31.オノマ6
翌朝
昨日と同じように起きてみんなの朝食の準備をしているとルミアが起きて来た。
「ユアお姉ちゃん、おはよう」
「おはよう。もうすぐできるからもう少しだけ待っていてね?」
「分かった」
そう言うと厨房を出て行ったので残りの料理を急いで仕上げた。
「よし。完成」
そう思って他の子達も起こそうと思ったら入り口の方で誰かの話し声が聞こえて来た。何だろう? と思って入口の方に近づいていった。
「早くあいつの持ち物を持って来い」
「嫌って言っているじゃないですか!」
「早く言うことを聞け!」
とオノマとルミアの声が聞こえた。どうして彼等がここに? そんなことを思っていると話が少しずつ不味い方向に流れて行った。
「どうして急にそんなことを! そもそも本人も嫌がります」
「おめぇには関係ない早く寄越せ! じゃないと」
とそう言ったタイミングで彼等が見える所に来るとオノマが手を振り上げていた。もしかしてルミアを殴るつもり! そう思い急いで彼女の元へ走り彼女を庇う。
「っう!」
そして背中でオノマの攻撃を受ける。ルミアを見ると驚いた表情をしながら私を見ていた。
「ユアお姉ちゃん大丈夫!」
そう、私のことを心配してくれた。その一方でオノマはというと。
「どうして生きている」
「え?」
オノマの呟きがルミアに届いたらしく彼女が驚いたようにオノマの方を向いていた。もしかしてあの現場で私を死んだと思って私の物を取りに来たと言うの? それはそれで意味が分からないけど……。
「どうして私の持ち物を取りに来たの?」
「そんなのパーティのものだからに決まっているだろ?」
と如何にも当たり前みたいな感じで言ってきた。私のものなのにどうしてそんなことが言えるの?
「お前には関係ないだろ!(ッチ、なぜ生きている!)」
急に切れたかと思ったら小さい声でそんなことを言っていた。やはり私を殺すつもりで短剣投げていたのか……。やっぱり、としか言えないけどもしレーナちゃんがいなければ確実に死んでいたと思う。彼女には感謝したいけど巻き込んで申し訳ないと思う。本当はもっと彼女と仲良くしたいけどオノマ達のことや孤児院のみんなのこともあってそんなことはなかなか難しい……。
「それってどういうことなの! なぜ生きているってどういうことなの!」
「!?」
ルミアがそんなことを言った時にしまった! と思ったけどもう遅かった。ゆっくりと後ろに振り返ると怒りの形相のオノマがいた。彼の言葉がしっかりと聞こえていたということはルミアにも聞こえていないわけないのに……。彼の言葉の意味を考えずにルミアに気を遣っていればオノマはここまで怒ること無かったのに。そう後悔してももう遅い。とにかくルミアを守らないと! そう思いオノマがルミアに向かって殴ろうとしたのを私がそれを庇う。
「ユアお姉ちゃん!」
「お前は邪魔だ。そこを退け! 殴れないだろ?」
「彼女はやらせない!」
そう言ってルミアとオノマの間に立つ。
「! フン、いつまでも持つだろうな!」
一瞬オノマが驚いたように見えたけどすぐにいつもの表情をして腕を振り被って来た。私それを受けながらルミアを庇う。
「ユアお姉ちゃん」
「大丈夫だから向こうの部屋に」
「で、でも!」
「っう! な、何とかするからお願い」
「私のせいなのに……」
そう言って落ち込んでいるルミアに小声お願いした。
「(お姉ちゃんを信じて?)」
「……分かった」
と言って私のことを心配そうにしながらしぶしぶその場を離れてくれた。
「あいつは逃げたのか?」
「あの子には指一本も触れさせない」
「ほぉ~。いつまで持つだろうな?」
そう言うとただひたすら蹴られ殴られた。それはもうサンドバックのように……。
どれくらいやられているのかな? そんなことを思った時だった。
「もう、ユアお姉ちゃんを殴ったりしないで!」
そう言ってルミアがオノマの前に立っていた。よくみると足がプルプルと震えている。怖いと思っているのなら来なくてもいいのに……。そんなことを思った。
「やっと来たか」
と言って厭らしい笑みを浮かべて腕を振り被ったので私はルミアの前に出たが殴り飛ばされて床に体を打ちつける。
「お姉ちゃん!」
そう言ってルミアは私の元に駆けよる。体は痛いが何とか体を起こす。
「しぶとい餓鬼だ」
そう言いながらルミアの方に手を伸ばそうとしていた。
「ごめん」
「え? キャア!」
そう言ってルミアを後ろに転がした。
「いいところだったのに邪魔してんじゃねぇぞ!」
そう言って今度は私の腕を掴み持ち上げられる。掴まれている左腕が痛い。そんなことを思っていると腕を掴んだまま横へ思いっ切り飛ばされた。その時「ビり!」という音とともに私はルミアの方に投げ飛ばされた。
ルミアは私に近寄ろうとしてきたが悲鳴をあげ少し離れた。
「に、逃げろ!」
という小さな子の声と何人かの足音が聞こえた。オノマ達がいたから逃げているのかな? そんなことを思っているとルミアも私から距離を取っていた。
「ゆ、ユアお姉ちゃん、そ、その、腕はどうしたの……」
どういうこと? と思って腕をみると先程オノマが掴んでいた左腕辺りから服が破けて大きなやけどの痕が覗いていた。そのことに気が付いて私は慌てた。院長先生しかこの腕の事を知らない。彼女達はこのやけどの事を話したことも無い……。
「こ、これは……」
と言いながら体を起こして何て説明しようと思っていたらルミアが少しずつ離れていた。
「待って!」
と言ってルミアに近づこうとしたらルミアが少し青い顔をしながら叫んだ。
「こ、来ないで!」
と拒絶された。私は、あまりの事で呆然としていた。ルミアは少し経ってからオロオロしたかと思ったらその場を離れて行った。
「……面白いなお前!」
そう言ってオノマは私の頭を掴み無理やりオノマの方へ向けさせられた。
「気持ち悪い腕のこと教えていなかったんだな! 面白すぎてお腹が痛いぜ!」
と言いながらゲラゲラと笑っていたが私には彼が何と言ったのか耳に入ってこなかった。




