表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
別視点〜Second Sides〜
58/269

57. 裏の顔

別視点章。

「困ったわね~」


 頭が痛くなってくる。

 まさかルナティックが、よりによってこんな奴に手を出してくるとは思っても見なかった。


「蠍か」


 会議室で頭を抱えていると、ザントが部屋へと入ってくる。

 彼に一瞬目を向けて再び資料に視線を戻して私は再び頭を抱えた。


 今、確認しているのはルナティックのブラックリストに名前のある人間の一覧。


X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)の人間はまあどうにでもなるから兎も角として、我々以外の人間でブラックリストに入ってる人がいたらそれらの警備を強めないと」


 今手元にあるリストはグレイスが寝返った時に持ってきたリストだ。

 この中にはこの組織の幹部の名前が幾つもあり、それ以外では『守護者』たちの名前もある。


 守護者はまあ、どうせ私の次くらいに強い奴らだからどうでもいい。


 他にあるのは母上、父上の名前やAAAA(テトラエー)の人間の名前。

 父上母上はメタリックの(みかど)として強力な魔力を持っているし、兵士もいる。それなら守りは必要ないか。



「蠍ってドライブ幾つか分かる?」

「トリプルだ」


 げ、3つもあるのか。

 3つもドライブを持っているとなると、トリプルドライバーにも護衛ーーそれも同じトリプルドライバーの護衛ーーを付けなくてはならない。


「難しいわね~」


 忍者(サソリ)

 名前の由来は地球に生息している毒性の生き物。

 分かっていることは、彼が地球人であり、毒属性であると言うことだけ。

 あと、さっき知ったけどドライブは3つ。つまり一国の部隊に匹敵する力を単体で保有している。


 無論私や伊集院よりも力では劣ると言うか、次元が遥か下の実力ではある。

 だが言い換えれば私と伊集院以外とはいい勝負であり、場合によっては姉のマヨカや妹のレメディ、親友のグレイス(グレッピー)と実力が拮抗する可能性が高い。


 ザントたちは昔、他の指定組織との絡みで蠍とは因縁が有る。そのため、彼らは蠍に対して独自の情報を持っている。

 だからこそ敢えて蠍に手を出したのだろうか。


 いや、でもそもそもルナティックはわざわざ蠍を雇う必要があるか疑問に思う程度には力強いはずだ。



「こな様ー!ザントー!」

「ただいまー」

「フェイド!プライス!」



 そう思案していた時に、ふと総帥室の玄関扉が開いた。入って来たのはヤーテブ星人2人で、両方共エリアYに潜入していた諜報部員だ。


「貴様……俺の名を気安く喋るな……」

「あっ、すみませんザント様。こな様、詳しい報告書は改めて提出しますが、どうやら彼等近いうちにどこかの星を攻めるプランがあるみたいですよ」

「残念ながら何処か、までは分からないけど……」


 星を攻める。と言う事は行政のトップがターゲットだろう。

 ブラックリストに乗っている惑星の統率者と言えば父上と母上だ。


「そう。何れにしても警戒は続ける必要があるわね」


 父上母上は1,000年前の大戦の生き残りだ。心配はしていないが、万が一ということもある。

 私が護衛に着く訳にも行かないし、マヨカやレメディにもそれをしている程の時間はない。どうしたものか。

 そんなことを考えていたらザントが丁度いい人材を呼び寄せたのであった。


「……(レッド)!」


 ザントの一声で突然会議室の端から火が上がり、その中からメタリカン(メタリック星人)が現れた。



AAAA(テトラエー)(レッド)、ただいま参上~っと」


 そう言うと彼は煙草を魔法で出現させると指先から火を生み煙草を吸い始めた。


 レッド・リベリオン。

 レジーナ家の治めるメタリック帝国の誉れ高き……誉れ高き? こいつ本当は誉れ高き職の者なのにいかんせんユルいから気が抜けるのよねえ。

 まあなんせメタリック軍第12精鋭部隊隊長にしてメタリック軍上級大将。


「ここワープ以外は魔法禁止なんだけど」

「ん? あー、すみません姫様」


 真っ赤な衣服に身を包み、背中に火炎放射器兼ジェットパックを背負い炎を操るメタリック軍の上級大将。それがレッドと言う男だった。


 しかしその正体は宇宙マフィアAAAA(テトラエー)の幹部であり、ザントらと我々の関係を取り持つフィクサーでもある。


 彼にとってはどっちの顔が裏の顔となるのだろうか。

 そんな私の考えを他所に、彼ははにかむと煙草を消した。

 ここは別に禁煙ではないのだけれど……まあいい。


(レッド)、ルナティックの支部の一つをDEATH(デス)の仕業に偽装して潰してこい。テロ組織間の抗争とでも思わせるようにな。仲間には(ブルー)(ヴェイル)も連れて行け」


 ザントの発言を聞いて、私はなるほどと首を振った。

 マフィアや過激派組織とかの間では抗争がよく起きる。彼らの抗争と偽装して置ければ、大々的にこちらから踏み込んでいく口実を作ることも可能だ。

 マフィアを味方に引き込んでいるからこそ出来る芸当。ついでに言えば我々は宇宙警察ともベタベタに癒着している。これなら隙は無い。


「あーちょっと待って、もしスターズがいたらソイツは瀕死にさせるだけにしておいてね。DEATHと潰し合わせるから。殺しちゃだめー」


 世間的には、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)は巨大な正義の名の元に集う、巨大な宇宙連合のような組織だ。


 メタリック星からは私たちレジーナ家王女三姉妹。

 アクアンからはアクアン外務大臣の孫であるピーカブー。

 宇宙警察のピンキーですらここの創立メンバーだ。

 地球に至っては、闇の守護者伊集院がここを創設している。

 他にも各国や各星系からの要人が出向したりしてこの組織はできている。


 そんな我々からすれば、AAAA(テトラエー)は明確な敵であり、なんの繋がりもない。

 しかし現実とは所詮こんなものである。


 私がザントの指令に追加指示を出すと、レッドはニヤリと笑いながら火に包まれ姿を消した。

 絨毯が焼けて穴が空いてしまった。グレイスに怒られそうだ。


「明日の新聞が見物ね」

「なかなか悪どい事をするな」

「あら、悪の組織を潰し合わせて何が悪いの? 世のため人のためでしょ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