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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第7章 〜Shutdown Stage〜
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83. 盗人働き

「ほ~ら見つけた、これが戦艦の動力路(お宝チャン)よ」

「すっご……」



 扉を乱暴に袈裟斬りにして部屋に侵入すると、目当てのものを見つけたこなの声の音色が上がる。

 周りの機械が低い唸り声を上げて動く中、その戦艦の核はとても異質に感じられた。


 これって、もしかして……



「クリスタル……?」

「うーん、まあそんな所ね」


 巨大な黄色い結晶が、ケースに入れられて宙に浮いていた。

 ケースにはパイプが幾つも繋がれており、そこから無数にある機械に何かを送っている模様だった。


「これはクリスタロ・マジコ.......俗に魔晶石って言う鉱石。現在医学界や物理学界で魔法の源とされてるΔクォーク(魔の素粒子)からなるスペリウム原子(魔素)とケイ素で構成されてるのよ」

「へぇー」


 スペリウムって聞いた事がないな。地球では知られていない物質なのだろうか。

 要するにこれは魔法のクリスタルと言う事で間違いはなさそうだ。


「スペリウムは放射性物質で、これがあなたが魔法使いに成ったキッカケでもある物質。さ、前置きはこれ位にして――」

「壊すの?」


 僕の言葉に、こなはチラリと目をそのクリスタルに向けた。


「んー、そうしようと思ってたんだけど気が変わったわ」


 ガタンと音を立てながらこなは魔法で何かを作り出した。


「悪いけどコンセント探してくれない?地球と違って三角形の穴が3つの奴」

「えっと……あった!」


 こなから差し出されたプラグを近くのコンセントに差し込むと、いつの間にかあったノートパソコンが起動した。

 宇宙にもノーパソなんて物が有るんだ。


「……強力な空間封鎖が掛かってるわねー、これを空間クラックするのは私には無理ね。妨害電波も酷いし……」


 聞き慣れない言葉が2つ。

 でも今はこなに素直に従おう、いつでも聞けるし。


「三分……彗、三分間この部屋に誰も来ないように見張ってて」


 どうもこなはそのノーパソを使って何かをするつもりのようだ。


「分かった」


 そう言ってさっきまで扉だった物の前に立った瞬間、兵士が一名通り掛かった。



「む、貴様何者――」


 扉の前に居た地球人の兵士に顔面パンチをした。意外とこっちの拳が痛い。

 よほど当たり所が良かったのか、兵士は一発KOだ。すまないとは思っている。



「ちょっとー、今の音何ー?」



 後ろからこなの声が聞こえる。


「何でもない!」


 気絶した兵士を、適当な物陰に隠してる間に三分はあっという間に過ぎ去った。


「よし、妨害電波除去完了……ピーカブー!大至急応答して!」


 ザザッ、と砂嵐の音が一瞬聞こえたあと、ノーパソにピーカブーの顔が映し出された。


『こな!どうしたの!?』

「戦艦の座標軸を教えるから五分以内にハッキングして空間閉鎖を解いて!」


 こなはノーパソに向かってそう叫ぶ。


『えっ何で?』

「成功したら臨時ボーナスあげるから黙ってやりなさい!」


 なんてシンプルなお金の計算……

 その傲慢な権力者の鏡みたいな発言に思わず感心していると、ピーカブーから渋々返事が聞こえて来た。


「分かったよ.......」



「あの、これを結局どうするの?」


 会話が一段落して、こながパソコンから目を逸らすタイミングで質問を投げる。

 このクリスタル何とかを、何とかするんじゃなかったのか。


「あー言い忘れてた。クリスタロ・マジコって超貴重なエネルギー資源だし、壊すのが勿体ないから丸ごと盗む」


「あ、なるほど」



 そうか、盗むのか……

 って、正義の組織が盗み!?


「急いで!」


 キレ気味にこながピーカブーに言い放つ。

 一国の姫と別の国の外務大臣の孫が、今まさに僕の目の前に盗みを働こうとしている。そんなことしていいのか。止めるべきだろうか。


 .......いや、僕が何か言ってもどうせこなは止まらないだろう。そして、止められない時点で僕も共犯なのだろう。

 色々と残念過ぎる事実を察して、僕はそのまま黙り込み、行く末を見守った。


『あ、あとちょっと』



 痛いほどの沈黙が流れる。


『――出来た!』

「今よ!転送!」



 ピーカブーの声が聞こえた瞬間、魔法陣がクリスタルの下に出現し光を放つ。

 クリスタルがバシュッ!と大きな音を立てて転送された瞬間、エネルギー源を失った戦艦が暗闇に包まれた。

 供給を失った機械がストップし、停電が起きたのだ。



「さあ、もうここに用はないわ。脱出よ!」

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