15 暗黒竜王VS機甲巨人1
さながら、絶対不可侵──。
まったく歩みを止めることなく、機甲巨人は進み続ける。
「こ、こっちですぅ!」
キュールが走り出した。
素早い動きで巨人を惑わせつつ、背後に回りこむ。
足首のあたり──ちょうどパーツの継ぎ目に斬撃を叩きつけた。
やるな。
俺は感嘆した。
あれだけ巨大な相手を前にしても一歩も臆さない勇気。
そして相手の死角に潜りこむスピード。
年若いが一流の剣士だ。
ぎしりっ……。
表面装甲が歪み、継ぎ目に亀裂が走り──。
一瞬で、再生した。
「えっ……?」
呆然と立ち尽くすキュール。
『我が体は不可侵だ。魔導王様にいただいた究極の素材でてきている、ゆえに──何人たりとも傷つけられん』
巨人が体を揺らして笑う。
『そら、今の一撃に罰を与えてやろう』
まずい!
俺は慌てて飛び出そうとするが、距離が遠すぎる──。
「ひ、ひいいいいっ、助け……ぶぎゃ……ぁ……」
恐怖の絶叫は、肉と骨が一緒くたに潰れるような音によってかき消された。
「あ……ああ……」
リーリアが呆然とした顔でへたり込む。
股間にじわりと染みが広がっていった。
視線の先には、原形を止めぬほどにつぶれてしまったキュールの姿。
そう、あの日──無惨に殺されたカレンと同じように。
若く美しい少女剣士は、ただの潰れた肉塊へと姿を変えていた──。
「キュールが……キュールがぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リーリアが絶叫した。
失禁したまま立ち上がれないようだ。
「殺される! 私たちはみんな殺されるんだ! ひいいいい、助けて、神様あああああああああああっ!」
「──大丈夫です、リーリアさん」
ミラが静かな声で彼女を諭した。
「まず落ち着きましょう。簡単に心は静まらないでしょうけど、落ち着く努力を。そして考えましょう。あたしたち全員が生き残る道を」
「キュールは死んだ。まずそれを受け止めて」
と、コレット。
「そのうえで──あいつへの対抗策を練るの。あたしたちみんなで」
「うううううう……」
恐怖からか、絶望からか、リーリアは歯をガチガチと鳴らしたまま動かない。
このまま逃げずにとどまっていたら、全員が機甲巨人に踏みつぶされるだろう。
それこそ、さっきのキュールのように。
「ここは俺が奴を引きつける! そっちは頼むぞ,ミラ!」
唯一、俺と意思疎通ができるミラにそう叫び、翼を広げる。
スキル【大飛行】発動。
俺は空中100メートル近くまで一気に飛び上がると、ドラゴンブレス『滅びの光芒』を放った。
進化したおかげで、今の『滅びの光芒』は基本攻撃がLV2相当になっている。
以前はクールタイムが発生したが、それもゼロである。
要は、いくらでも連発できるのだ。
貫け!
湧き上がる闘志と殺意を込めて、俺はブレスを吐き続けた。
螺旋状に回転する光線が、雨あられと降り注ぐ。
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