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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第6章〜Smart Schemes〜
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73. 旧き者との再会

「【光の哀歌(ウィケレジー)】!」


 狂った哀歌と共に放つ光線が戦闘員を呑み込み辺りを破壊して行く。

 何故こんな事になってしまったのだろうか。

グレイス様や(ザント)様御二人の姿が見当たらない。何処に行ってしまわれたのか。


(ザント)様ー?」


 少なくとも館内の敵は殲滅することが出来たが、肝心の二人が居ないのだ。あの方々はどの道強力な魔法使いなので心配はしていないが、やはり不安ではある。恐らくは外にいるのだろう。


 そんな時、地響きが発生し天井が崩落した。


「えっ!?」


 見上げれば、天井に開いた穴から屋上での魔法の応酬が窺えた。

 咄嗟に無詠唱魔法で屋上に飛び上がると、そこには翼のような魔物と交戦するグレイス様の姿があった。


「【ソルリフト(レヴィソレイユ)】!」

「【聖者の輝き(スタブライト)】!」


 巨大な火の玉が私の身体を掠めると同時に、グレイス様の身体から強烈な光が放たれ、あたりを焼き尽くした。

 発光するグレイス様の攻撃を回避するために天高くへと竜の翼が舞い上がると、上空から再び魔法が降り注ぐ。


「【ウインドブーマー(ウインドブーマー)】!」

「【フレイムボディ(メゾバーニア)】!」


 片割れが風の大砲を放つと同時に、もう片方が炎を纏いつつ突進攻撃を仕掛ける。


「【アクアバレッジ(オウソーク)】!」


 自分が杖を取り出して呪文を唱えると水の弾幕が出現し火を纏う個体を攻撃し足留めさせる。

 その隙にグレイス様は風の大砲を回避すると、私の背中に背中合わせで着いた。


(エレガント)、状況を」

「子供たちの避難は終了し館内の制圧は完了です。(ザント)様とグレイス様の客人はどこにも見当たりません」


 デュセルヴォの両翼が集まると同時に双方が同時に火を噴く。

 グレイス様が飛び上がり、自分は炎のベクトルを操作し火炎が自分たちを避けるように誘導するとグレイス様の杖から強大な鞭が現れデュセルヴォへと叩き付けられた。


「墓地の方で煙が上がっています。恐らく兄と星野さんはあちらに居るでしょう」


 グレイス様の指摘を受けて墓地を見ると、確かに煙が上がっていた。なるほど確かに居そうではある。


「邪魔が入ったか」

「分が悪いね〜」


 両翼が短く相談し合っている間に体制を立て直す。


「まさか本当に元上司に勝てると思っていましたか?」


 グレイス様の挑発を受けて、デュセルヴォのオーラに僅かに怒気のような変化が起きた。

 グレイス様は元ルナティックの大幹部。当然彼らの弱点なども知り尽くしているのだ。それは彼らも重々承知しているはず。



「何故、寝返ったのですか……!」


 片方の翼が僅かに震えると、怒りを滲ませた声で呟く。戦いを中断してまで彼らが問う。

 確かに、グレイス様が何故X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)に寝返ったかは、私も気にしていた所。


 ……それに関しては、(ザント)様もそうだ。

 (ザント)様の鶴の一声で、私達は暗部の者として、あの組織と戦略的に提携することとなった。


 元々は指定暗黒組織として彼らに狙われる立場にあった。それが一夜にして全てがひっくり返ってしまった。

 提携後初の幹部会ではまさか宇宙警察長のピンキー・サルカズムが現れ私たちの安全を保証する始末。

 下っ端共は相変わらず追われる身だが、こと幹部に関しては幹部である限り、逮捕される事は無い。


 巨大な力が、私たちの及ばぬところで確実に動いている。


「ルナティックは変わってしまいました。初めは純粋な正義を掲げていたのに、気が付けばただのテロ組織。そんな場所に私の居場所はありません。それに……」


 グレイス様の口が開く。


「ルナティックは何者かに操られています」

「……なんだって?」


 グレイス様の衝撃的な言葉に、思わずデュセルヴォたちが聞き返す。

 私も瞬きをして、グレイス様の意図を聞こうと口を開けた瞬間、彼女は更に続けた。


「以前からそんな気はしていましたが、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)に乗り換えてから推測は確信に変わりました」

「……どういう事だ」

「外部の者からの思想誘導があります。正義を捨ててX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)打倒のために手段を選ばないただのテロ組織へと堕ちるように、誰かがし向けているのですよ」


 その発言に場が凍りつく。

 無論、ブラフの可能性もあるがグレイス様の表情は至って真剣。


「信じられないね、裏切りの理由はいくらでも後付け出来る」


 暫くして、片割れが絞り出すようにそう言った。


「組織の外に出た事で色々と見えた事があります。恐らくは幹部の内の誰かが、外との繋がりを通じて私欲を達成させるためにルナティックを裏で操っています」

「それを幹部である我々に言って信じるとでも?」


 デュセルヴォの片割れがそう投げかけると、貴方たちは結局は魔物の一種なので一周回って言っても安全なのですよ、とグレイス様は付け加えた。


「ふむ」

「貴方達の様な古の大災害が何故ルナティックに賛同するのか、その目的は知りませんが……ああ、まあ、どの道MA(敵対的買収)するつもりなのでどうでもいいですね」



「……『リアブソーブ』か」

「私が旧友の(よしみ)X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の内部情報を流出するのはこれが最初で最後です。無益な戦闘よりも、立ち回りを検討なさる方が有益ですよ。早々にお引き取りを願います」


「……あぁ、そうさせて頂く。だがお前は知らないようだな。我々とて勝算無しに動いている訳ではない」

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