15 暗黒竜王VS邪精霊4
『どうした? 反撃してこないのか、ええ?』
ドライアドが勝ち誇った。
相変わらず枝槍は四方から殺到し、ミラの斬撃とコレットの防御呪文でしのいでいる状況だ。
防ぐのが精いっぱいで反撃に転じるのは無理だった。
やはり、勝つためには奴の防御を──『物理火炎無効化』を打ち破るしかない。
俺のブレスなら、それができるかもしれない。
だが、できたとしても無効化できる時間は限られている。
そこにタイミングを合わせなければ、勝機はない。
だから──。
俺は尾を思いっきり振り上げた。
気づいてくれよ、ミラ。
念じながら、
どしん、どしん、どしん……!
地面を三度打つ。
一泊置いて、さらに二度。
「えっ……?」
ミラが驚いたような顔をした。
もう一度、同じように尾で地面を叩いた。
これはエレノア騎士団に伝わる、戦場での攻撃合図の一種である。
本来なら金属を打ち合わせて合図を送るんだが、俺はそれを尾で行ったのだ。
「あなたは……なぜ……!?」
呆然とした視線を俺に向けるミラ。
びしっ……!
そのとき、【プロテクション】の防御フィールドに大きな亀裂が走った。
駄目だ、もう壊れる──。
ミラに今の合図が伝わったかどうかは分からない。
だが、伝わったと信じて、次の行動に移すしかない。
次の行動──ドラゴンブレスの発射を。
『「滅びの光芒」と「災いの波動」──二種類のブレスは、発動時に念じれば切り替えられるわ』
念じればいいのか。
『そうね……最初は慣れないだろうから、心の中で叫んでみて』
と、ナビ。
『撃ちたいブレスの名を。それでいけるはず──』
了解だ。
奴の防護を吹き飛ばせ、【災いの波動】──。
俺は念じつつ、口を大きく開く。
口内から気道、腹の底までが灼熱していく感覚。
「アビー! ドラゴンさんが何か仕掛けます。あなたも呪文の準備を!」
ミラが叫んだ。
「えっ? えっ?」
戸惑ったようなアビー。
「お願い、あたしを信じて!」
「……了解」
うなずいて、アビーは杖を構えた。
呪文の詠唱を始める。
『何をする気か知らんが、無駄だ!』
ドライアドの枝槍が【プロテクション】の防御フィールドを完全に打ち砕いた。
その、瞬間。
くらえ!
俺はドラゴンブレスを放つ。
第二のブレス【災いの波動】。
紫色の光線がドライアドの顔面に命中する。
『なんだ……? 痛くもかゆくもない──』
怪訝そうな様子を見せたドライアドは、次の瞬間、ハッと顔をこわばらせた。
『俺の防御フィールドが消えている!? 馬鹿な──』
「アビー、今です!」
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
すでに魔力をチャージしていたらしいアビーが、即座に火炎呪文をぶっ放した。
中級火炎魔法『ディーファイア』の連打。
次々と炸裂する火炎がドライアドの体を燃やしていく。
『ぐっ!? がああああああああああああああああああっ……!』
ほどなくして──。
樹木型の邪精霊は、全身を燃やされて消し炭と化した。
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