17 始まり
SIDE アーバイン
「すさまじい邪気だ……!」
アーバインは水晶球に映し出された映像を見て、うめいた。
燃えるような赤い髪にオレンジ色の瞳をした少年だ。
すらりとした体躯は鍛えられ、引き締まっている。
弱冠十五歳ながら、その剣腕はすでに大陸でも最強と謳われていた。
アーバインこそは、神より『勇者』の称号を授かった地上で唯一の少年なのだ。
「千年前、あなたのご先祖によって討たれた『暗黒竜王』に酷似したオーラを放っています」
初老の魔法使いが言った。
水晶球に映像を出しているのは、彼の魔法によるものだ。
他にも王国一の騎士や魔法使い、僧侶など名だたるメンバーがここにそろっている。
それぞれの階級で最強、最高と謳われる者たち。
人々は彼らを指してこう呼ぶ。
勇者パーティ、と。
「本当に伝説の『暗黒竜王』──あるいは、それに類する存在が復活したのであれば、討たねばなるまい」
青年騎士が告げる。
「だね。世界の平和を守るために」
うなずく女僧侶。
「竜の居場所は?」
「ここから南東──ラシェルの大森林です」
アーバインの問いに魔法使いが答える。
「では、行こう。みんな、俺に力を貸してくれ。世界を脅かす悪を討つために」
「世界を脅かす悪を討つために」
仲間たちの声が唱和する。
数時間後、アーバインたち勇者パーティは竜討伐へと乗り出した。
※
俺は──。
混濁する意識の中で、俺は目を覚ました・
俺……は……どうなったんだ……?
全身が燃えるように熱い。
目の前が、一面の炎に包まれている。
俺は……誰だ……?
分からない。
記憶がぼんやりとしている。
思考を整理できない。
俺……は……。
…………。
……。
「ドラゴンさん、目を覚まして!」
ふいに、少女の声が響く。
なんだ、これは──。
誰だ、彼女は──。
俺……は。
この声を、知っている。
そうだ、思い出してきた。
確か、俺は……俺は。
暴走、したんだ。
意識が消えかけた。
いや、一度は消えた。
だけど、どうにか戻ってくることができた。
もっと強く思い出せ。
もっと強く、心に刻め。
そう、俺の名は──。
次回から第4章になります。
次回更新は2週間ほどお休みをいただき、5月3日ごろを予定しています。
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