10 暗黒竜王VS神樹伯爵2
ミラの斬撃が伯爵を両断する。
思ったよりもあっけない最期だった。
「ふうっ」
ミラは大きく息を吐き出し、こちらを振り返る。
満足げな笑みを浮かべていた。
よくやったぞ、ミラ。
俺も内心で彼女をねぎらう。
こういうとき、人の言葉を話せたらいいんだが……。
あらためて、そう思う。
「えへへ、ドラゴンさんも援護ありがとうございました」
ミラが俺の頭を撫でてくれた。
ああ、癒されるなぁ。
俺はうっとりと目を細める。
どんっ……!
そのミラが、いきなり──なんの前触れもなく吹き飛ばされた。
な、なんだ……!?
「が……は……っ……」
地面にたたきつけられ、うめく女騎士。
『なるほど。「端末」では勝てんか。思ったよりもやるな』
声とともに、周囲の樹木が震える。
いや──森全体が、震えている!
同時に湧き上がる、すさまじいプレッシャー。
全身に、寒気が走る。
何かが……いる。
とてつもない力を持つ、何者かが──。
次の瞬間、前方の地面が爆発するように吹き飛んだ。
その下から巨大な何かがせり上がってくる。
高い。
そして、大きい──大きすぎる。
それは、全長100メートル以上の樹木だった。
少し前に戦ったドライアドとよく似た姿だが、とにかくサイズが違いすぎる。
『我は神樹伯爵』
巨大樹木が告げた。
神樹伯爵?
じゃあ、さっきの人型はなんだったんだ?
奴も神樹伯爵と名乗っていたはずだが──。
『先ほどお前たちが戦ったのは、我がいくつも有する「端末」にすぎん』
と、伯爵。
『それなりの戦闘能力と、我のスキルの一部を付与しているが──しょせんは我をスモールダウンさせた分身体』
じゃあ、こいつが……。
こいつこそが、神樹伯爵の『真の本体』ということか。
『そのようだね。いくつか読み取れない情報はあるけど、とりあえず奴のステータスを表示するよ』
と、ナビ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
称 号:神樹伯爵
種 族:エクス・ドライアド
形 態:樹木型
L V:33
H P:1071
M P:640
攻撃力:1502
防御力:987
素早さ:71
★ :6
〇所持スキル
【鞭の枝】LV14
【槍の枝】LV21
【火炎無効】LV25
【防御上昇】LV31
【端末作成】LV13
【思念通信】LV10
【大地震】LV5
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
こ、こいつは……っ!?
今までの連中とは、文字通りけた違いのステータス数値だった。
「わざわざ本体をさらすとは余裕ですね……」
ミラが剣を支えに立ち上がった。
「今度はあなたを叩き斬ってあげます……!」
決して少なくないダメージを受けているはずだが、彼女の闘志は衰えていないようだ。
『勇ましいことだ。だが、不可能だな』
巨体を揺すって笑う伯爵。
『スキルとは意思の強さ。そしてその強さは基本的には距離に比例する。つまり──本体が近くにいればいるほど、強さを増すわけだ』
もちろん『親切心』から丁寧に解説しているわけではないだろう。
これは、脅しだ。
これから行われる攻撃こそが──『神樹伯爵』の本来のスキルの強さを発揮したもの。
間違いなく、今までとはけた違いの攻撃になる。
『耐えられるものなら耐えてみるがいい。魔導王様の側近「神樹伯爵」の全力を』
同時に、無数の枝が槍と化して放たれた。
スキル【槍の枝】
先ほどの『端末』と同じスキルである。
だが、その数がけた違いだ。
数百──いや、数千を超える枝が四方から殺到する。
さすがにミラ一人では、とても捌ききれないだろう。
いや、俺にだってこれほどの数は──無理だ。
ひるみそうになるところをグッとこらえた。
やるしかない。
こいつを突破しない限り、森を抜けることは難しいだろう。
生き延びるために。
生きて、いつか魔導王とその軍団を蹴散らすために。
俺は──勝つ!
【お知らせ】
転生特典【経験値1000倍】を得た村人、無双するたびにレベルアップ! ますます無双してしまう 1
http://mfbooks.jp/8257/
恋人を寝取られ、勇者パーティから追放されたけど、EXスキル【固定ダメージ】に目覚めて無敵の存在に。さあ、復讐を始めよう。 2
https://www.futabasha.co.jp/booksdb/book/bookview/978-4-575-24265-2.html
新刊2冊が発売中です。このようなご時勢ですので書店に直接行くのが難しい方もいるかと思いますが、通販等もありますので、よろしければぜひ~!
正直、コロナの影響による売り上げ減とかが心配なので……応援していただけると嬉しいです (´Д⊂ヽ





