5.4歳になりました
「お誕生日おめでとうございます! シーラちゃん。はい、これプレゼントです」
「わあ、ありがとうクロミ!」
クロミはそう言って私に紙袋を渡した。中にあったのは小さな長方形な箱だった。箱を開けようとしたのだが、何やら視線を感じる。その視線を感じたほうを見ると、クロミが早く開けてと言わんばかりの眼差しでこちらを見つめていた。
こんなに見られると逆に開けずらい。
「ねえクロミ」
「なんでしょう?」
「なんでそんなに見ているの?」
「私が選んだプレゼントを開けてくれるところを見なくてどうするんですか!」
「あ、そうなの」
「そうなんです」
気にしたら負けだ。
そう思って箱を開けると入っていたのは赤い花の髪飾りだった。
「これ可愛い! ありがとうクロミ」
「いえ、誕生日ですからね。……というよりシーラちゃんの方が可愛いです。シーラちゃんも遠慮せずに言ってください。女の子にとって、おしゃれは大切ですから」
「4歳でも?」
「おしゃれをするのに年齢なんて関係ないです」
私が好きそうな可愛らしいものだった。シンプルだが、細かいところまで丁寧に作られているのがわかる。やはりクロミはセンスがいい。
続いてカナもプレゼントらしきものをくれた。受け取ったときは落としそうなくらい重かった。中を見ると、本が数冊入っていた。
『最近勉強頑張っているみたいだから、新しい教科書よ。さすがに私は街に行けないからクロミに頼んだけどね。後は絵本も入っているわ』
「わあ、すごい!」
私は嬉しさのあまり、カナに抱きついた。
カナってもふもふで気持ちいいんだけど、なんていうか……包まれている感じで安心するんだよね。
本にサッと目を通すと、教科書は所々にわかりやすく書き足された跡が見られ、絵本もいくつものの物語が入っており、楽しめるようになっていた。これもカナの心遣いなのだろう。
「ちょっと、私にも抱きつかないんですか!?」
「もうっ……カナもクロミも大好きだよ。私のためにありがとう。すっごく嬉しい!」
クロミの表情はころころ変わって大変そうだ。さっきは怒ったり、今は私が抱きついただけで頬が緩んで喜んでいる。
「ほら行きますよ。今日はごちそうです!」
『そうよ。クロミもめずらしく手伝って作った自信作なの』
「うん!」
この日の夜は暗い森の中で洞窟の明かりだけが夜遅くまでついていた。そして賑やかな笑い声も。
***
朝起きたら傍にはクロミからもらった髪飾りとカナからもらった本が置いてあった。
昨日は私が一番最初に寝てしまったが、それでもだいぶ遅い時間帯だった。クロミとカナはさらに夜遅くまで起きていたらしく、まだ眠っている。
夢じゃなかった。夢じゃなくて良かった。だってこんな幸せなのに夢だったっていうオチは嫌だから……。
私はもらった髪飾りを付けて叫んだ。
「クロミ、カナ起きて。朝だよ!」
「もう少し寝かせてくださーい」
『まだ眠いのよ……」
「ほらそんなこと言わないで起きてー!」
今日はまずカナとクロエを起こすことから始まりそうだった。