11 暗黒竜王VS神樹伯爵3
相手はあまりにも強大だ。
だが、俺は負けない。
負けられない。
人間としての俺は、魔導王の軍団になすすべなく殺された。
本来なら、そこで『終わった』俺の命。
だけど俺は──理由は分からないが、ドラゴンへと転生した。
しかも『暗黒竜王』なんていう、いずれ最強に至るかもしれない『可能性』を得たんだ。
なら俺は、その可能性に賭けてみたい。
まずは生き延びることを最優先だが──その中で、着実に強くなり、いつか必ず魔導王の軍団を蹴散らせるくらいに強くなる。
それが俺の見い出した、ドラゴンとしての生きる道。
相手の方が圧倒的に強い以上、逃げ延びることが得策だが──それを許してくれそうな相手ではない。
なら、戦う。
戦って、活路を切り開く……!
『闘志は失っておらぬようだな。これだけの力の差があっても』
伯爵がうなった。
『大した精神力だ。【闇】の紋章の──『暗黒竜王』の依り代だけのことはある』
こいつ──!?
俺が『暗黒竜王』だと知っているのか。
伯爵もステータスを見る能力があるんだろうか。
『我が主、魔導王様は絶対の力を求めておられる。神や魔王、巨人王すらもしのぐほどの力。この世のすべての頂に立つ力だ』
告げる伯爵。
『エレノア王国が秘匿していた「暗黒竜王」の力──だが、かの王国に攻め入ったものの、力を得ることはできなかった。力の精髄は──すでに持ち去られた後だった』
エレノア王国にそんなものが……?
俺は騎士団でそれなりの地位にいたはずだが、そんな話は一度も聞いたことがなかった。
「なんの──話ですか」
ミラも戸惑った表情だ。
それにアビーやコレットも。
「『暗黒竜王』の力……?」
「一体、何を言っているの……?」
誰も、知らないらしい。
『下っ端には知らされておらぬか』
嘲笑する伯爵。
『まあ、お前たちが知っていようといまいと、どうでもいい。ともあれ──王は我らに命じられた。「暗黒竜王」の力を宿したものを探せ、と』
こいつの──いや、こいつらの狙いは俺なのか。
『その【闇】の紋章が「暗黒竜王」のものなのか、あるいは他の高位の眷属のものかは分からん。だが連れて行く価値はある』
と、伯爵。
『ただし、用があるのはお前だけだ。他の人間どもは不要。ゆえに──排除する』
「簡単に排除なんてされてたまるか」
「あたしたちは負けない」
アビーが魔法使いの杖を、コレットが錫杖をそれぞれ構える。
コレットの方はかなりの傷を負っていたが、なんとか呪文を使えるようだ。
一方の伯爵は動かない。
圧倒的強者ゆえの余裕か。
「【スペルブースト】!」
コレットが魔力増幅呪文を唱える。
それを受けたアビーが杖を掲げ、
「燃やし尽くしてやる……『エクスファイア』!」
二人の連携による上級火炎魔法が伯爵を襲った。
だけど、無駄だ。
俺には分かる。
伯爵は、あのドライアドの上位種だ。
当然、備えているスキルも同じか、上位互換。
ドライアドにさえ通じなかった攻撃パターンが、伯爵に通用するはずがない──。
『この程度の火炎魔法ならたとえ百発受けたところで痛くない。だが……この神樹伯爵に刃向った仕置きが必要だな』
伯爵が樹木の体をゆする。
笑っている。
残酷な、嘲笑だ。
まずい逃げろ、アビー、コレット!
俺は叫んだ。
だけどドラゴンの口からはいななきのような声しか出せなかった。
「【リアクト】」
伯爵がスキルを発動する。
一片の慈悲もなく。
容赦なく。
次の瞬間、『エクスファイア』はいきなり進行方向を反転させた。
上級の火炎魔法すら、あっさりと反射できるのか!?
「あっ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」
アビーの悲鳴が響き渡った。
俺は呆然と立ち尽くした。
ミラも、コレットも、動けない。
ほんの数瞬の後──。
アビーは、消し炭となっていた。
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