4 暗黒の力の真実1
市民からミラへの賞賛は、続いていた。
割れるような歓声。
人々の笑顔。
高揚した叫び声。
それらはすべて、この都市を救った美しき女騎士に向けられたものだ。
「これでいいんでしょうか、ガルダ様」
ミラが小声で俺に話しかけた。
「敵を倒したのはほとんどガルダ様のお力です。なのに、あたしの方が賞賛されて──」
『モンスターである俺よりも人間のミラの方が賞賛や敬意を受けやすいのは当然だろう。それに──お前なら、魔導王に対抗するシンボルになれるんじゃないか』
「シンボル……?」
『いずれ奴をエレノアから追い出すために、俺は決戦を仕掛ける。そのときに──お前が魔導王打倒のシンボルになれば、きっと王国のみんなにとって希望の光として映るだろう』
「あたしが、そんな役割を……」
『町の人たちの反応を見ていると、そんなふうに感じるんだ。「魔導王の軍勢を蹴散らした美少女騎士」っていうのは、きっと人々の希望になる』
「び、美少女っ!? や、やだやだ、ガルダ様ったら、もう……っ」
いきなりミラが真っ赤になった。
『どうした、ミラ?』
「恥ずかしいです……」
『戦闘のときはあんなに堂々としてるのにな』
「それとこれとは違いますっ。それに……ガルダ様がいきなり『美少女』なんて言うから、よけいに照れてしまうんです……っ、もう」
ミラはますます顔を赤くする。
ちょっと反応がオーバーすぎる気もしたが、まあ多感な年ごろだしな……。
俺たちはこの都市で一日休み、英気を養ったうえで、ふたたび遺跡に向かうことにした。
ミラを始め、コレットとリーリアも人々から歓待の宴に招かれている。
俺は一人で、空き地にたたずんでいた。
竜用の厩舎は爆撃ですべて燃え尽きてしまったため、ここで一晩を過ごすことにしたのだ。
空には、満月が輝いていた。
ドラゴンに転生して以来、ずっと森にいたから、こうしてモンスターの襲撃におびえずに一夜を過ごせるのは初めてだ。
俺は安心して眠りにつき──、
『順調に成長しているな、ガルダ』
意識の中で、『真の暗黒竜王』に声をかけられた。
俺は例によって、人としての姿だ。
身長100メートルを超える巨大な黒竜を仰ぎ見る。
「早いところ、お前の力を使いこなせるようになりたいからな」
『ふむ。魔導王とやらを打倒するためには、まだまだつよくならなければならん──か。だが我の力をさらに引き出すためには、生け贄が足りんな』
「生け贄?」
一体、なんの話だ?
『以前の戦いで、なぜ我がお前に力を貸したと思っている。無論、お前が求めたからこそだが……それだけでは我の力を発動することはできん』
と、暗黒竜王。
『発動の鍵は、生け贄を捧げることだ』
「生け贄だと……まさか……!」
俺はごくりと息を飲む。
そして、思い出す。
俺が過去に二度、『真の暗黒竜王』の力を──その一部を体現したときのことを。
一度目は、神樹伯爵にアビーが焼き殺された。
二度目は、機甲巨人にキュールが踏みつぶされた。
いずれも仲間が犠牲になったときだ……。





