7.嫌な予感が的中しました
あれから一週間たった。
変わったことといえば、カイが私のことを人間呼びから「ねぇ」とか「あのさ」で話しかけてくるようになったくらいだ。
カナからは勉強以外は優秀と聞いていたが、まさにその通りだった。
平気そうに木の枝から隣の木の枝まで飛び移っていたりして見ているこっちが落ちないかと不安になる。 けれど獣人は身体能力がもともと高いらしいから、これが普通なんだとか。
「ねえ、これは?」
「これは前にやった問題と同じだよ」
私とカイは算数の足し算引き算といった、初歩的な勉強をしていた。
勉強以外は優秀と言っても、教えればきちんと覚える。どちらかと言えば、理解をしていなかっただけだったのかもしれない。
この年で算数は早いのかもしれないが、カナが覚えても損はないということだった。
それに対してカイは素直に従った。
なんていうかカナの言うことは大体聞いているんだよね。
「出来たよ!」
そう言って普段は向けてくれないような笑みを浮かべていた。
こうしてみると、根はいい子なんだろうなと思う。
けれど浮かべられた笑みはすぐに消え、いつもの一線を引いたような態度に戻ってしまった。
***
私とカイは水を汲みに川へ来ていた。川に流れている水はとても綺麗で、透き通って見えるくらいだ。いつもならば水の流れる音を聞いていると心が落ち着居くのだが、先ほどから胸騒ぎがする。
……何だろう。嫌な予感がする。
そう思った私は急いで洞窟へと走った。
後ろでカイに呼ばれた気がしたが、無視して走り続ける。息が切れ始めて体がどんどんしんどくなってくる。でも止まってはいけない気がした。
洞窟の傍でカナが目を閉じて横になってるのが見えた。私の嫌な予感は気のせいだったと思いたかったけれど的中してしまった。
近寄ると、カナは汗をかいていて何やら苦しそうだった。何度も呼びかけるが、返事はない。
「急に走り出してどうした……ってカナ!? 何があった!」
「わからない。嫌な予感がして急いで戻ったら……。とにかくクロミを呼んできて!」
「わかった。すぐ戻る」
私のことをすぐに追ってきたカイはすぐに異変に気が付き、クロミの元へ向かった。
カナの体に傷などは見当たらなく、苦しんでいる原因もわからなかったため、私はただ見ていることしかできなかった。
***
あの後、カイはクロミを連れてすぐに戻ってきた。クロミも状況を理解すると、今まで見たこともないような真剣な表情を浮かべていた。
「詳しいことは分かりませんが、前にカナから聞いたことがあります。元々持っていた病気があると……」
「じゃあ、カナは治らないの?」
目には自然と涙が溜まって見えずらくなる。それを腕で拭って、クロミの話に耳を傾ける。
「直す方法は私にもわかりません。けれど一つ、これは確かではありませんが、やってみる価値はあると思うんです」