13 【闇】を総べる竜1
『形態変化、完了』
ナビが告げる。
前方に、黒い竜の姿が映し出された。
例によって、俺の現在の姿を映像化したものだろう。
その姿は以前とは違っていた。
無数の刃で構成されたような鋭角的なフォルム。
漆黒の鱗は美しい光沢を放っている。
牙はより鋭く、爪はより長く、翼はより大きく。
雄大でありながら、優美さを併せ持った一体の黒竜。
そして、その瞳は燃えるような、真紅。
るおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおんっ!
俺は咆哮した。
周囲の大気が震え、爆ぜる。
『馬鹿な、ただ吠えただけで空間が裂ける──』
神樹伯爵が叫んだ。
分かるぞ。
今までとは戦闘能力が圧倒的に違うことが。
ナビ、ステータスを表示してくれ。
『鑑定中……拒絶……再実行……禁忌に抵触……拒絶……』
ん、ナビ?
『再実行……管理者権限を不所持のため、拒絶……拒絶……拒絶……』
おい、ナビ……?
『駄目ね。私の現在のレベルでは、今のあなたのステータスを表示できないわ』
表示──できない?
『かなり強力なプロテクトがかけられてるみたい。ただ、安心して。今までよりもはるかに強くなったことは確実だから』
と、ナビ。
『そして、注意してね。これは不安定な力よ。いつ消えてなくなるかも分からない。あなたが、今のあなたでいられるうちに決着を』
分かった。
なら、手探りで戦っていく。
『ご武運を──ガルダ』
それは、ナビが初めて俺の名を──人であったころの名を呼んだ瞬間だった。
さあ、いくぞ。
俺は一歩踏み出す。
るおおんっ、という咆哮が自然と漏れた。
そのたびに空間のあちこちが裂け、生まれた衝撃波が神樹伯爵の枝を切り裂く。
『お、おのれ、ただ吠えるだけで、我がダメージを受けるなど……ぐうううっ……』
たじろぐ伯爵。
奴の態度からは、すでにさっきまでの圧倒的な威圧感も、強者感も消え失せていた。
今や、完全に立場は逆転したのだと悟る。
今度は俺が、圧倒的な力で奴を蹂躙する番なのだ、と。
『……限定的に情報が開示されました』
ナビが告げた。
どうした、ナビ?
『突然、私の中に「暗黒竜王」の情報の一部が入ってきたの。ドラゴンブレスについてのみ、あなたに情報を伝えることが可能よ』
と、ナビ。
『現在使用できるドラゴンブレスは四種。すでに習得している「滅びの光芒」や「災いの波動」の他にも──』
ナビがその内容を説明した。
よし、順番にくらわせてやるか。
今後のためにもテストしておくとしよう。
そう、今後の──魔導王の軍団との戦いのために。
まずはこれだ!
『滅びの光芒』──。
『があっ!?』
俺が放った青白い光線が螺旋状に突き進み、奴の枝を片っ端から吹き飛ばしていく。
今の俺はクールタイムなしで、最初から『全開版』を連射できる。
しかも、奴の【防御上昇】などものともしない。
根本的な攻撃力が違いすぎるのだ。
目につく枝をあらかた薙ぎ払うと、幹だけの状態になった神樹伯爵の姿が完全に露出する。
次は、こいつだ!
『災いの波動』──。
俺の吐き出した紫色のブレスが、神樹伯爵の本体を包みこむ。
『我の防御が消えた!? 馬鹿な……魔導王様によって極大まで強化された、我がスキルが──?』
これで奴は無防備同然だ。
次のブレスをくらわせてやる。
第三のブレス──『大罪の火炎』を。





