13 暗黒竜王VS邪精霊2
俺は翼をはばたかせ、少しずつ高度を上げていった。
空を飛ぶ──地面で足を踏ん張ることができない状態は、なんとも足下が心もとない。
今にも空中から落下してしまうんじゃないかと不安になってしまう。
「あ、ありがとうございました、ドラゴンさん」
俺にしがみついている三人のうちの一人──女騎士のミラが言った。
「助かった。ありがと」
「感謝するよ」
アビーとコレットも礼を言う。
「……って、言葉が通じるんでしょうか? ドラゴンなら人の言葉が分かるのですか?」
首をかしげるミラ。
「んー……なんかドラゴンって人間以上の知性の持ち主ってイメージがある~」
アビーがうなずく。
「上位の竜はそう。けど見たところ、下位竜みたいだしね。あたしたちの言葉を理解してるかは怪しいんじゃないかな」
と、コレット。
いや、理解できてるぞ。
ただ人間の言葉はしゃべれないけどな。
そうだ、身振り手振りで彼女たちと意思疎通できるだろうか?
と──、
「見てください、枝が……!」
ミラが眼下を指さした。
俺がいる高度よりも十メートルほど下だろうか。
うねる枝がこっちに向かってくる。
あの枝──どこまで伸びるんだ!?
「今度こそ打ち落としてあげるっ! 【ファイアショット】! 【クリムゾンアロー】!」
アビーがいくつもの火炎呪文を放つが、どれも枝には通じない。
火炎系は通用しそうな気もするのだが、実際には枝に触れた瞬間に弾け散ってしまうのだ。
『あの枝……全体に魔力のコーティングがされてるわね』
と、ナビが鑑定した。
コーティング?
『木の精霊の弱点は炎……それをカバーするために、物理的な炎から身を守るように魔力の防護幕を張っているのよ』
物理的な炎……か。
魔法の炎じゃダメなのか?
『魔法で生み出したものも、基本的には「物理的な炎」の範疇よ。高位の魔法やスキルなら「物理を超越した」火炎を生み出すこともできるけど──あの魔法使いの女の子はそこまでのレベルには達してないわね』
なるほど……。
そんなレクチャーを受けている間に、枝はもはや間近に迫っていた。
「駄目、やっぱり効かない──」
アビーが悲鳴をあげる。
「あたしもさっきから【スロウ】や【制止】をかけてっけど全然ダメだね。まるで効きやしない」
と、頭をかくコレット。
なら俺がやるしかないな。
くらえ──スキル【爪撃】&【竜尾】!
体をひねり、四肢を、尾を振るった。
飛行中でバランスが大きく崩れるが、なんとか踏ん張るしかない。
がちいん、と金属同士がぶつかるような重厚な音とともに、俺の爪と尾はドライアドの枝の群れを弾き返した。
思ったより威力が高いな、俺の格闘スキルは。
『陸戦型ほどじゃないけどね。空戦主体とはいえ、あなたは今までより進化しているもの』
と、ナビ。
よし、このままいったん距離を取るぞ。
──と思った矢先、
がくんっ……!
ふいにバランスが大きく崩れた。
なんだ、体が引っ張られる──?
見れば、ドライアドの枝の一部が俺の後ろ脚にからみついている。
ちいっ、さっきの攻撃で全部弾き返したつもりが、残ってた枝があったのか!
そのままグイっと引っ張られた。
駄目だ、振りほどけない──、。
俺は枝に引っ張られ、眼下へと引き寄せられていく。
ほどなくして。
どすんっ!
俺は強烈な勢いで地面にたたきつけられた。
『ふん、一人たりとも逃がすと思ったか?』
重々しい声が響く。
眼前には巨大な樹木がたたずんでいた。
そいつの高さ二メートルほどの位置に、人の顔のようなものが浮かんでいる。
邪精霊ドライアド。
その本体か──!
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