14 【闇】を総べる竜2
SIDE ミラ
「な、なんなのですか、あれは──」
ミラは呆然と『仲間』のドラゴンの戦いぶりを見ていた。
突然、ドラゴンの姿が変わったと思いきや、神樹伯爵を圧倒し始めたのだ。
「まさか、伝説の『暗黒竜王』──」
コレットがうめく。
「えっ?」
「あたしも教団の秘伝書を少し読んだことがあるくらい。だけど、あの圧倒的な力はもしかしたら──」
コレットが震える声で告げた。
「本物の『暗黒竜王』が出現したのかも」
「あのドラゴンさんが『暗黒竜王』だった、っていうのですか?」
「千年前、世界を恐怖に覆い尽くした史上最強最悪のドラゴン──『暗黒竜王』。エレノア王国にて一人の勇者により討たれた、という伝承が残っているだけだけど……」
コレットが厳かな表情でつぶやく。
「この圧倒的な力を見ていると、あり得ない話じゃないかも……」
「ドラゴンさん……」
ミラはふたたび黒竜の戦いを注視する。
るおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ。
雄たけびとともに、ドラゴンが口を開いた。
口中が深紅の輝きに満ちていく。
最初のドラゴンブレスは青白い光で、次が紫。
今度は赤──ということは、また別種のブレスだろうか。
と、ドラゴンがこちらを向いた。
どしん、と尾で何度か地面を叩いた。
「──!」
ミラはハッと気づく。
「コレット、防御魔法を!」
「えっ?」
「ドラゴンさんが『巻き添えを食わないように』と合図を送っています」
例によって、エレノア騎士団の合図である。
「分かった……【プロテクション】!」
コレットが唱えた僧侶呪文が防御フィールドを作り出し、二人を包みこんだ。
それを確認したのか、黒竜はふたたび神樹伯爵に向き直る。
伝説の、暗黒竜王。
ミラはその後ろ姿をジッと見つめた。
※
よし、コレットが防御魔法を発動してくれた。
合図を送った甲斐があったな。
これで神樹伯爵に全力のブレスを思いっきり撃つことができる。
俺はひとまず安堵した。
次のブレスは広範囲に攻撃をばらまくからな。
俺の周囲十メートルほどは攻撃範囲を免れるけど、エネルギーの余波がある程度は押し寄せるはずだ。
だからミラとコレットには事前に防御フィールド内に入ってもらうよう、合図を送ったのだった。
さあ、心おきなくいくぞ──。
『大罪の火炎』!
俺は第三のドラゴンブレスを放った。
深紅の火炎弾が四方八方へと飛び散った。
こいつは『滅びの光芒』より威力が落ちるものの、比較にならない広範囲を焼き尽くす。
しかも強力な火属性を備えた攻撃である。
あたりに展開された無数の枝──さっき『滅びの光芒』で薙ぎ払いきれなかった分だ──に次々と深紅の火炎弾が命中した。
あっという間に燃え、炭化していく枝、枝、枝──。
さらに本体ともいうべき幹にまで燃え広がっていく。
『ぐっ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!』
神樹伯爵が絶叫した。
すでに『災いの波動』で特殊防御をはがされたうえで、弱点の火炎を食らったのだから当然だろう。
ほどなくして、ほぼすべての枝が燃え尽きた。
『はあ、はあ、はあ、はあ……』
神樹伯爵は息も絶え絶えといった様子だった。
幹だけは違う種類の防御方法があったのか、燃え残っている。
とはいえ、さっきの攻撃で焦げ目だらけになっていた。
かなり弱っているな。
なら、次で終わりだ。
第四の……そして今の俺が使える最強のドラゴンブレス。
その名は──。





