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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第8章~Shutdown Stage<Secondact>~
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94. 可変型武器

 天野空と言う魔女は、武器の事になるととても饒舌になる人なのだと知った。


「武器って、どんな種類があるの?」

「んーどういう区分けをするかにも寄るんだけど、近接武器と遠距離武器みたいな区分もあれば古典的(クラシック)な武器と可変型(ギミックド)武器もあるし、色々だよとしか言えない」

可変型(ギミックド)?」

「例えばライフルに変化する槍とか、ボウガンになる鎌とか、複数の武器特性を持ってる武器を可変型(ギミックド)武器って言う言い方をするんだ」


 複数の武器特性を持つ武器、か。

 今までそんな物、考えた事も無かったかも知れない。


「た、例えば?」

「んー直接見せて実演した方が良いかなー。あ、これなんかどうかな」


 そう言うと、彼女は棚から青い色の不思議な棒状の武器を取りだした。

 2本で一対となる武器なのだろうか。刃のようなものが付いている。


「これは?」

「これはブレードトンファー。見ての通り、トンファーに刃を付けて殺傷力を上げた武器なんだけど、これ実は2本のトンファーの持ち手のところに金具がついていて、繋げると刀にもなる」


 そう言うと彼女はトンファーをドッキングさせて握ってみた。

 S字と言うかZ字と言うか。彼女の肘から手にかけて美しい刃が彼女の腕を守り、もう片方の刃が彼女の親指側から大きく伸びている。


「トンファーって初めて見たけど、これどうやって使うの?」

「これね、横に出ている短い部分をこう握って、使うの。この長い方の部分は腕に密着させて、刃で切り掛かられたらこれで防ぐことが出来る。この状態でパンチすると刺突武器にもなるし、くるっと回して長い方を前に出せば防御性能は失われる代わりに打撃武器にもなるよ。もちろん、これは刃物だから斬撃武器にも変貌する」


「凄いな.......」


「他にはこんな武器もあるよ」


 そう言うと彼女は先程のトンファーを棚にしまい、別の長い箱をカウンターの下から取り出した。



「ブレードトンファーは売れ筋って訳じゃないけど、扱いが難しいし通が好む武器。それに対して、こっちはもうちょっと一般的な物かも」


 そう言うと彼女は箱を開けてみせた。中から出てきたのは、奇妙な形をした杖だ。赤い宝石が四角い頭に埋め込まれており、杖の持ち手の部分に長めの突起が2つ。


「これはバレッジロッドって言う武器でね。まあ実際に見せた方が早いか。こっちに来て」


 彼女に言われるがままに店の奥へと案内されると、大きな畳張りの広間へと出た。まるでどこかの道場だ。


「ここはね、ウチのトライアルスペース。武器の試し斬りとか試し撃ちとかするのに使うんだ」

「へえ〜」


 広大なスペースには、的紙のついたカカシやサンドバックの様な何かが様々な所に並べられている。


「で、さっきのバレッジロッドなんだけどねーー」


 彼女がその身の丈程の大きな杖を振るうと、畳から花が咲き始める。そして彼女は唐突に持ち方を変え、歪な取っ手に手を掛けると突然発砲音がし、前方にあったカカシの頭に風穴が開いた。


「ーー見ての通りライフル銃になる」

「えっ、すごっ!」


 銃にもなる魔法の杖。

 考えたこともなかった。


「似た形状の武器が合体して可変型(ギミックド)になるケースはそこそこ多いんだ。槍になる杖とか、ブーメランになる鎌とか」

「そうなんだ。こんな武器が合体して新しいものになる世界があるなんて、知らなかったよ」


 武器の世界は潜ってみたら深そうだ。

 伊集院くんがハマるのも頷ける気がした。


「ここは中世じゃなくて現代かつここ宇宙空間だからね。やっぱり産業革命やイノベーションの波がウチら武器業界も何度か押し寄せているわけですよ」

「なるほどね」


 剣と魔法の世界を頭のどこかで期待していたけれど、確かに僕達は2000年代で生活している現代人だ。

 武器も多様化していても、何ら不思議ではない。



 それから暫く、僕は色々な武器の話について聞いた。

 各武器の性質や成り立ち、可変型(ギミックド)武器の特徴とか。



「じゃあ、僕そろそろ帰るね」

「はーい、毎度あり!」


 しばらく話し込んで、僕は結局最初に勧められたブレードトンファーを購入して、店を出た。

 帰り際に天野さんが何か悪そうな顔をして何かを呟いた気がするが、それは聞き取ることが出来なかった。



「ふう」


 それにしてもびっくりだ。まさか天野さんも魔法使いだったなんて。


「でも……」


 ふと、お泊まりの時の記憶が蘇った。

 あの時、伊集院くんは僕に天野さんが魔法使いだって事を隠していた。天野さんも逆に、隠していた。


 何でだろう?

 そんなことをぼんやりと考えつつ、僕は本部に帰り着いた。

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