12 暗黒竜王VS邪精霊1
「あなたは──さっきのドラゴンさん?」
ミラが俺を見て、首をかしげた。
「さっきとは姿が変わってないか、こいつ?」
「翼が生えてる。足も細くなってるし──」
ミラの側には魔法使いと僧侶の少女がいる。
確か魔法使いがアビー、僧侶はコレットという名前だったはずだ。
「胸の紋章は──【闇】の眷属の証? この竜、邪悪な力を秘めているかもしれない」
と、コレットが眉を寄せる。
邪悪な力って……。
まあ、確かに俺は『暗黒竜王』なんて仰々しい称号を持っているが……。
「話は後です、二人とも。来ますよ!」
ミラが剣を構えた。
来る?
その言葉通り、彼女たちの背後から何かが近づいてきた。
最初は、蛇の大群に見えた。」
が、よく見れば違う。
鞭のようにしなる、無数の枝だ。
それらがミラたちを追いかけてくるのだ。
「このっ……【ウィンドカッター】!」
アビーが魔法で風の刃を生み出す。
しかし、枝の群れはそれをあっさりと吹き散らしてしまった。
「駄目だ、魔法が効かない──」
「これなら──【スロウ】!」
今度はコレットが僧侶魔法をかける、。
確かあれは、対象の動きを鈍らせるデバフ系の呪文だ。
枝の群れは一瞬動きが止まり──。
すぐに復活して、ふたたび迫りくる。
「やっぱり……魔法の効果が薄い……!?」
コレットがうめく。
『ドライアドね。なかなか強力なモンスターよ』
と、ナビが言った。
ドライアド?
『ステータスを表示するわ』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
称 号:邪精霊
種 族:ドライアド
形 態:樹木型
L V:13
H P:25
M P:170
攻撃力:89
防御力:111
素早さ:0
★ :5
〇所持スキル
【鞭の枝】LV6
【火炎無効】LV9
【防御上昇】LV7
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
確かにステータスが高い。
しかもレアリティは今までに出会った中で最高の『5』だ。
俺の位置からは枝しか見えないけど、本体は木なのか?
『ええ。彼女たちを追いかけている枝はドライアドがスキルで動かしているはずよ。多分本体はずっと向こうにいると思う』
解説するナビ。
その間に、枝の群れはミラたちに追いつきそうになっていた。
そうだ、こういうときこそ飛行能力の出番じゃないか。
俺は背中に力を入れた。
翼が、動く──。
人間だったころは翼なんて器官は生えてなかったし、もちろん空を飛んだ経験もない。
だから、ぶっつけ本番である。
今、助けるぞ──。
俺は地を蹴り、背中にグッと力を込めた。
翼の羽ばたきが強くなる。
ぐらり、ぐらり、と左右に揺れながら、俺は不格好に飛んだ。
まだ慣れてないせいで、まっすぐに飛ぶことも難しい。
ただ、飛行すること自体はできそうだ。
俺はミラたちの下へ一直線に飛ぶ。
「えっ、あなたは──」
ミラがこちらを見て、驚いた顔になった。
アビーとコレットも同じく驚いた様子。
その間にも枝の群れは間近に迫っている。
掴まれ!
俺は叫んだ。
ドラゴンの声帯から出たその声は、単なる鳴き声に変じてしまう。
それでも、なんとなく意味は伝わったのか、あるいは彼女たち自身が判断したのか……ミラたち三人は俺の体に飛びついた。
しがみつく彼女たちを連れて、俺は高度を上げる。
間一髪──。
俺たちは空を飛び、枝の群れから逃れることができたのだった。
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