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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第6章〜Smart Schemes〜
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61. 奇襲

Smart

[形]1.利口な,賢い;抜けめのない;機敏な

2.(身なりの)きちんとした,洗練された,

3.厳しい

4.精密で高感度な,センサーに敏感に反応する.

――[副]厳しく,激しく;すばやく,きびきびと;利口に;こぎれいに.


Scheme

1.計画,案;陰謀,たくらみ

2.図式;計画表

3.組織,配列;配色

――[動](他)…をたくらむ;…しようと策動する

「いつまで寝てるの? もうお昼出来てるわよ?」


 母さんの声が部屋の外から聞こえて、目を開けた。今日は土曜日だ。


 僕は昨日久しぶりに睡眠圧縮剤を使わないで寝てみた。

 こな曰わく『睡眠圧縮剤の無理矢理に取る睡眠よりやっぱり自然睡眠の方が体にいい』らしい。



「今日のお昼はチャーハンで我慢して」

「美味しそう!」



 ……その結果、どうやら僕は昼過ぎまで寝ていたらしい。それもこれも僕が昨日X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)のある人工惑星『エリアX』を探索していたせいだ。


 人工惑星エリアX。

 読んで字のごとく、宇宙空間にぽっと巨大なXの様な字が浮かび上がる様な見た目の人工的な惑星だ。

 Xの中心地にX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)が存在し、北東、東南、南西、北西に伸びる4本の脚はそれぞれハブルームやラルリビ、アクアン、そして地球の環境をモチーフとしてデザインされているらしい。


 人工的に作られた、言わばせいぜい宇宙ステーションクラスのサイズではあるものの腐っても惑星。

 全然踏破することが出来ず、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)本部の周辺にあるセントラルエリアを回っている最中に僕は力尽きて探索を断念した。



「いただきます」


 良く見ると、母さんはまたフライパンで失敗してコンロ周りに少しこぼしていた。汚い。

 席について手を合わせ、母さんの料理を口の中へと運んで舌で堪能する。美味しい。


 今日は何だか穏やかな1日だ。


「……ちょっと胡椒多かったかしら」

「うん、ちょっと辛い」

「彗が進化してから魔法解禁出来たのはいいけど、久しぶりに魔法で料理作ろうとするとなかなか上手くいかないのよね……」


 でも美味しい事には変わりない。

 その証拠に気がつけばあっという間にお皿は空だ。



「御馳走様」

「御粗末様」

「ふう」


 食事を済ませた後、僕は席を立たずにそのまま残った。

 今日は何をしようかな。たまには巧と一緒に何処かへ遊びに行こうか。



「ねえ、彗」


 遊びに行く先を考えていたら、母さんが食器を魔法で浮かばせてスポンジに魔法をかけた。

 スポンジが独りで食器洗いを始めると、母さんがふと声を掛けてきた。



「ところで最近学校はどうなの?」

「え?」

「そろそろ学期末も近いでしょ」


 学校。


 正直あまり勉強に身は入らない。

 魔法世界の刺激が強過ぎて、非魔法世界の事はぼんやりとしている。


「向こうの世界ばっかりで、まさか勉強を疎かにしてないわよね?」

「……」


 恐らくそれは母さんにも透けている。

 だから母さんは僕にそんな質問を投げてきたのだ。


 さて、逃げるか。



「……ちょ~っと買い物行ってくるっかな~」

「……」



 そう言って席を立つと、シンクから食器が浮かび上がり、クルクルと回り始める。

 これはマズい。殺られる。


「行ってきまーす!」

「待ちなさ――」



 逃げる様に玄関へと飛びだし、靴もまともに履かずに引っ掛けるようにして飛び出した瞬間、閉めた扉の向こう側から食器の割れる音が聴こえた。


 いやいやおかしいでしょ。

 いくらドライブがあるからって、実の息子に皿を投げ……いや魔法で飛ばしてくるとは。

 魔法使いは人間の常識が通じないのか。なんか厳密には人間ではないらしいけれども。



「何だかんだで、ここに足を運んじゃうんだよね」



 結局気がつけば廃墟前。最早定番。

 特に用事もないし巧も捕まらないなーと思っているうちに、無意識に脚がここへと向かっていた。


「……」


 僕が定期的に入っているからか、今までの足跡がうっすらと残っている。

 頻繁にここを訪れているせいか、埃の匂いも若干薄れてきている。地下に降りた所で蜘蛛の巣は相変わらずあるけど。


「……」



 それにしても……




「……銃は何処だっけ」


 気配を感じる。

 さっきから誰かが後を付けてきている。

 しかも――この力の波長。間違い無く魔法使いの物だ。



「エリアX、X-CATHE(エクス・カテ)――――」



 転送装置に乗りながら、銃弾を放つとそれは廃墟の壁を抉るに留まった。


「なかなかやるな」


 床を踏みしめる音。

 その季節にそぐわない黒装束、鋭い目つき、そしてオーラ。


 忍者(サソリ)だ。


「何をしに来た」

「拙者も地球人、此処を利用している身。偶々御主が足を踏み入れた故、覗いただけだ」



 無意識に僕の顔が歪むのを感じて、平静で居ようと努めた。

 今のは嘘八百だ。


「そう言うの現代ではストーカーって言うんだよ」

「職業柄、ストーカーをするのは慣れているのでな」



 そりゃそうだろうけど、そう言う問題じゃない。


「此も何かの縁だ……肩慣らしに手合わせ願おうか」


 ……肩慣らし?


「はぁ?」

「何、殺しはせん……依頼内容外の娯楽戦闘に過ぎぬからな」

「誰がお前何かと戦うっつーの!」


 やっぱり誰かに頼まれているじゃないか。

 なんでこんなことになったのだろうと思いながらも僕は武器を剣に持ち替えた。


「みすみす知ってる敵に背中を見せるとは臆病風に吹かれたか」


 鋭い目つきに、余裕が見える。


「馬鹿馬鹿しいな。僕はそんな安い挑発には――」



 皮一枚で強襲してくる刃を防ぐと、そのまま僕達は鍔迫り合いとなった。


「……くっ!」


 駄目だ、このままではパワー負けしてしまう。


「【ブロッキング(シェドレート)】!」


 呪文を唱えると強制的に弾く力が働き、僕の剣がアサシンの刃と反発した。


「【破壊(ハカイ)】」


 敵を弾き飛ばす力をそのまま利用し蠍は距離を取ると、地を這う爆炎が拡散して行く。


「【水の壁(ディモイス)】!」


 対抗して水の壁を張りそれを打ち消すと、蠍はククッと喉を鳴らして見せた。


「ほう、なかなか反射神経が良いようだな?」

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