3.初めてのお泊り会しました
平仮名の台詞が多く、読みずらいかもしれませんがご了承ください。
それではどうぞ!
『クロミ、その辺にしておきなさい』
「シーラちゃんを独り占めにするなんて許しません!」
『いや、そうじゃなくて。そのシーラが苦しそうなのよ』
「ふっ、その手には乗りませんよ………ってきゃあああーー! シーラちゃんしっかりしてください!」
カナに言われて私の状態に気づいたクロミはすぐに腕の力を緩めてくれた。あと少し遅ければ意識がなくなっていた。
それからクロミには何回も謝られたけど、今度から気を付ければいいと言うことで事は収まった。けれどクロミは『今度から』という言葉に食いつき、これからも抱きついていいのかと目を輝かせて聞いてきた。
その時にクロミの耳がぴょこぴょこと動いていた。
わかりやすいな……。
私はクロミの耳を触らせてくれるなら、という条件付きで抱きついてもいいと許可した。もちろん力を緩めてほしいことも伝えた。先ほどのようなことがあっても困るからだ。
***
「ねえ、クロミ。かえらないの?」
「シーラちゃんは私に帰ってほしいんですか!? そうですか……わかりました。どうせ私なんて────」
「まってまって。そういうことじゃなくて、もうおそとがくらくなってきたから、かえらなくてもだいじょうぶなのかなっておもったの」
「シーラちゃん!」
私が早く帰れという意味で言ったと思ったのかクロミはこちらをチラチラと見ながら、ネガティブな言葉を発していった。まるで止めてと言っているように。
自分の言ったことが言葉足らずだということに気づき、心配していたという意図を伝えたらクロミは涙目になりながらまた抱き着いてきた。
なんか慣れるものだよね。
「今日はカナに許可をもらって、お泊りすることにしたんです! だから今日はたくさん話しましょう」
「そうだったんだー」
「じゃあそうとなったら、夜更かしです!」
『ダメよ。夜更かしはまだシーラには早いわ』
クロミは私と夜通し話すことに対して楽しみにしていたが、カナが却下した。
カナがダメだと言うのならば仕方がない。
「クロミ、わかっている?」
「もちろんです!」
「はやくごはんたべてはやくおはなしして、ねよう!」
「そうですね!」
私たちはすごい勢いでご飯を食べ終え、後は寝るだけとなった。
クロミは話を聞かせてくれると言ったけど……まさか怖い話だったなんて!
怖い話とか苦手なんだけど。
「私たちが今いる森の中にある洞窟────」
「こわいはなしはやめよっかクロミ」
「今からがいいところじゃないですか。私たちが今いる森の中に沢山ある洞窟の中の一つ、そうまさにここみたいなところ。その洞窟の周りには銀の毛を持った怪物がいた。その怪物は人の姿はしていたがそれは相手を油断させるため。本当の姿は酷くおぞましかった。そして油断させた後は────そいつを食べちゃうんですー!」
「ひぃっ!」
私は前世から怖い話はもちろん、ホラー映画や小説すらも苦手だった。
小学生の修学旅行でやった肝試しで、お化け役の男子にからかわれてトラウマ化したのだ。ホラー映画はトラウマのせいではなく、普通に怖かったからだ。
クロミは怖い話をした後にすぐに寝てしまった。
え、嘘でしょ。話のせいで寝れないんだけど。眠気はあるにはある。けれど話の舞台がここみたいな洞窟と言われてたら、もしかしたらと思ってしまう。ここにもその怪物が来るのかもしれないと。
結局私は怖かったのと警戒していたので、眠れなかった。
目の下には隈ができ、寝不足だったためにしばらくはカナにくっついて寝ていた。すると不思議と眠りにつけた。
カナには怖い話を禁止され、クロミは正座をしたまま一時間くらい説教されていた。
禁止されなくてももう怖い話は聞きたくない、こちらの世界に来て三年でそう思った。