1 暗黒竜王レベル1
新作です。ひさびさに人外転生系に挑戦してみました。
王都は、すでに壊滅状態だった。
「な、なんだよ、この化け物どもは……っ!」
俺はうめいた。
ぐうぅぅぅぅおおおおおおおおんっ!
響き渡る咆哮。
全長30メートルを超える巨人たちが、あちこちで王都の建物を破壊している。
全部で100体以上はいるだろうか。
「ひ、ひいっ、助けて……ぎゃあっ!」
「く、来るなぁぁぁっ……ぐ、がぁっ……」
人々は巨人に踏みつぶされ、次々に圧死していた。
周囲は無数の瓦礫と、人間の肉片や骨、臓物であふれ返っていた。
まさしく地獄絵図だ。
俺たちエレノア王国騎士団は立ち向かうことさえできなかった。
巨大すぎる体に俺たちの剣や槍が通じるはずもない。
矢を射かけてもどうにもならない。
大砲でさえ、さしたるダメージを与えられない。
戦闘開始からわずか十数分。
騎士団は半ば壊滅状態に陥っていた。
「ひ、ひるむな! 王国の民を守るんだ!」
俺は必死で味方に呼びかける。
そうだ、ここで俺たちが踏ん張らなければ──誰が王都の民を守るんだ。
そのために体を張れるのは、俺たち騎士団しかいない。
「きゃ……ぁっ……」
かすれた悲鳴がすぐ近くで聞こえた。
「カレン……?」
聞き覚えのある声にハッとして振り返る。
カレンは俺の同期であり、ひそかに想いを寄せていた女騎士だった。
「ぐへへへへ……」
巨人が笑いながら足をどけた。
血だまりの中に、ぐちゃぐちゃに圧潰した肉片が散らばっている。
もはや人間としての原形をまったくとどめていない──。
「カレンっ!? う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺は絶叫した。
理性も、闘志も、一瞬にして吹き飛んでいた。
怖い。
逃げたい。
死にたくない。
騎士としての使命感で抑えこんでいた思いがあふれ出す。
周囲を見回せば、巨人によって他の騎士たちも次々と潰され、吹き飛ばされ、あるいは食い殺されていた。
次は俺の番だろうか。
考えただけで恐ろしい。
しかも、相手は巨人だけじゃない。
轟っ……!
視界が、赤く染まった。
空の上からドラゴンの軍団がいっせいに炎を吐き出したのだ。
「ぎゃああああああああああああああああああっ!」
無数の悲鳴と絶叫が重なった。
「ひいいいいいいっ」
「助けてええええっ」
周囲は阿鼻叫喚だ。
逃げ惑う人々を、なおもドラゴンの炎が容赦なく焼き払っていく。
肉の焼ける臭いが充満し、吐きそうになる。
「やめろ……もうやめてくれ……」
俺はその場に崩れ落ちた。
戦う気力が萎えていく。
もうこれは戦いじゃない。
一方的な虐殺だ──。
そのとき、巨人に踏みつぶされそうになっている小さな女の子が見えた。
「逃げろ!」
俺は絶叫した。
力の入らない体に鞭打ち、無理やり立ち上がる。
くそ、こんなことをしても、みんな殺されるだけなのに──。
分かっていながら、俺は止まらなかった。
全力で走り、彼女を突き飛ばす。
その直後、
「がっ──ああっ……!」
全身にかかる、すさまじい重み。
肉が、骨が、内臓が、断裂し、圧壊する。
激痛とともに、意識が急速に薄れていく。
ああ、俺は死ぬのか──。
そして……俺は目を覚ました。
なんだ、ここは──。
そう言葉に出したつもりだったが、
「きゅいいいいん」
喉から出たのは、妙な鳴き声だった。
周囲を見ると、王都ではなかった。
うっそうと茂る森の中……のようだ。
いや、変わっているのは場所だけじゃない。
「きゅううん?」
体を見下ろし、ギョッとなった。
鱗に覆われた蛇状の体。
なんだよ、これ!?
