90. 固有武装
「【サンダーネット】」
電気で出来た網が上空に放たれると、雨粒が帯電し辺りを攻撃し始める。
「【斥力の壁】」
「【斥力の壁】」
天野さんと2人で唱え、頭上に斥力の防護壁を張り身を守る。
僕達はまだいい。
巧と鳩峰さんは魔法を食らったらひと溜りも無いのだ。
「あ、頭痛ぇ.......」
「痺れてきた.......」
僕と天野さんは極力2人のことを守っているが、魔力の暴力で2人には既に危険な症状が出始めていた。
そもそも、この異空間に降る雨がそもそも魔力によるもので、有害なのだ。
そこに高圧電流や爆発で凄まじい爆風が発生すれば、当然雨粒は身体に飛ぶし、そもそもその爆風も魔力を帯びている。
「【裂】、【爆】!」
「おっと――」
蠍の分身が大量に出現し、その直後にいきなり大爆発を起こす。
爆風が雨を弾き、まるで小さな石の欠片のように僕達へと襲いかかってくる。
「天野さん、このままだと2人が.......」
頭上に斥力の壁が張ってあるので、傘を前方に傾け巧と鳩峰さんに魔力を帯びた雨粒が当たらないように工夫をする。
「フフフ.......やっぱりこうでないと」
Yの銃から電撃の束が次々と撃ち出され、蠍はそれを土壁と変わり身の術で躱すと、彼は木の葉で出来た手裏剣を同時に放つ。
蠍の呪が掛かったそれは弧を描き歪な軌道で敵へと向かう。
「【氷蒼の弾丸】」
銃から氷で出来た弾丸が放たれ、手裏剣を恐ろしい精度で撃ち落としていく。
「どうやら水と雷の魔法しか使えぬと言うのは本当の様だな」
蠍がその一瞬の隙に急接近し、刀で斬り掛かる。
しかしYはその隙をカバーするかのようにその刃を銃の側面で受け止めると、そのまま電流を銃から蠍に流し込み彼を感電させた。
「僕は不自由してないんだ」
感電して怯んだ蠍に鋭い一閃が入る。
一瞬何が起きたか理解出来ないでいると、蠍のシールドが砕け散り、蠍が慌てて彼から距離を取った。
「おや.......もう終わりか。これならRの方が手応えあるかも.......」
見てみると、Yの銃口からは一筋の光が伸びており、蠍と床には大きな切り傷が残されていた。
――ガンソードか。
「ふ、不覚……」
蠍は自分の腹を抑えて、刀を支えに辛うじて立っていた。
銃口から光の刃が仕舞われると同時に、兎人が解説をした。
「これは僕が開発した固有武装のひとつでね。ライトサーベルに変化する銃なんだ」
気がつけば雨が上がり、亜空間の封鎖が解かれていく。
「君には僕は殺せない」
いつの間にやら僕たちは元の電車に、そして元の駅にいた。
「じゃ、また。処理は宜しくね?」
放電する様な音で彼はワープすると、残されたのは僕たち4人と蠍、そしてもう1人電車の隅で寝ているサラリーマンの6人のみとなった。




