9 暗黒竜王VS神樹伯爵1
「コレット!」
ミラが悲痛な声を上げた。
アビーも呆然と立ち尽くしている。
「っ……か、は……」
断続的な苦鳴を漏らしながら、僧侶少女は倒れ伏した。
槍と化した枝で胸元を貫かれている。
即死は免れたようだが、重傷である。
「アビー、コレットの手当てをお願いします。あいつはあたしが引きつけますから!」
言うなり、ミラは飛び出した。
まさか、コレットの手当てをする時間を稼ぐためにオトリになるつもりか?
無茶だ……!
俺は慌てて彼女の後を追った。
『ふん、自棄になったのか? 捨て身の特攻などで我は倒せぬ』
伯爵がつぶやく。
四方から、ミラに向かって枝槍が殺到した。
「【乱れ斬り】!」
ミラはすかさず対多数用の斬撃スキルを発動。
迫りくる枝槍を片っ端から斬り飛ばしていく。
『何っ、この剣技は──』
驚いたような声を上げる伯爵。
ミラの剣技が、ここまで鋭かったとは──。
俺も同じく驚いていた。
スキルの効力は術者の意思力に依存する。
意思が強まれば強まるほど、スキルの効果もまた強くなる。
この絶体絶命の状況で──いや、だからこそなのか、ミラの意思はすさまじいまでに高まっているようだ。
前に見た【乱れ斬り】よりもけた違いに斬撃スピードが速く、威力も高い。
『まだ速くなる……ふむ、これほどの腕を持っていたとは……』
伯爵がうなった。
「はああああああああああああああああああっ!」
ミラはなおも枝群を斬り飛ばしつつ、本体へと近づいていく。
俺も【爪撃】を繰り出して彼女の援護をしながら、ともに本体へと向かった。
「まだだ……もっと速く……もっと!」
ミラは長剣を振り回しながら、さらに本体へと迫る。
オトリどころか、このまま伯爵の下にたどり着き、倒してしまいそうな勢いだ。
「仲間は、あたしが守る! もう二度と──魔導王の軍団には殺させない!」
叫ぶ彼女の表情は、鬼気迫るものだった。
二度と殺させない──。
それは今回の一連の戦いで失った仲間たちのことを言っているのか。
それとも、もっと以前の戦いのことを含めているのか。
おそらくは後者だろう。
魔導王の軍団により、俺たちの国は──エレノア王国は全土を蹂躙された。
多くの人が殺された。
一般市民も、騎士や魔法使いといった戦闘要員も。
そして今も、魔導王は侵攻を重ねているようだ。
目の前にはそんな魔導王の側近がいる。
なら──ここで倒してやる。
俺は闘志をたぎらせた。
ミラと本体の距離は10メートルほどにまで縮まっている。
ここで虚を突ければ、一気に肉薄できる──。
このタイミングしかない!
俺は大きく口を開いた。
食らえ、『滅びの光芒』!
青白い光線を吐き出した。
貫通力の高い『全開版』である。
『なんだと!? この威力は──』
伯爵が驚いたように叫ぶ。
とっておきの一撃は、群がる枝を次々に吹き飛ばした。
ミラと本体の間をふさぐ枝がすべて綺麗に消失する。
奴までの『道』が形成された──。
行け、ミラ!
俺は心の中で叫んだ。
「ありがとうございます、ドラゴンさん!」
ミラはうなずき、地を蹴った。
「スキル発動──【突撃】!」
少女騎士の全身が青い輝きに包まれる。
突進スピードを倍加させるスキルだ。
「スキル発動──【剛剣】!」
さらにスキル効果を込めて振り下ろした斬撃が、
ざんっ……!
神樹伯爵の本体を頭から両断した。
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