『それは現状に対する疑問、ということでいいのかしら?』
頭の中にいきなり声が響いた。
雰囲気からすると、十代くらいの女の子だろうか。
一体、誰だ?
『私はあなたに宿った鑑定スキル。「導きの声」よ』
ナビゲーション……?
『現在のあなたの状態、あるいは他の生物の状態、環境……などなど、知覚できる範囲ならなんでも答えられるわよ』
俺の疑問になんでも答えてくれる声、ってことか……?
『私が知覚できることで、かつ私の知識の範囲内でならね』
ナビゲーションシステムとやらが言った。
長ったらしいからナビとでも呼ぶか。
……などと、早くも今の状況に順応し始めている自分に軽く驚きつつ、たずねる。
じゃあ、教えてくれ。
今の俺は一体どうなってるんだ?
体が蛇みたいに変わってるんだが……?
『そうね……まずステータスを見てもらうのが早いかしら』
ステータス?
『【ステータスオープン】!』
ナビの声が高らかに響く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
称 号:暗黒竜王
種 族:ベビードラゴン
形 態:スネークタイプ
L V:1
H P:8
M P:10
攻撃力:6
防御力:3
素早さ:14
★ :7
〇所持スキル
【鑑定(竜王級)】LV1
【噛みつき】LV1
【体当たり】LV1
【滅びの光芒】LV1
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
俺の前方に、そんな文字列が浮かび上がった。
暗黒……竜王?
なんだか仰々しい称号だ。
その割に、俺の姿は随分と貧相な気がするぞ。
目で見える範囲で自分の体を見た感じだと、たぶん体長1メートル程度の蛇……という姿だと思う。
『そうね。正確には現在のあなたは体長1.02381メートルよ。四肢はなく蛇同様の姿。角や翼もないわね』
と、ナビ。
『あ、今の自分の姿が気になるよね。これで確認できるかな? 【映像表示】!』
その言葉とともに、俺の前方にモンスターの映像が浮かび上がった。
体長1メートルくらいで、顔は竜、四肢のない蛇のような姿──。
……って、これが俺?
『そ。あなたの姿を実寸大で表示したのよ』
こ、これが俺か……。
あらためて見ると、現実を突きつけられる。
俺はもう人間じゃない。
ドラゴンになってしまったんだ……。
なんだか、途方に暮れてしまう。
これからどうすればいいんだろう……?
俺はため息をついた。
しゃー、と威嚇するような呼気になってしまった。
人間のときみたいに上手く吐息が出ない。
まあ、それはともかく。
これがなんらかの夢──それも悪夢のたぐいだ──という可能性を考えたが、それにしては感覚がリアルすぎる。
残念ながら現実のようだ。
で、これが現実だと認めたうえで、俺はどうすればいいのか。
人間に戻りたい──。
最初に思ったのは、それだ。
『前世のあなたは人間だった……けれど殺されて、竜へと転生したの。人間に戻ることはできないわ』
と、ナビ。
やっぱり俺は殺されたのか。
王都を襲う巨人やドラゴンの軍勢に殺されて──。
じゃあ、ずっとこの姿のままなのか……?
『人間の姿になりたい、ということなら方法はあるわ』
ナビが言った。
『高レベルの竜は人化の術を会得できるの。ただし、あなたのレベルでは無理ね。そもそも竜語魔法すら扱えないもの』
人化の術……か。
待てよ、『今の俺のレベルじゃ無理』ってことは──。
『そう、あなたがレベルを上げ、竜語魔法を操れるような眷属に「進化」すれば可能だと思うわ』
と、ナビ。
『あなたは、今はまだドラゴンとして最弱の部類よ。だけど「竜王」の称号持ちだからね。進化を重ねていけば、いずれは最強の竜種になれるはず』
レベル上げと進化……?
正直、いきなり竜になってしまって途方に暮れているけれど。
まずはそこを目標にしてみるか──。
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