14 暗黒竜王VS邪精霊3
『「神樹伯爵」様を討とうなどという不届きものはすべて始末する。あの方の側近たるこの俺が、な』
ドライアドが全身を揺する。
外見は太い樹木で、高さ二メートルほどの位置に禍々しい顔面がレリーフのように浮かんでいた。
『ん? そっちのドラゴンはなんだ? さっきはいなかったが──』
と、ドライアドが俺を見る。
『【闇】の紋章……? お前のような小竜が、なぜ……?』
「【スペルブースト】!」
コレットが呪文を唱えた。
確か、魔法の威力を増幅する僧侶魔法だ。
「アビー、狙って!」
「了解っ、『エクスファイア』!」
アビーが火炎魔法を放つ。
ばぢぃっ!
ドライアドの表面で、その炎は弾け散ってしまった。
「上級でも駄目か……」
『ふん。魔力を増幅させて上級魔法を撃ってきたか。だが、無駄だ。物理的な炎は、俺には効かん』
勝ち誇るドライアド。
さっきナビが説明していた通りだ。
そういえば、『物理を超えた炎』ならダメージを与えられる、とも言っていたな。
俺のブレスじゃダメなのか?
『「滅びの光芒」は炎じゃなく光属性ね。通用するかどうかは撃ってみなければ分からないけど、そもそもクールタイム中だし』
と、ナビ。
『もう一つの「災いの波動」の方は攻撃主体のブレスじゃないし──』
『気が済んだか? では、まとめて串刺しにしてやろう』
ナビの説明をさえぎるようにドライアドが言った。
無数の枝がざわめく。
その先端が槍のように尖ったかと思うと、俺たちに向かって殺到した。
「くっ……スキル【乱れ斬り】!」
ミラが高速斬撃スキルを発動した。
繰り出される枝の槍撃を片っ端から弾き返す。
「【プロテクション】!」
さらにコレットが防御系の僧侶魔法を使い、俺たち全員の周囲に防御フィールドを張る。
これでしばらくは持ちこたえられるか。
その間に反撃の手段を見つけるしかない。
ナビ、もう一つのブレスはあいつに通用しないのか?
『もう、説明が途中でしょ。「災いの波動」は直接的な攻撃力はないの。ただ、あいつの防御を無効化することはできるわ』
防御を無効化?
『あいつの防御特性は「物理的な炎を遮断する」こと。それを一時的に無効化するの』
じゃあ、火炎魔法が通用するようになるのか?
問答の間もドライアドの枝槍が間断なく襲ってきていた。
それを迎撃するミラは徐々に疲労がたまってきているようだ。
コレットが作った防御フィールドには亀裂が走っている。
まずいぞ、もう少しで持ちこたえられなくなる──。
『おそらく、ね』
そんな焦りを知ってか知らずか、ナビは冷静に説明を続ける。
なら、やってくれ!
『慌てないで。「一時的に」って言ったでしょ。しばらくすれば相手の防御は復活するの。上手くタイミングをあわせなければ、無駄撃ちになるわよ』
ナビが告げる。
タイミングを合わせる、か。
つまり俺がブレスで奴の防御を無効化し、その間にアビーが火炎魔法を撃てばいいわけだ。
その合図ができれば──。
だが、竜である俺は人の言葉を話せない。
どうやって彼女たちにそれを伝えればいい……?
「きゃあっ……!」
ミラが剣を弾き飛ばされた。
コレットが張った『プロテクション』もすでに亀裂だらけで、今にも穴が開きそうだ。
これ以上は、もうもたない──。
──待てよ。
俺はふと思いついた。
ミラは前世の俺と同じエレノア騎士団に所属している。
だったら、合図を送ることができるかもしれない。
試してみるか、あれを。
※カクヨムにて先行公開中です。続きが気になる方は、下のリンクからカクヨムのページに飛べますので、ぜひ!
【読んでくださった方へのお願い】
ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある☆☆☆☆☆をポチっと押すことで★★★★★になり評価されます。
「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ぜひポチポチっとしていただけましたら励みになります!





