11 泉の出会い
「ふうっ、気持ちいいですね」
「んー、生き返る~」
ミラとコレットが丸裸で水浴びをしながら、歓喜の声を上げる。
俺は泉のほとりでそれを見つめていた。
──俺たちは現在、【大飛行】の休憩中だ。
スキル【大飛行】は一度の発動で30分ほど連続で飛行できる。
その後はおおよそ一時間程度の休息を置かなければ、【大飛行】をふたたび発動することができないのだ。
その休息時間を利用し、ミラとコレットは水浴びをしているのだった。
美少女二人の全裸姿──。
人間のときであれば、少なからず興奮したに違いない。
……俺だって男だからな。
だけどドラゴンに転生した影響なのか、それほどの興奮が湧いてこない。
まったく何も感じないというわけじゃないが……。
どちらかというと、二人の裸体の美しさに感嘆するような気持の方が大きい。
後は、嬉しそうにはしゃぐ彼女たちを見て、和む気持ちとか。
そう、一番近いのは……たぶんペット動物を見て、それを愛でるような気持ちじゃないだろうか。
「あれ、ドラゴンさんがこっち見てる」
ミラがジッと俺を見つめた。
「……やらしいです」
「なんでだよ!」
俺は思わず心の声でミラに反論した。
反論した後で、気づく。
そうか、ミラにとっては人間の男に水浴びシーンを見られているのと同義だよな。
当たり前だ。
なぜこんなことに気づかなかったのか……。
だんだん感覚や思考がドラゴン化しているんだろうか。
少なくとも俺は、自分を人間ではなくドラゴンとしてとらえ、他の人間との間に線引きをし始めている──のかもしれない。
「……悪かった。ミラ」
俺は慌てて頭を下げた。
「……あ、でも、今はドラゴンさんですし、あたしのほうこそ申し訳ありません。ちょっと恥ずかしくなってしまって」
ミラも慌てたように頭を下げた。
とはいえ、やはり恥ずかしそうに両手で胸を押さえ、しゃがみ気味になって股間を隠しているが。
一方のコレットは特に恥ずかしがる様子もなく、俺の前に裸身をさらしたままだ。
「俺の配慮が足りなかっただけだ。はしゃぐお前たちを見て、つい和んでしまった」
と、そのときだった。
「誰かいるのか?」
「どちらも女の子みたいですぅ。あ、後ろにドラゴンも……」
響いた声は、いずれも可憐な少女のものだった。
一人は、ポニーテールにした金髪に怜悧な顔つき、引き締まった体つきをした長身の少女。
もう一人は、青い髪をショートカットにした清楚な容貌に、小柄な体つきの少女だった。
いずれもタイプこそ違うが、見目麗しい美少女である。
「えっと……」
ミラ、コレットと美少女二人組は顔を見合わせ、立ち尽くした。
「ああ、怪しい者じゃないんだ。警戒しないでくれ」
金髪ポニーテールの少女が言った。
「私たちは遺跡探索メインの冒険者をしている。私はリーリア、彼女はキュールだ。この先にある古代神殿を目指していてね」
「伝説の『暗黒竜王』の神殿ですぅ。すごいでしょ」
二人が説明した。
どうやら金髪ポニーテールがリーリア、青髪ショートカットがキュールと言うらしい。
「それって、あたしたちと同じ──」
ミラがつぶやく。
「実は、あたしたちもその場所を目指してるの」
コレットが言うと、美少女冒険者たちは驚いた顔をした。
「ほう、すごい偶然だな」
「じゃあ、これも何かの縁ですね。よかったら一緒に水浴びしませんか? というか、水遊びでも……えいっ」
キュールが悪戯っぽく笑って、水をかける。
「あ、やりましたね。えいえい」
ミラが微笑みながら、水をかけ返す。
コレットとリーリアはそんな姿を見て、互いに顔を見合わせると、軽く苦笑した。
和気あいあいとした雰囲気だ。
どうやら意気投合しそうだった。
やがて、彼女たちは四人で水浴び兼水遊びを始める。
美少女四人の全裸姿は、なかなかに絶景というか、息を呑むほど可憐で美麗だった。
なんとも微笑ましい──。





