多いほど、強大な力を発揮できる』
「馬鹿な……じゃあ、お前の力を利用するためには、これからも周囲の人間が死ななきゃいけないっていうのか!」
『魔導王とやらを倒したいのだろう? 安い犠牲では』
「ふざけるな!」
俺は思わず叫んでいた。
腰に下げた剣を抜き、構える。
「俺は人を守るために騎士になった! 今はドラゴンに転生しているが、志は同じだ! 誰かを生け贄にしてまで強くなるなんて真っ平だ!」
『ふん、ならばお前はお前の道を貫けばよい。強制はしない。今はお前こそが「暗黒竜王」なのだからな』
暗黒竜王が笑う。
俺は剣を構えたままだ。
前方で巨体を揺らす暗黒竜王は──今までは、まがりなりにも『味方』だと感じていた。
だが、今は違う。
得体の知れない怪物に見えていた。
『ただ、覚えておけ。我の力の根源は「闇」だ。その力を欲すれば、お前自身も闇に染まっていくだろう。そして、おそらくは周囲も──』
「くっ……!」
目が覚めると、朝だった。
くそ、嫌な夢を見た。
『大丈夫、ガルダ?』
ナビの声が頭の中で響く。
こいつは──夢の内容を知ってるんだろうか?
『夢? なんのこと?』
──いや、なんでもない。
『いくら私でも夢の内容までは見れないわよ』
と、ナビ。
なあナビ、一つ聞いていいか?
『ん、何?』
実はさっき夢を見たんだけど、そこで暗黒竜王が──。
と、さっきの夢の内容を語る。
『……そうね。暗黒竜王とは「闇」の力を総べる竜。その力の源はあらゆる負の想念……それは間違いないわ』
ナビが言った。
じゃあ、生け贄を捧げなきゃ、俺は暗黒竜王の力を引き出せないのか?
『いえ、あくまでも「生け贄があれば力を引き出しやすい」という話よ。あなたが成長していけば、そんな触媒がなくても、素で力を引き出せるようになる』
成長していけば、か。
逆に言えば、手っ取り早く暗黒竜王の力を引き出すには、生け贄を捧げる必要がある、ってことだよな……?
『──そうよ』
答えるナビ。
もちろん、そんな道を選ぶわけにはいかない。
俺は地道に成長を重ねて、素の状態で暗黒竜王の力を引き出せるようになってみせる──。
数時間後、俺はミラたちを乗せて、都市から飛び立った。
さらに数時間の飛行でエレノア王国の上空まで到達。
行く手に、小さな神殿が見えてきた。
「あれは──」
ミラが前方を指さす。
「暗黒竜王の神殿だ」
リーリアが答えた。





