53. デュセルヴォ
「それっ!」
弱めの弾を放ち、敵に敢えてそれを避けさせた後、本命の攻撃を当てる。
「ぐがっ!」
しかし片方を攻撃しているともう片方が確実に反撃をしてきて、埒があかない。
やはり2対1は無謀だったのだろうか。
「くっ!」
「楽しいだろう」
タイミングを微妙にズラされながら風の衝撃波がそれぞれから放たれる。
それぞれを何とか回避すると続けざまに火の玉が敵から放たれ、それが再び刑務所の壁でめちゃくちゃに反射されて回避を余儀なくされる。
「【光の弾丸】!」
「【バグショット】!」
苦戦していたその時、突然僕の後方から光の弾丸と灰色の塊が飛来し、敵を攻撃した。
何事かと思って後ろを振り返ると、何人かの宇宙人が遠巻きに此方を見ていた。後続の隊員だ。
「ちっ、新手か」
何人もの人達が、銃や杖を抱えて援護してくれているのだ。
誰もここまで来て一緒に戦ってくれないけど。
「そろそろ終わりだ!」
いい加減にトドメを刺そうと、僕は銃を片割れに突きつけた。
「諦めろ、【ファイアリフト】」
そこでまた火の玉を放つ魔法が放たれ、それをサッと僕は躱した。
すると僕の後ろに回り込んで待ち構えて居た竜の羽が再び風見鶏の様に回転すると、自分自身を使い火の玉を打ち返した。
先程よりも大きく、速くなったそれを僕は慌てて回避した。
「フンッ!」
それを更に片割れが打ち返すと、次はその火炎が宙へと高く舞い上がり巨大化していく。
竜の羽が1枚その火の玉へと向かい縦に高速回転しながら突進をすると、その魔物は巨大になった火の玉を僕に向かって叩き落とした。
「がはっ!」
爆発と共に僕は大きく飛ばされ、宙を舞う。
このままでは埒が明かない。こうなったら、セルティネス戦で使ったあの魔法をまた使うべきか。
そんな考えが頭をよぎると、まるで一瞬スローモーションにでもなったかの様にそれは起きた。
宙に浮かされた自分のポケットから滑り落ちるそれを、確かに僕の目は捉えたのだ。
「――【風刃交撃】!」
「――【風刃交撃】!」
竜の羽の様な一対の魔物が、身体に風を纏いながら紙を破いていく様な音と共に突進してくる。
「食らえ!」
彼らが一直線上に並んだのを確認して、宙に浮いたまま、僕は彼らに纏めて鋭い一閃を与えた。
2回シールドが破壊される音と共に彼らの軌道は大きく逸れて地面へと激突する。
「おのれ」
「やられたね……!」
自分も転倒しながらもゆっくりと起き上がり、剣を彼らに向ける。
ナナから貰った竜殺しの剣、早速役に立ったみたいだ。
「よっしゃ!」
辛うじて勝てた。
ジンジン痛む背中をさすりながら、僕は浮かび上がったその2体の番兵を睨みつけた。右手にはナナから貰った剣をしっかりと握りしめて。
「黒星か」
「まあしょうがない、時間稼ぎには……なったさ。引き上げよう」
「止むを得まい」
彼らがワープして逃げたのを確認して、僕は剣を支えに膝を付く。
「すっげー! デュセルヴォを倒しやがった!」
「えっどうやって?」
「さっきの魔法撃ったの俺だぜ!」
少し体力を使いすぎたか。肩で息をしながら他に敵は居ないか警戒していると、後ろの外野がにわかに騒がしくなった気がした。
「退いてください」
誰かが人を掻き分けて向かって来ていた。
「グ、グレイス」
「大丈夫ですか?」




