12 新パーティ1
「へえ、すごいな……」
「空を飛んでるますぅ! キュール感激ですぅ」
二人の冒険者がはしゃぐ。
俺は現在、ミラ、コレットに加え、新たに知り合った二人の美少女冒険者リーリアとキュールを背に乗せ、【大飛行】スキルで空を進んでいる。
あの水浴びの後、俺たちはそろって神殿を目指すことになったのだ。
「えへへ、ドラゴンさんはすごいでしょう」
なぜかミラが自慢げだった。
「しかし、四人も乗せると飛行持続時間が落ちたりしないのかな?」
たずねるコレット。
……確かに、そこは気になるところだ。
どうなんだ、ナビ?
乗せる人数が増えると【大飛行】の効果時間が変化するのか?
『それは大丈夫』
と、ナビ。
『まあ、多少疲れるかもしれないけどね。スキルの効果時間は何人乗せようと変化なしよ』
なるほど、覚えておこう。
「いいなぁ……これなら世界中だって旅できるじゃないか」
リーリアが目を輝かせた。
「このクエストが終わったら四人で世界を駆けまわりたいですぅ」
キュールがはしゃぐ。
「四人で……いいですね」
「ピクニックじゃないんだから」
嬉しそうなミラと、苦笑するコレット。
好対照の反応だ。
「まあ、考えてみてくれよ。君たちは二人ともかなりの腕前なんだろう? 気配でわかる」
「仲間に加わってもらえたら、とても心強いですぅ。キュール嬉しいですぅ」
リーリアとキュールが交互に言った。
「女二人だけのパーティだと何かと物騒だからね」
「まあ、それはあたしたちも同じですね……」
うなずくミラ。
「前は三人だったんだけどね……」
コレットがぽつりとつぶやいた。
神樹伯爵との戦いで焼き殺されたアビーのことを思い出しているのだろう。
「仲間を……失ったのか」
「つらいですね……」
リーリアとキュールが神妙な顔になって言った。
「それは……戦いの常ですから」
ミラが悲しげにため息をついた。
「アビーや仲間たちだけじゃありません。王国騎士をしていたあたしの姉も、先の戦いで亡くなりました……」
ミラの姉とはカレンのことだ。
俺が人間だったころの同僚の騎士であり、淡い想いを抱いていた相手でもある。
俺は、かつて人間だったころのことを思い返す。
王国の騎士だった、あのころ。
一つ年上の先輩女騎士、カレンのこと。
恋心……なのかは分からないが、淡い憧れを抱いていたのは事実だ。
だけど、そんな甘酸っぱい気持ちはもう失われてしまった。
あの日──魔導王の軍勢がエレノア王国を蹂躙したことで。
カレンは、俺の目の前で巨人に踏みつぶされて絶命した。
砕けた骨とぐちゃぐちゃになった肉や臓物。
絶望的なその光景は、今でも目に焼きついている。
そして、俺も市民をかばって殺された。
あのときの恐怖や苦痛、そして絶望感は、忘れようとしても忘れられるものじゃない。
必ず復讐してやる。
人ととしての生ではかなわなかったことを、竜として成し遂げるんだ。
魔導王を、俺はこの手で討つ。
この牙で、爪で、尾で、ブレスで──。
奴らを根絶やしにしてやる。
空を翔けながら、俺は復讐心を新たに燃やし直していた。
【書籍化のお知らせ】
本作がBKブックス様より書籍化されることになりました。8月発売予定です。これも読んでくださる方々のおかげ……本当にありがとうございます!





