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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第6章〜Smart Schemes〜
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71. ザント・エピック

「があっ!!」


 正に噛み付かれるかと言った所で、吸血鬼が突然2つに裂ける。

 何かが空を切るような音と共に、吸血鬼の骸が僕の上に降って来てそのまま息絶えた。


「ギャッ!」

「グオオオオッ!」


 それから発砲音が突然鳴り始め、自分を残して魔物が皆地に沈み沈黙する。

最後の1匹が脳天に風穴を空けられて崩れ落ちると、そこで僕は立ち上がり自分に付いてた血を呪文で消し去った。



「た、助かった」

「フン、雑魚共が」


 どうやら、僕を助けてくれたのは先程ののグラサンウサギだったようだ。


「あ、ありがとう! 本当に助かっーー」


 お礼を言って自己紹介をしようとした瞬間、銃弾が僕の耳を掠める。

 一体何が起きたのか理解出来ないで居ると、僕に向かって彼が徐に話し始めた。


「それが上の人間に対する挨拶か。礼儀を弁えろ、屑が」


 思わず瞬きをすると、彼は呆れ果てたような表情を浮かべる。


「あっ、すっ、すいません!」


 反射的に謝ると、彼は鼻で溜息を吐き銃をしまい込んだ。

 サングラスが余りにも黒くて目は全く識別出来ないが、サングラスの奥から鋭い眼光が僕に突き刺さるのを感じる。

 

「俺の名はザント・エピック。X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)のナンバー3だ」


 ナンバー3。

 つまり、伊集院くんの次に偉い人だ。



「星野彗です……よ、宜しく御願いします……」

「フン、貴様に有効価値があるなら宜しくしてやる」

「は、はい」


 圧倒的なまでの威圧感を感じる。

 逆らってはいけないと僕の全神経が語りかけてくるのだ。

 こんな人をよく伊集院くんやこなは従えさせたな、とふと思った。


 ……いや、よくよく考えてみたら組織の上に立つ者はこんなものなのかも知れない。

 あの2人が色々とユル過ぎるだけかも知れない。むしろきっとそうだ。

 特にこな。彼女は伊集院くんと比べてもユルい。


「……どうやら増援が来たようだ。中はもう大方殲滅してある。外に行くぞ」



 彼に言われて、僕はザントさんと共に孤児院の外へと飛び出した。

 月明かりに魔物が無数に照らし出され、扉を開けた物音に反応し一斉に僕達の元へと駆け寄り始めた。


「数が多いな。貴様は下がって自分の身を守れ。水と重力以外の魔法でな」


 彼の指示に従い、僕は数歩下がった上で自分の目の前に炎の壁を展開した。

 彼はそれをちらりと横目で見ると、手元に1本の槍を出現させた。漆黒の槍だ。


「クズ共が」


 彼は一瞬地面を踏み締めると、地面を蹴り出し名前も知らない魔物を両断した。

 すると他の魔物がそれに気付き、教会へと向かうはずの進路を変えてザントさんに襲い掛かる。彼は槍を地面に刺し、棒高跳びの要領で大きく跳躍すると空中で銃を取り出して乱れ撃ちで魔物を殲滅していく。


「すっご……」


 炎の壁の裏側でザントさんの動きを傍観していると、突然大量のガラスが割れる音がして、驚きながら振り返ると教会に備わっていた全ての窓ガラスが木っ端微塵に砕け散った。

 砕けたガラスの破片が、一斉に空中に居るザントさんの元へと集うと、破片が海蛇のようにうねり、魔物を次々と飲み込んでいく。



「そろそろ終わりだ」


 ザントさんが着地と同時にそう呟くと、ガラスの破片が爆ぜるように辺りに散り、ザントさんを中心に巨大なドームを作り出した。

 地面に刺さったままの槍に彼が手を触れた瞬間、槍を中心に魔法陣が出現する。



「【破邪の光(セラフィックデシーズ)】!」


 地面に突き刺さった槍の先端から、眩く鋭い光が漏れ出し辺りにあるもの全てに突き刺さる。

 光が硝子のドームに乱反射し、ドームの内側にある物を焼き尽くしていく。



「小物しかいないのか」

「すごっ……」


 光が収まると、ザントさんの周りには消し炭一つ残されていなかった。

 彼は槍を引き抜くと、僕には聞こえないような声で呪文を何やら唱えた。

 呪文をトリガーにドーム状のガラスの破片が全て飛び去り、元の窓へと舞い戻ると勝手に自己修復された。どうやら修復魔法だったようだ。


「あれだけの魔物が、一瞬で……」

「モタモタするな、前方にまだ巨大なエネルギー反応がある」


 彼にそう言われ、スカウターを起動してみると、確かに前方には不審な魔力の反応があった。


 前方にあるのは墓地だと確認して、僕達は共に墓地へと走り出した。

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