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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第8章~Shutdown Stage<Secondact>~
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97. 2人の師匠

「着きましたよ」


 ふと、イエローさんが声を上げた。


「.......ここ?」



 辺りを見回しても、宇宙空間のど真ん中だ。当然だがそこには何も無い。星々を背景に漆黒の虚無が広がるだけだ。



「後はプライスを待つだけか」


 そう呟くと、伊集院君は徐に立ち上がり、機内に備えられた棚から工具箱を取り出し、中からドライバーみたいな物を取り出した。


「どうしたの?」

「ん、武器の手入れだよ。この仕事が完了したら翌日にはルナティックの本部を叩くからね、今のうちに出来る準備はするつもりだ」


 そう言うと、伊集院君はポケットから掌ぐらいの大きさの筒を2つ取り出した。


「.......それが武器?」

「ダークセイバー。特別なギミックとかは無いが、魔力を流し込むと闇で出来た刃が出る。軽くて使いやすいが、軽すぎて重力魔法とかを付与しないと威力が出ないのが弱点だ」


 そう言うと彼が魔力を流し込んだのか、その筒から黒紫の刃が現れた。


「ライトセイバーじゃないんだね」

「ライトセイバーは光の束であるのに対して、こっちは闇。ライトセイバーは斬られた時に熱さを感じるが、ダークセイバーは冷たいんだよ」

「なるほど、じゃあ対をなす存在なんだ」

「正解。光はエネルギーその物であるのに対して、闇はエネルギーを吸収する。だから光で焼く事が出来るのに対して、闇は熱を奪い相手を凍らせ動きを鈍らせる」

「.......でもなんで2つも?」

「昔から二刀流なんだよ。一刀流ももちろん出来るが.......イエローはそう言えば一刀流だったな」

「うん」


 イエローのガンソードから蒼白い刃が伸びると、二人は互いの刃をそっと交えさせた。


「お互いに同じ人物に師事していたはずなのだが」


 伊集院くんはため息をつきながらそう言った。


「そんな事言ったら、師匠そもそも杖使いだったじゃん。師匠の弟子に杖使いいないじゃん」

「確かに」


 言われてみれば、確かにこの2人は戦い方が全く異なる。

 伊集院くんの動きは洗練されていて無駄がないが、やや消極的な気がする。イエローさんはどちらかと言うと自分から仕掛ける側だった。


 ああでも、どちらも敵に対しては何故か態度はやたらとデカかった。そこは似ている。

 それがこの2人の師匠の教え方なのだろうか。


 伊集院くんとイエローさんの師匠って、どんな人なのだろう。とても気になる。




「遅れてごめ~ん!」


 偵察機からの入電が入る。


「やっと来ましたね。さ、ドッキングの準備をしましょう」

「えっ、もうなの? 手入れの最中なのに」


 残念そうな声を上げながら、伊集院くんはドライバーみたいな器具をしまい、セイバーを懐にしまい込んだ。


 暫くすると、ガコンと大きな音が聞こえ、一瞬機体が揺れた。



「さ、行きましょうか」

「ああ。彗も」

「うん」


 機内の奥にあるドッキング用のハッチが開き、僕達は狭い通路を歩いていく。すると前方に再びハッチが見え、これがまた開くと先程の鮮やかな青い体毛を持ったプライスが現れた。



「ようこそルナティック偵察機に」

「お邪魔しま~す」


 偵察機はかなり広く、僕達が乗ってきた物よりも大きかった。内装は大きめなベッドが置かれてあり、申し訳程度に横長のソファーとダイニングテーブルが置いてある。


「随分と広いんだね、プライス」

「どいつもこいつも偵察任務が入るとやれ男だの女だのを連れてそこのベッドでヤってるのよ」


 や、ヤってるって.......何してるんですか貴方たち。


「なるほど。通りで快適な訳だ」


 至って普通な反応を返す伊集院くん。


「プライス、ところで着陸地点は何処になるんだい?」

「離発着所自体はそのままエリアYルナティック本部よ。だからまずは本部から出て防衛基地まで行く必要があるわ」

「了解」


 伊集院くんはそれだけ言うと再びドライバーを取り出して武器のメンテナンスを始めた。


「じゃあ、発進するわよ」


 こうして、偵察機はエリアYに向けて発進した。

 イエローさんはどうも座り心地が気に入らなかったのか、いつかの先頭で使っていた浮遊ソファーを出現させそこに座り込み、読書を開始した。

 プライスは運転を始め、僕も宇宙の星空を眺めることで時間を潰すことにしたのだった。

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