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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第7章 〜Shutdown Stage〜
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86. クズと茶番

「ええっやっちゃったの!?」



 些か驚いた様な口ぶりで、伊集院くんがそう言った。

 ここはメタリック城ではなく、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の総帥室だ。要するにいつもの場所。


 伊集院くんは、異様な速度で成長していると僕の事を言うと珍しく悔しがる子供のような顔を何故か僕の隣にいるこなに向けた。


「くっそ、マジかよ」

「ふふん、負けは負けよ。耳揃えて出しなさい」

「あーマジかー.......マジかー.......」


 ふんぞり返ってここぞとばかりに威張り高笑いするこなをよそに、なんだか物凄くガッカリしている伊集院くんが身体を闇に変化させて姿を消した。


 一体何をしているんだ、こいつら。

 そんな事を考えていたらその答えはおおよそ五分後、伊集院くんが再度出現した時に判明した。


「これはこれは、御代官様.......」

「本当に☆1,000万入ってるんでしょうね」


 一瞬何を言ってるのか分からなかった。


「勿論で御座居ますとも」

「私を騙そうとしてないでしょうね」

「そんな、私共が御代官様を騙すだなんて、滅相も御座居ません」

「何を言うか。(そち)は人を騙すの得意中の得意ではないか」

「私は貴方様を騙す程命知らずでは御座居ません故.......」


 全く意味の分からない伊集院くんの茶番に、何故か乗るこな。今更だけど伊集院くんとこなって相当仲良しだな。

 ははーっ!とでも言いそうなノリでこなに対して伊集院くんがアタッシュケースを献上遊ばすと、こなはそのアタッシュケースを開いた。

 ちなみにここまで伊集院くんは何故か足袋を履いており、すり足だ。


「いや、これ中身空じゃない。どう言う了見なのよ。案の定騙したわね!?」

「ふぇぇん……僕未成年だから、賭け事とかしちゃいけないんですぅ~……」


「.......あの、2人ともさっきから何やってるの」


 突然始まった茶番に付き合うのもそろそろ終わりだ。いつまでも人を放置プレイして。ついていけない。


「賭けに負けたんだよ」

「賭け?」

「蠍を誰が倒すのか賭けてたのよ。私は貴方に賭けて、このクズはレメディが倒すのに賭けてた」

「はあ!?」


 伊集院くんがやれやれと言った様子で頭をかいた。

 いや、何してるんですかこの人たち。


「ちなみにそんな言い逃れ次にしたら懲罰委員会すっ飛ばしてダイレクトに給与から天引くから」

「ふぇぇ……ほんと容赦ないよぉ……」

「何がふええよ気持ち悪い。吐き気がするしこの世に存在する全ての非実在青少年に謝って」


 怒るを通り越して、呆れる。

 僕は蠍と抜き差しならない状態に居たのに、この人たちは。


「なんでこんなクズ2人がこの宇宙を動かしているんだろう.......」



 思わず本音が出る。

 宇宙を動かす2人がドクズと言うからなんというか。


「は? あと思い出したけど、彗貴方依頼を受けないままメタリック城に押しかけたでしょ。不法侵入よ」


「……ああっ!!」


 こなの発言に、思わず固まる。

 そう言えばあの依頼、そもそも受けてない。


「え、彗お前無断でメタリック城に侵入した挙句戦艦破壊工作手伝ったの?」

「い、依頼掲示板を見て思わず飛び出して……」


 伊集院くんもさすがに驚いたみたいで、いつもなら薄めているその目を見開いた。


「まあお陰で私は儲かったけどね」

「奉仕活動?」

「むしろ破壊工作手伝ってくれたんだし破壊活動よね」

「それな」


 こなと伊集院くんがお互いに目を合わせると、いえ〜いとか言いながらお互いの手を叩いた。

 どこぞのアメリカのホームドラマか。

 その一瞬が何だかとてもムカッと来たが、そこを抑え込むとこながまあそんなことより、と呟いて真顔になった。


「でも蠍が言った言葉は引っかかるわね」

「うん」


 また会おう、なんて言われてしまうのが非常に気になる。

 蠍は逃げたけれども、まだ次があるという事か。


「次、ねえ」


 突然マジムードになる2人の落差に若干引いていると、こながこう慰めてくれた。



「.......まあ、ルナティックに雇われてる以上また会うことは仕方ないけど、もう一度倒してるならまた倒せるわよ。しかも次に会う時もまたあなたが1人とは限らないしね」

「だといいんだけど」


 その言葉に、伊集院くんがニヤリと笑った。


「まあ、考え込んでも仕方ないさ。聞いたら今日いきなり生身で宇宙空間に蹴り飛ばされたんだって? そんな事したその足で蠍とやり合ったなら相当疲れてるだろ。今日はもう休め」


 と言うか自分の脳筋に周りを巻き込むなよ、と彼がチクリとこなを攻撃すると、こなは腕を組んで伊集院くんを睨み付けた。


「確かに、ちょっと疲れたかも.......」


 今日は初めてなことが色々と多すぎた。

 早めに帰って多めに寝て、たまには家でゴロゴロとしていよう。


「じゃあ、また明日」

「じゃあね~」


 2人に手を振りながら僕はエレベーターに乗って、帰路に着いた。

 今日の朝ごはんはなんだろう。そう言えば明日は学校も休みだ。


 少し家でゆっくりと休んで、ベッドの上で魔導書でも読んでいようかな。





「で、貴方今度は何を考えているの」

「うん?」

「あなたがそう言う顔をしている時は大抵の場合ろくなこと考えてないのよ」

「いやさ、彗とまた逢おうなんて蠍が言うからさ。此方から機会を設けるのもアリかなと思ってね」

「なるほどね。その話、詳しく聞かせなさい」

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