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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第7章 〜Shutdown Stage〜
76/269

75. 看破

Shutdown

(工場などの)休業,閉鎖;操業停止


Stage

1.舞台,ステージ;演壇;舞台,場所

2.(発達・発展などの)段階,時期

――[動](他)〈劇〉を上演する,〈試合など〉を(興行として)行なう

―(自)上演できる

 スカウターに通信が入る。


『此方伊集院、DEATHの犯行のはずだが敵の大将にセルティネスを確認。これより討伐を開始する』

「はいはい」


 妙だ。

 敵の意図が見えない。


『此方ピンキー、ザントと合流した。引き続き鎮圧する』

「了解」


 伊集院に引き続き、ピンキーからも報告が入る。そしてそのピンキーとの通信が途切れた瞬間、聞き慣れたワープ音が後方から聴こえた。


「グレイスお疲れ様。リアブソーブの事は伝えたみたいね?」

「ええ」


 情報は意図的に流布された。

 これで敵を内部から切り崩して行く事は出来るだろうか。


「今おとめ座銀河団と局部銀河群をスキャンしてるんだけど、特に怪しい艦隊も見つかってないのよね」

「……」


 グレイスは何か考え込んでる様子だった。

 彼女はこちらに寝返る前はルナティックスターズを統率するブレインであった。


 今、潜入しているスパイを除いて最もルナティックに近いのは間違いなく彼女だ。その彼女の分析力に何か、サプリを与えられればいいのだけれど。


「標的になっていなかった惑星はクラフト、メタリック、ヤーテブ。みんな軍事惑星よね」


 自分がそう指摘してみると、グレイスの瞳が一瞬ギラりと光った気がした。

 すると、その下にあった口が開いた。


「恐らく……推測に過ぎませんが――メタリック星が標的でしょう。そして恐らくピアースを襲ってそれをDEATHの犯行に偽装した私たちの工作も見破られているでしょう」


 その考えにまだ確信が持てないような声のトーンで彼女がそう答えると、言葉に出してみてそう確信を持てたのか、彼女は強く頷いた。


「その根拠は?」


「まず、クラフト星を攻撃するとは考え難いです。クラフト星は今特に重要人物を私たちの懐に置いている訳でも無いので、ある意味ではルナティックと中立にあります」


 彼女はゆっくりと瞬きをするとこう続ける。


「一方でヤーテブはピンキーさんが重要人物としてこちらに来ていますが、ヤーテブ星自体は私たちと敵対的な関係にあります。つまり、『我々』から見て侵略する旨味はありません。なので消去法でまだ侵略されてないのはメタリックなので、そうなります」


 なるほど。今のところ妥当な考えだ。


「しかも、DEATHの犯行であるとしたら、あそこはルナティックと組織的な行動や提携は出来ません。あそこはあくまでもただのテロリスト、利用することはあっても提携なんてありえないでしょう」


 DEATHの犯行と言うのはどうやら釣りみたいだ。なんせルナティックは私たちと元々は同じ組織だ。

 少なくとも本格的に敵対しミイラ取りがミイラになり始めるまでは、ただの分家のような物だった。


「分かった。じゃあ今メタリックに居るレメ――」

「失礼しまーす」


 グレイスに指示を出そうとした時、会議室の扉が開いた。

 扉の奥から現れたその人物を見て、気がつけば私の顔がニヤリと歪んでいた気がした。


「いい所に来てくれたわ。悪いけどこれからメタリック城へ向かってくれない? ルナティックの目標がメタリックである可能性が高いし今空いてるあなたなら――」

「そろそろ戻らないと学校が……」



 星野彗からそんな言葉が発せられる。

 宇宙の危機とどちらが大事かと聞かれたら答えは明白だ。残念ながら彼の予定に構ってる暇はない。



「1日ぐらい休んだら?」

「いや、テスト近いしそういう訳にも行かなくて......」


 彗が困った顔をしているのを他所に私は更に畳み掛けた。


「これ上司命令。従わないなら減給」

「ええ!?」


 傍でグレイスが申し訳なさそうな顔をした。

 確かに申し訳ないが、今は状況が状況だ。


「お金が減るか否かを選びなさい」

「そんな」




「ところでこな、ちょっと内部通報が今俺の中でマイブームなんだが君の事をパワハラで密告してもいいかな」


 音もなく闇が集まり人の形を成すと共に、アイツの嫌らしい声が聞こえた。いつの間に任務を終えたのだろうか。さっき私この男と通信してなかったっけ。


 私の真後ろに現れた男は彗をチラリと見遣ると、不敵な笑みを浮かべながら私の前へと出た。



「まるで自分はホワイト上司みたいな言い方ね」

「俺はホワイトだよ、超ホワイト。だから彗、自分の賃金のことは気にせずに帰っていいぞ」

「ホント!?」


 満面の笑みを浮かべる彗に対して、とてもイライラした。まるで私が悪者みたいだ。こちらとしては彗に対人経験を積ませるいい機会でもあるというのに。


「ああ、分かったらさっさと行け」

「じゃあお疲れ様でした!」


 人払いをするような仕草を彗に対してすると彼はそそくさとエレベーターに戻り消えていく。


「あのさあ......」

「彗の代わりに俺の式神もどきをばらまけばいいだろ」

「そういう問題じゃない」

「喧しいわ。早く対策を立てるぞ」

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