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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第6章〜Smart Schemes〜
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72. 墓地での戦い

 僕たちが墓地へと到着すると、墓石は破壊されていて、土もかなり掘り返されている様子であった。

 酷い荒らされ方だ。恐らくゾンビたちはここから出てきたのだろう。

 しかし、その割には魔物がうじゃうじゃ居るどころか、一切見当たらない。何故だろう。さっきザントさんが殲滅したので全てだったのだろうか。



「ーー危ない!」


 影の動く気配を感じて、とっさにザントさんを庇い突き飛ばすと、彼のいた所に突如として巨大な木の根が倒れかかった。



「ちっ、【裂空衝波(セグマインダ)】!」


 何とか庇う事に成功すると、ザントさんがすかさず呪文を唱えて反撃に出た。一瞬空気に亀裂が入ると、その裂け目から衝撃波が放たれ、倒れて来た大樹を八つ裂きにした。


「この樹の根……まさか……」



 倒れて来た大木には見覚えがある。あれは大木の本体ではなく、木の根だ。

 その攻撃方法、これはまさしくアイツがいることを意味している。



「久しぶりですなぁ!」

「やはりお前か!」


 見上げれば、やはりアイツが居た。

 巨大な木の怪物の上に優雅に座っていた彼は僕に気付き、僕のそばにいたザントさんにも目線を走らせた。


「どうだ、このスパイダルートネオは。美しいとは思わないか」


 巨大な木の根の塊が僕達の前に立ちはだかり、その姿が月明かりに照らされる。


「スマート!」

「しかし意外だ……まさかあの宇宙マフィアAAAAの首領に逢えるとは思ってませんでしたよ!」


 ……宇宙マフィア?


「俺がどこに居ようと貴様等には無関係だ」

「確かに。しかし、これで確証ができました」


 スマートの顔が一瞬曇る。

 宇宙マフィアとは一体、どういう事だろう。

 そんな事を頭の片隅で考えていると、スマートの目は怒りにも似た色に染まっていく。


「裏切り者のグレイス率いるX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)が、あの悪名高いAAAA(テトラエー)と提携していると言う、邪な関係の確証がね!」



 再び牙をむく化け物!


「フン、何かと思えばそんな事か」

「実に嘆かわしい。一体いつからX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)は腐敗してしまったのか!」


 スマートはおもむろに鞭を取り出すと、それを思い切り握り締めピシャリと1度奮った。

 すると彼の乗っていた怪物がのそりと地面に突き刺していた木の根を持ち上げ、僕達に向けてゆっくりと移動を始める。


「【物体爆撃(ボンバラガ)】!」



 爆破魔法で根を爆発させて動きを止めると、ザントさんが暫くして口を開く。


「消えたか」

「えっ?」


 その言葉に辺りを見回すと、確かにスマートが消えていた。一体どこへ行ったのか分からない。たった今まであの怪物の上に居たのに。

 辺りは墓地で墓石が山ほど存在していて、墓場は無残にも荒らされている。加えて、この根っこモンスターが居るからスマートを探す暇もないのもまた事実だった。


「……先ずはこの謎の塊から始末するぞ」

「はい!」


 スパイダルート。

 この気味の悪い化物と戦うのはこれが二度目だ。



「【フレイムリフト(レヴィフレイム)】!」

「【増幅魔法(エクステンション)】!」


 ザントさんによって放たれた火球が、僕の唱えた補助魔法によって強化され化け物を撃ち抜く。

 それに反応して怪物がすかさず反撃を始め、巨大な木の根が僕達の真下から次々と尽き上がり回避行動を余儀なくされる。


「くっ、前の奴よりも早い……!」

「こっちだ、デカ(ブツ)


 ザントさんは瞬間移動をしては槍で攻撃するのを繰り返し、的確なダメージを与えていた。


「【火炎輪(クラバール)】!」


 ザントさんが根を切り落とす所を見計らい、炎のリングを放ち追撃を試みる。

 切り捨てられた傷口に追い打ちをかける様に、炎のリングが内側からスパイダルートを焼き捨てる。

 炎が効いているのか、あの時みたいに低い唸り声が深夜のラルリビに轟くと木の根の塊が大口を開き、口から何かを吐き出した。



「なんだあれーー」

「ーーどうだこの新しい栄養源は。素晴らしいだろう?」


 ザントさんが言い終わる前にスマートの声が聞こえた瞬間、鋭い鞭による一閃が襲い掛かり、僕の服が切り裂かれた。



「ぐあぁっ!」


 1歩引いて攻撃の出処を確認すると、墓石の上に立つ者がいた。スマートだ。


「スパイダルートネオの主食は死者だ。死者から栄養素を吸収し無限に成長する。この教会群の陽動作戦も私が志願して大正解のようだな」


「陽動作戦だと」


 その言葉にザントさんが低い声で反応すると、それに対比するかのようにスマートの口元が不気味につり上がっていく。


「フフフ、そうだ。今頃アクアンの発電所とハブルームの大樹はどうなっているのだろうな」


 アクアンの発電所。

 あそこは確か、伊集院くんが依頼を受けていた場所。


 ……いや、まてよ。

 あそこは確か、DEATH(デス)がどうとか、言っていなかったっけ。


「あそこは違う組織が予告を出していたはずじゃないのか!」


 根の塊が無数の種を弾丸のように飛ばし始め、炎の壁を目の前に出現させて攻撃をやり過ごすと、続け様に上空から種のマシンガンが降り注ぎ、不意を取られてダメージが加速する。


「よそ見は相変わらずだな――今頃ガードは手薄となっているはずだからな、本部隊が直に目的地に到着する」

「ほざけ」


 ザントの槍がスマートに向けて伸びていくと、彼は鞭を使って槍を受け流した。

 スマートが次に鞭で攻撃すると、ザントさんはスマートに受け流された勢いを使ってそのまま槍を手のひらで回転させてスマートの攻撃を防ぎ、彼の足を払い右肩を槍で穿いた。


「ぐっ」

「人の事は言えないようだな」


 近接戦は不利と判断したスマートがスパイダルートネオから飛び退きザントさんと距離を取った。

 すかさず距離を詰めようとした彼と僕に対して、怪物からの執拗な攻撃に加えてゾンビの追撃が始まる。正直鬱陶しいことこの上ない。


「死者に種を植え付ければあっという間にゾンビが出来るからな、ゾンビはこの墓地に眠る死者の数だけあるぞ!」



 彼がそう言うと、憤怒した根が地面をのた打ち回った。それと同時に種付けされた死者がゾンビとして蘇り、辺りを徘徊し始める。



「スパイダルートネオは耐火性が75%上昇してるぞ!【毒矢の弾幕(トクスタンプ)】!」

「ッ、【妨害音壁(マルファ・パルス)】!」


 強大なパルス音が鳴り響き、スマートが僕に向けて放った毒矢の弾幕を弾き飛ばした。

 ザントさんはそのままライフルのような銃を構えてスマートを狙撃すると、横から巨大なツタが出現し渦を巻きながらザントさんの方向へと急進する。


「くっ!【炎の壁(ディフランマ)】!」

「【障壁破壊(ガードブレイク)】!」


 炎の壁でザントさんを守ると、スマートのカウンター魔法で僕の展開した炎の壁がシールドの割れるような音とともに消滅した。

 ザントさんは間一髪で攻撃を回避すると、素早くそのツタを槍で切り落として再び銃撃を開始した。


「くそっ!」


 墓地での悶着がまだまだ終わりそうにない。

 他の人達は大丈夫なのだろうか。

 不安だ。

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