8 遭遇
『見つけたぞ、【闇】の紋章を持つ者よ』
不気味な声が響く。
『人間どもはどうでもよい。我が養分となれ』
「な、何です、こいつは──」
ミラたちが警戒したように身構える。
一難去ってまた一難というべきか。
いや、もしかしたら……さっきまでのは『一難』というレベルですらなく。
こいつこそが、脱出のための真の難関──。
そんな嫌な予感が走り抜ける。
次の瞬間、人型モンスターの全身から太いロープのような触手が飛び出した。
いや、触手じゃない。
あれは──枝!?
「【プロテクション】!」
すかさず防御魔法を唱えるコレット。
殺到する枝群が防御フィールドにはじき返される。
ぴしっ……!
が、フィールドも無事ではすまず、無数の亀裂が走った。
「攻撃力が高い……っ!」
うめくコレット。
「なら、フィールドを破られる前に、こっちから奴を倒すまでよ!」
アビーが杖を構える。
「【ディーブラスト】!」
中級の光弾魔法がモンスターを直撃する。
ごうんっ!
大爆発が起こった。
『くっくっく、今何かしたのか……?』
そいつは平然と立っている。
爆光に照らされ、姿がはっきりと見えた。
枝がより合わさったような形をした、人型のモンスターだ。
『我は神樹伯爵』
そいつが名乗った。
っ……!
薄々とは感じ取っていたが、やはりこいつが──。
『偉大なる魔導王様に生み出された最強の魔物の一体である』
森の主ともいうべきモンスターが直々にお出ましか。
しかし、意外と小さいんだな。
身長2メートルにも足りず、一般的な成人男性程度の大きさだ。
だが──その全身から放たれる威圧感は圧倒的だった。
魔導王の側近というだけのことはある。
こいつが……!
俺の中で激情が燃え上がった。
焼き払われる王都が。
殺される人々が。
潰された同僚の女騎士、カレンの姿が。
散っていった戦友たちの悲鳴が。
次々と脳裏によみがえる。
こいつを倒した先に──魔導王がいる。
だが、勝てるんだろうか。
今までのモンスターとは、おそらく一線を画した力を持つこいつに。
……いや、違う。
勝てるかどうか、じゃない。
勝つんだ。
どのみち、簡単に逃がしてくれるような甘い相手じゃないだろう。
森から脱出するためには、こいつを突破するしかない──。
『そこのドラゴンは生かしておいてやる。残りの三人をまず掃討する』
伯爵の言葉とともに、ふたたび枝の群れが殺到した。
「【スロウ】!」
コレットが僧侶魔法を唱える。
相手のスピードを半減させる効果を持つ呪文だ。
白い輝きが枝を包みこみ、そのスピードを半減させる。
──と思いきや、
『【リアクト】』
神樹伯爵がつぶやくと同時に、輝きが弾け散った。
「効かない!?」
戸惑うコレット。
「な、なぜ……ううっ……!?」
次の瞬間、彼女の動きが鈍った。
これは、まさか──。
【スロウ】が枝ではなく、コレット自身にかかっている!?
『まずサポート役から潰させてもらおうか。確実に──一人一人殺す』
伯爵が冷ややかに告げ、
ざんっ……!
迫る枝の一本が【プロテクション】の防御フィールドを貫き、コレットの胸に突き刺さった。
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