5 門番2
アビーとコレットは蜘蛛の糸に足首を絡め取られ、地上5メートルほどの高さで逆さづりにされていた。
「くっ、このぉっ……!」
「一体、いつの間に……くうう」
もがく二人だが、糸は何重にも巻きついていて容易に剥がれないようだ。
──ブレスで消し飛ばすか。
『通常版』の『滅びの光芒』ならクールタイムを気にせず、連発できる。
それでもって、二人に絡みついている糸を焼き切ってやる──。
どんっ!
そう思った矢先、『ビートル』が突進してきた。
速いっ……!
六本の足を高速で動かし、一瞬にして間合いを詰めてくる。
槍のごとき角をこちらに向かって突き出し──、
「くっ!」
ミラが剣でそれを受け止めた。
「攻撃が、重い……っ」
が、パワーでは『ビートル』のほうが上のようだ。
じりじりと押されていくミラ。
今、助ける──。
俺は横合いから爪を繰り出した。
スキル【爪撃】。
騎士だったころを思い出し、剣技の要領で爪を繰り出す。
さすがに二人がかりなら、こちらのほうがパワーが上のようだ。
『ビートル』は大きくよろめくと、六本の節足で地面を蹴りつつ後退する。
やはり、速い。
さすがに足を六本備えているだけのことはある。
と、
しゃああああああっ!
いななきとともに後方に位置していた『スパイダー』が新たな糸を吐き出した。
今度は俺とミラを狙っている。
スキル【捕獲の糸】。
俺たちを捕らえるか、あるいは動きを鈍らせるつもりか。
『滅びの光芒』の通常弾で迎撃したいが、あれを放つには『溜め』が必要だ。
かといって【爪撃】や【竜尾】では絡みつくばかりで、切ったりちぎったりは難しそうだ。
どうする──。
俺は瞬時に判断し、翼を羽ばたかせた。
ミラ、乗れ!
目線で合図を送る。
「分かりました、ドラゴンさん!」
アイコンタクトが通じたのか、ミラが俺にしがみついた。
翼の羽ばたきを利したジャンプで、大きく跳び上がり、糸を避ける俺たち。
空中でホバリングしつつ、ブレスを撃つための『溜め』時間を稼ぐ。
食らえ──!
そして、放った。
『滅びの光芒』の『通常弾』を。
青白い光線が一直線に伸びる。
その先にいるのは『ビートル』だ。
ただ、相手もさすがに速い。
例によって六本の節足を活かした高速移動で、あっさりとブレスを避ける。
──だが、問題ない。
俺の狙いは『ビートル』じゃない。
そのそばにある、糸。
そう、アビーとコレットを縛っている糸の根本部分だ。
ばぢぃっ……!
弾けるような音を立て、光線によって糸が焼き切れた。
アビーとコレットが解放され、地面に落下する。
「いたたたた……」
どうにか受け身を取ったらしく、顔をしかめつつも起き上がる二人。
よし、これでこっちは元の陣形に戻ったぞ。
反撃開始だ。
俺は二体を見据える。
さっきナビに見せてもらった『ビートル』と『スパイダー』のステータスを思い返した。
「どっちも魔法防御持ちだったな。なら──」
災いの波動は一度撃つと、次は十分間撃てない。
これだけスピーディな戦況だと十分のクールタイムは長い。
どちらにブレスを使うべきか。
二体を巻きこむような形で撃てないものか。
『「災いの波動」の対象はあくまでも一体きりよ。どちらかに当たった時点で効果が発動するわ』
と、ナビ。
なるほど……。
じゃあ、ブレスを使う対象を選ばないとな。
どっちに使うべきか──。
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