16 行動指針
俺の眼前でドライアドは完全に消し炭となった。
厄介な敵だったが、どうにか倒せたか。
即席の連携にしては上々だったと思う。
「ドライアドを倒した……!」
ミラ、アビー、コレットの三人は驚き半分、喜び半分といった様子で顔を見合わせていた。
「どうして急に火炎魔法が効いたんだろ?」
怪訝そうなアビー。
「ミラは全部分かっていて、私に呪文を唱えさせたの?」
「いえ、あたしは……」
ミラは首を振り、
「ドラゴンさんが何か仕掛けると思ったので、アビーにお願いしました。このメンバーで邪精霊に有効打を与えられる可能性が一番高いのは、あなただと思いましたから」
「その判断は正しかった、ってことだね」
と、コレット。
「たぶん、さっきのドラゴンブレスは防御か特殊効果あたりを無効化する力があったんでしょ。で、それに合わせてアビーに攻撃させた……ってこと? でも、どうしてタイミングを合わせられたの?」
「実は……ドラゴンさんが、騎士団に伝わる攻撃合図と似たような動作をしたんです」
ミラが答える。
「尻尾で地面を三度叩いて、一拍置いたあとにまた二度……偶然とは思えませんでした。戦況から考えて、おそらく火炎魔法を撃たせようとしているんだろう、と推測して、それで……」
「なるほど、ね」
コレットがうなずく。
俺をジロリとにらみ、
「……何者なの、あんた」
と、顔を近づけてきた。
まるで正体を探ろうとするかのように、俺の目をまっすぐに覗きこんでいる。
思わずギクリとなった。
まさか、俺が元人間だと気づいてるんじゃないだろうな。
いや、気づかれたから、どんな不都合があるのかは分からないが。
そもそも、知らせていいことなのか、駄目なことなのかも……。
「しかも、その胸の紋章って【闇】の眷属のものだよね? あたし、いちおう僧侶だからさ。邪悪な存在なら滅しておいたほうがいいかな、って」
俺に向かって錫杖を向けるコレット。
ヴン……ッ!
その先端部に淡い輝きが宿った。
こいつ、僧侶系の攻撃魔法を撃つ気か!?
「ま、待ってください、コレット!」
ミラが慌てたように割って入った。
「ドラゴンさんがいなければ、あたしたちは殺されてました。なのに、そのドラゴンさんを攻撃する気ですか」
「なぜかばうの、ミラ? そいつはモンスターだよ?」
コレットが険しい表情になった。
「あたし……なんとなく、このドラゴンさんはただのモンスターじゃない気がして」
ミラが小さく息をついた。
「なんとなく、ですけど。でも……みだりに命を奪ってはいけない気がします」
「まあ、恩義があるのは確かよね」
アビーが肩をすくめる。
「僧侶のあたしより、あんたたちのほうが慈悲深いみたいね」
コレットが苦笑した。
「でも……あたしは情より利で動くタイプなの」
「情だけでなく利もあります……!」
ミラが言った。
「この森を脱出するためには、あたしたち三人では心もとないと思いませんか? 幸い、ドラゴンさんと意思疎通できる可能性がありますし、一緒に来てもらうというのは?」
「一緒に……?」
「ドラゴンさんと共闘できれば、森のモンスターを撃退できる可能性が上がります。森を出て、エレノアへの増援を頼むために──ドラゴンさんと行動を共にするんです。ドラゴンさんだって一体でいるより、あたしたちと一緒の方が生き残れる確率は上がりますし、互いに利があるはずです」
ん?
それはつまり──。
俺がミラたちと臨時パーティを組むということか?
次回から第3章『決戦、神樹伯爵』になります。
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