4.勉強も意外と楽しいものです
『今日は文字の勉強をしようか』
「文字?」
『そうよ。習っておいて損はないと思うの。ということで今日から遊ぶ時間を削って勉強をするわよ』
「………遊び時間を削るの?」
『もちろんよ。と言ってもシーラの一日ってずっと遊び時間みたいなものでしょ。朝起きてご飯食べて、鬼ごっこ。その後は、お昼ご飯食べてずっと遊んでるじゃない』
「うっ………」
文字の勉強は別にいい。遊び時間を削るという点が問題なのだ。
以前までは一人で遊んでいてつまらなかったが、クロミと会って以来、一緒に遊んでいる。それからは一人でできなかった遊びなどできて楽しくなったのだ。
だから出来ることならば削りたくはなかったけれど………。
「わかった。ちゃんと勉強する。その代わり一日だけ勉強のない日を作って欲しいなーなんて」
『んーそうね………いいわよ』
「だったら頑張る!」
カナは少し考えたようにしてから私の提案に頷いた。
流石に日曜日みたいな休みの日は欲しいからね。
***
「…………」
勉強をするとは言ったものの、わからない。
この世界の文字や言語は共通らしい。今勉強している文字が記号にしか見えないのは、日本語を見慣れすぎているせいなのか。それは分からないけれど、勉強を始めて一週間。
まず書くことよりも読む方を優先的に覚えようとしているが、一向に進まない。
『とりあえず文字を特徴で覚えてみたら? ほら、この文字上のところが豚の尻尾みたいじゃない』
「ほんとだ! これなら覚えらえそう」
『それは良かったわ』
それからは、覚えられなかったのが嘘のようだった。
よく見ると文字の一つ一つに独特な特徴が見受けられた。それもほとんどが動物を表しているような部分がある。
例えば私が今見ている文字なんかは、ウサギの長い耳が文字の一部分に入ったりしている。
この文字を編み出した人は動物が好きだったのだろうか。
一度コツを掴めば後は簡単。
文字が読めれば、練習は必要だが書けたりもできる。鉛筆や紙は街に行って買わないと無いので、木の棒を使って地面が土のところを削る。
『これは何て読むでしょう』
「んーと、クロミとシーラは仲が良いです……?」
『正解。今度は、私は遊ぶのが好きですって書いてみなさい』
私は持っていた木の棒を握り締め、一文字一文字丁寧に書いていく。
たまにこういった遊び感覚でクイズを出して答えたりしている。意外と楽しみながら勉強ができる方法なのだ。
それに正解したら褒めてくれるのでやる気がますます出る。
それからというもの、私にとって勉強の時間は遊ぶ時間と同じくらい大切になっていた。勉強に集中しすぎてご飯を食べ忘れたり、いつの間にか日が暮れていたなんてことが多々あるくらいだ。
カナは勉強もいいが休憩も取るようにと進めてくれた。クロミの方はというと、最近遊ぶ時間が少ないから外に遊びに行こうと誘いに来る。
その時はカナがクロミも一緒に勉強をしたらと提案すると、それは遠慮すると言い逃げるが捕まって私の隣で勉強することになる。
そしてクロミはいつも頭を抱えて考えている。その時に耳が垂れていてそれもまた可愛いくて触りたい気持ちを抑えるのに私は必死だったりする。