7 【意思疎通】スキル
「俺の声が聞こえるか、みんな」
「……!? 聞こえます、ガルダ様」
驚いたような声をもらすミラ。
が、コレットの方はキョトンとした顔だった。
「どうかしたの、ミラ? っていうか、ガルダってなんのこと?」
「それは──」
ミラが俺の方を見る。
どうやら、俺の声は彼女にしか聞こえないらしい。
『スキルレベルが低いうちは、ある程度近しい人間にしか声が届かないのよ』
ナビが言った。
『今のところ、ミラちゃんとしか会話できそうにないわね』
「なるほど……」
『それと、あなたがガルダ・バールハイトだっていうことは他の人間には伏せたほうがいいんじゃない? けっこう有名人なんでしょ、あなたって』
「伏せる?」
『魔導王との戦いで、あなたがガルダだって知られたら──あなたに近しい人間が被害に遭ったりしないの?』
近しい人間……か。
「魔導王の侵攻でだいたい殺されたからな」
俺は苦い思いを噛み締める。
とはいえ、わざわざ俺の正体を広める必要もないか。
「ミラ、悪いが俺がガルダだということは秘密にしてくれないか」
「……わ、分かりました。申し訳ありません」
「いや、いいんだ。頼む」
「承知しました」
恭しくうなずくミラ。
「すみません、コレット。今のはあたしの独り言です。その……えっと、ガルダ様のことをちょっと妄想していたっていうか」
「妄想? ふーん……? どんな?」
コレットがジト目になる。
「っ……! べ、べべべべ別にいかがわしいことを考えてたわけじゃないですよ!?」
「あたしは何も言ってないけど?」
コレットがふふんと笑った。
「まあ、ミラって真面目そうに見えて意外と──」
意外と……なんだろう?
「今後どうするか、だな」
その後、俺はミラとコレットにこれからの方針を相談した。
……といっても、コレットには俺の声が直接聞こえないため、まずミラに話しかける形になるが。
「俺は魔導王の軍団と戦うつもりだ。ミラやコレットはどうする? それぞれの所属に戻るなら、途中まで一緒に行くか?」
「あたしは──」
ミラが俺を見た。
「ガルダ様……あ、いえ……」
さっきの俺とのやり取りを思い返したのか、慌てたように口ごもる彼女。
「今まで通りドラゴンさんとでも呼べばどうだ?」
「あ、そうですね……じゃあ、ドラゴンさんをエレノアの騎士団や魔法戦団に紹介するのはどうでしょう? あたしたちとともに魔導王と戦うために」
「魔導王と……戦う?」
コレットが眉を寄せる。
「本気で言ってるの? 相手は一国すら滅ぼすレベルの魔法使いだよ?」
「だけど、あたし……アビーの仇を討ちたいです」
ミラが唇をかみしめた。
「気持ちはわかるけどさ。さすがに無茶だよ」
「うう……」
コレットに諭され、涙ぐむミラ。
「いや、無茶ってこともないぞ」
俺はミラに言った。
もちろん、この声はコレットには聞こえない。
「『真の暗黒竜王の力』を使いこなせれば、神樹伯爵でさえ──魔導王の側近クラスでさえ撃破できる。この力を制御できるようになれば、魔導王打倒は夢物語じゃなくなる」
そう、夢じゃなく──現実に可能な道になるんだ。
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