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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第4章〜Slithering Slaughterer〜
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44. 小屋での休憩

「くっ……まだいるのか……」


 この火山は蛇が出すぎだ。もうどれぐらい倒したか分からない。

 倒しても倒しても蛇が無限にそこら中から湧いてくるせいで、気がつけば僕も無心で蛇を狩るようになっていた。

 気がつけば魔法の出が悪くなってきている。もう魔法を使うのも億劫になり、銃で雑に蛇を撃ち抜くような時間が無限に過ぎて行く。



「ナナさ、ちょっと休もうよ。丁度あそこに小屋があるよ」

「ちょっとダイブすべきっしょー」


 蛇を一通り狩り尽くし山道を登って行くと、古びた山小屋らしき物が建っていた。とてもボロいけどまあ、大丈夫なのだろう。ノックをすると誰も反応せず、扉には鍵もかかっていないので、僕達はそっと中に侵入した。


「結構小綺麗な小屋ねー」


 山小屋は完全に人の気がない割には整頓されており、清潔だった。少し狭いが、一休みには十分だ。椅子にはご丁寧にクッションまで付いている。


「この山おかしいよ」

「ねー。こんなに蛇が居るとは聞いてなかったわ」


 ナナは玄関に入ってから、二足歩行から四足歩行へと切り替えると犬らしくクンクンと辺りの匂いを嗅ぎ回った。やがて彼女は冷蔵庫の前へと向かい、冷蔵庫の扉を開く。


「あ、日本のスポーツ飲料あるじゃんここー」


 そう言ったナナは冷蔵庫を漁り始め、僕にそのスポドリを投げ渡した。

 いや、ここ人の家だろ。ただでさえ不法侵入なのにそんなことしていいのか。


「だめだよ、やめとこう」

「いいじゃん。ここ休憩所みたいよ? 冷蔵庫の扉の裏にビール☆500とか書いてあるし」

「え、そうなの?」


 なんだ休憩所なのか。それなら話は変わってくる。


「じゃあ飲んじゃえ」



 こうして、僕とナナはしばらくの間だらだらと小屋の中で疲れを癒やす事にした。不思議だったのは、この小屋の中では蛇が全く湧いてこなかった事だ。魔よけの魔法でもかかっているのだろうか。

 少し休憩をすると不思議と魔力の出が良くなっており、体調も少し整った気がする。魔力が自然回復したのだろう。

 魔力が戻ったのであれば、また蛇狩りを再開することが出来る。もう少し休憩をして体調が万全になったら小屋を出よう。

 そう思っていたら、ナナが口を開く。


「……さーてそろそろ行こっかー」

「え、30分しか休んでないじゃん!」

「そんな事言ってたらキリがないー」

「……」


 ソファの上で丸まっていたナナは急にムクリと起き上がると身軽な動作で飛び降り、また二足歩行に変化して玄関の扉を開けた。それにしても早い。 獣の回復力と言うか何と言うか。


