3 歓待
ほどなくして、俺はミラとともに『ファイアヤングドラゴン』をすべて撃墜した。
大半は俺が倒したが、ミラも数体倒している。
眼下では、城塞都市のあちこちから火の手が上がったままだ。
と、
「おおおおっ、ドラゴンを全部片付けてくれた!」
「やった、俺たちは助かったんだ!」
「ありがとう、ありがとう!」
都市から歓声が聞こえてきた。
「見てください。みんなが、あたしたちに手を振ってます」
ミラが眼下を指さした。
確かに、あちこちから人々が俺たちを見て、感謝の声を上げたり、手を振っている。
「ちょっと降りてみない?」
言ったのは、コレットだ。
「あたしたち、きっと英雄扱いされると思うし」
「でも、先を急ぎますから」
『いや、英気を養うのもいいかもしれない』
反論するミラに、俺が言った。
『モンスターとなってしまった俺とは違い、ミラたちは人としての生がある。一つの町を救った実績というのは、お前たちの人生に大きなプラスになるだろう』
「あたしたちの、人生に……?」
『昇進か、褒賞か、あるいは別の何かか──受け取っておけばいいと思う』
「あたしは褒美が目当てで戦ったわけではありません」
生真面目な返答だった。
『ああ、ミラは純粋に人を助けるために剣を振るったんだろう。でも、彼らはそんなお前に感謝してるんだ。その気持ちは堂々と受け取ればいいのさ』
「堂々と……」
『俺も人間のころは「騎士の中の騎士」なんて大層な呼ばれ方をしていたからな』
英雄として称えられる人間にとって、民衆の賞賛を堂々と受け、英雄らしく振る舞うのは一種の責任だと思う。
だから──ミラも、そんな英雄としての人生に一歩踏み出しているのならば、ここは彼らの前に堂々と立つべきなのかもしれない。
「……ドラゴンさんがそう言うなら」
ミラはどこか納得がいかない様子だったが、うなずいてくれた。
まあ、本音を言えば──。
英雄らしく振る舞うとか、そんな理屈より何よりも。
俺はただ、仲間たちが褒められ、称えられるのを見たかっただけなのかもしれない。
そう長い付き合いじゃないけど、すっかり情が移ってしまったらしい。
俺はミラたちを乗せて、ゆっくりと町の中に降下した。
大通りに着地する。
大勢の群衆が俺たちを囲んだ。
『ほら、ミラ。コレットやリーリアと一緒に挨拶してやれ』
「は、はい」
促すと、ミラは俺の背から降りた。
それに続き、コレットとリーリアも降りる。
「おおお~!」
「町を救ってくれた英雄様だ!」
「三人とも綺麗……!」
「あの騎士の女の子が竜を斬り伏せていたんだ。俺、見てたぞ」
「竜騎士様か!」
「ど、どうも……エレノア王国騎士団所属ミラ・クレスプと申します」
ミラがぺこりと頭を下げた。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
歓声が一気に広がる。
いかにもこういうシチュエーションに慣れてない初々しさが、町の人たちには好意的に映ったらしい。
「うわ、すごい人気だね……」
「まあ、実際に活躍したからな、彼女は。美人だし」
後ろでは、コレットとリーリアが話していた。
「美貌ならあたしだって負けてねーけど?」
「君は、今回の戦いでは何もしてないだろう? まあ、私もだが」
「それはそうだけどさ……」
コレットが不満げにこぼし、リーリアが苦笑していた。





