13 新パーティ2
ん、あれって──。
『バレットロックね』
ラシェルの大森林でも戦ったことがある。
そう、俺が最初に『進化ポイント』を手に入れたときの相手だ。
今なら、楽に狩れるな。
俺は眼下のバレットロックに向かって、ドラゴンブレスを撃った。
全部で六体。
労せずして進化ポイントを得ることができた。
しばらく飛ぶと、次に現れたのはダークバイソン。
名前の通り、漆黒の牛型をしたモンスターだった。
これもブレスで一撃。
後には、こんがりと焼けたダークバイソンの死体が横たわっている。
こんな感じで、俺はチマチマと経験値稼ぎを重ねていた。
目的地に向かう道中、モンスターと出くわす機会がそれなりにあったからな。
中には進化ポイントを得るための対象──レアリティ4以上のモンスターもいた。
そいつらを倒したおかげで、現在の進化ポイントはそれなりにたまっている。
もう少ししたら、新たな進化を迎えることができるんじゃないだろうか。
と、
「ねーねー、ダークバイソンってかなり美味らしいですぅ」
キュールが言った。
「美味?」
「……ちょっと食べてみたい、かも」
「同じく」
ミラ、コレット、リーリアが異口同音に反応する。
「じゃあ、決まりですぅ。キュールがさばきますね。こう見えても【料理】スキルを取得してたりするので~」
木の葉を重ねて作った皿の上に、香ばしい匂いのステーキが乗せられている。
キュールが即席で料理したものだ。
ダークバイソンの肉を解体していく手際といい、絶妙の焼き加減といい、本職の料理人顔負けである。
「おいし~い!」
ミラとコレットが同時に叫んだ。
二人ともホクホク顔だ。
「うん、確かにいけるな。あいかわらず料理上手だよ、キュールは」
リーリアも普段のクール顔に、蕩けそうな表情を浮かべている。
「これならいいお嫁さんになれる」
「やだなぁ、キュールはリーリアと一緒に過ごせたら、それで満足……」
「ん?」
「あ、ううん、なんでもないですぅ!」
なぜかリーリアを見て顔を赤らめたキュールは、すぐに両手をぶんぶんと振った。
「???」
リーリアの方はキョトンと首をかしげている。
「そ、それより、キュールの焼いたダークバイソンステーキはどうですか?」
「最高です」
「しばらくは携行用の糧食ばかりだったから、余計に美味しく感じる」
ミラとコレットが微笑む。
「うふふ、どんどん食べてくださいね~」
キュールはドヤ顔だった。
俺はそんな四人の掛け合いを少し離れた場所で見つめている。
和やかで、楽しげで──。
見ているだけで、心が癒されるようだった。
ああ、いいなぁ、と思う。
『ちょっと感傷的になってない、ガルダ?』
ナビがからかうように言った。
感傷的って……俺はただ和んでいただけだ。
『あなたはもう人間じゃない。ドラゴンだもの。もしかしたら切なくなってないかな、って』
と、ナビ。
切ない……どうだろう。
『寂しくなったら、内面世界で私が慰めてあげるからね。あの世界ならガルダも人間の姿で実体化できるし、私も人の姿を取れるし』
内面世界って、この前の場所か。
『基本、二人っきりだからね。イチャラブし放題だよ』
……イチャラブしたかったのか、ナビ。
『っ……! や、やだなー、もののたとえだってば! たとえ! わ、私は別に、ガルダのことなんてなんとも思ってないんだからねっ!』
どうしたんだ、ナビは。
彼女の態度の変化に戸惑いつつも、俺はふたたび四人を見つめた。
和気あいあいとした雰囲気に心が和む。
特別なイベント、というわけではない、平凡な日常の一場面──。
そんな場面が何よりもかけがえのないものだと、俺は知っている。
すべてを失ってから、思い知った。
もう二度と帰らないあの日を。
家族も、友も、仲間も、淡い恋心を抱いていた相手も──。
すべては侵略の炎の中に消え、失われてしまった。
……なんて、な。
やっぱり感傷的だろうか、俺は。
だが、たまにはこういう気持ちになるのもいいかもしれないな。
俺が、人であった残滓のようなもの。
俺に残されたひとかけらの、人の証。
それを胸に抱き、竜としての生を突き進む。
それが今の俺、暗黒竜王ガルダ・バールハイトなんだ。