「私ちょっとトイレ行くからそれまでに支度しておいてねー」


 そう言ってナナは外へと飛び出した。トイレって犬だから人間用のではなく外へ行くのか。何だか時々分からなくなる。


 ナナを待つ間にふと、本棚を覗くと黒い本が目に留まった。表紙には『暗黒魔術への入門』と書かれており、開くと何だか負の力を感じる物だった。

 本自体はとても重く、オマケに何だか真新しい。僕は適当にページを開いた。

 何々……



魔法名:カオスブーマー

呪文文:ティアネード

 属性:風

その他:暗黒ノ風ハ敵ヲ微塵ニ刻ム


魔法名:エアスティール

呪文文:スモザリース

 属性:風

その他:空気ヲ抜キ取リ敵ヲ窒息サセル



「……」



 なんと言うか、いかにもこれはヤバい魔法ですと紹介しているような書き方だ。使うのは止めておこう。



「ただいまー、さあ行きましょー」

「ん、うん」


 暗黒魔術って、闇属性の事だろうか。それならば伊集院くんが以前闇属性だと言っていたから、聞いてみるのもありだろう。


「さっきマップ見たけど頂上まで後少しよー」


 そう言うナナを見てみると、スカウターを付けている。犬がスカウター付けているのは何とも不思議な光景だ。


「じゃあ、出発!」

「ちょっとまって主導権は依頼主の私ー!」

「あ、ごめん」


 ちょっとご機嫌斜めなのかな。


「あ、もう蛇がきたよ」


 小屋を出ると、即座に僕達は蛇に囲まれた。

 そして僕達はまた蛇狩りをしながら、更に山の上へと目指して行った。



「ついたー!」


 清々しい風景が広がる。あれから更に蛇を狩りながら僕達は1時間ほど登山を続け、やがて山の頂上へと到達することが出来た。

 下を見下ろせば、雲海がそこには広がっていた。


「さーて進もうかー」

「進むって、どこへ?」


 これ以上進むべき場所なんて何処にあるのだろうか。魔法世界なら、もしかして雲の上に向かうとかだろうか。


「インサイド・ザ・ボルケーノ」

「……はぁ!?」


 しかし、犬から帰って来るのは予想斜め下の回答。


「え、嫌なの?」

「いやそう言う訳じゃ――」

「いやその反応は嫌な反応でしょ」


 この犬、やっぱり頭がおかしいのでは無いのだろうか。それなのにどうでもいい所で察しがいい。


「いや、だってこれ相当な高低差だよ?」

「じゃーお先にー!」

「あっ、ちょっと待っ……」


 僕が静止する言葉を言い終える前にナナは火口へと向かって行く。

 取り残されてはどうしようもないし、また今から山をおりていく訳にもいかない。


「ゆっくり、ゆっくり……」


 幾らマグマがたぎっていないからと言って、火口は危険だ。仕方なくナナを追いかけ始めたが、何だかんだで火口には中へと続く足場があるから僕も先に進んでしまった。


「やっぱりねー」

「何?」

「絶対にああいう言い回しの仕方をすれば来ると思った」

「はい?」


 つまり僕はハメられたのか。この犬狂ってるだけじゃなくて性格も悪いぞ。


「まあ、ここは一応休火山だしね。死ぬ事は無いよー」



 休火山の割には遠方マグマがドロドロと流れてる気がする。気温もかなり上がってきていて、嫌な汗が僕の頬を伝う。


「げっ、また蛇がいる」

「脱皮した跡とか多すぎるわー」


 火山の内部に降りてきていても、まだまだ蛇が湧いてくる。むしろ増えている位で、ナナの言う通り蛇の脱皮したあとまで出現し始めている。


「おかしいよここ!【サンダーネット(スカテレクトロ)】!」


 電撃の網を放ち、ヘビを拘束する。


「【ポイズンブレス(エフドキシン)】!」


 するとナナが今度は緑色の息吹きを吐き、蛇たちの息の根を止めていく。


「今のうちにあの石の扉に入ろう!」

「分かった!」


 ナナが鼻を向けた先に扉か有り、そこへ何とか逃げ込んで僕たちは扉を叩き閉めた。

 扉のあった奥には何も無く、蛇の蠢いたあとも不思議と見当たらなかった。


「ふう。考えて見ればおかしいわね、何で火山に扉なんか有るのよー?」


 確かに……


 無我夢中で飛び込んだから一瞬気付かなかったが、ナナの指摘にハッと気付かされる。

 こんな火山なのに扉があるなんて、いくらなんでも不自然過ぎる。

 そう思っていたら巨大な影が突然僕達の背後から伸び、僕達は驚きながらも構えて振り返った。


「我々の住まいに押し入るに止まらず、我が民を無差別に殺すとは……」


 目の前には明らかに親玉と分かるような巨大な大蛇がそびえ立っていた。頭には竜のような羽が生えており真っ赤な舌をチロチロと出しながらその大蛇は続ける。


X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)のする事は野蛮極まり有りませんね」

「セルティネス!」


 オレンジ色のウロコを輝かせるその大蛇は、ゆっくりと僕達の元へと這い上がる。

 その大蛇の後ろからは相対的に小さく見える子蛇たちがうじゃうじゃと湧き始め、一斉に僕達を囲い、威嚇し始める。


「これはそれ相応のお持て成しをしないと……」


 子蛇たちに合わせて、セルティネスと呼ばれた蛇もまた僕達を威嚇した。物凄く大きい。全長何十メートルだろうか。


「遊んでおあげ」


 彼女がそう言うと、子蛇達が一斉に僕達の方向へ進軍を開始した。非常に不味い。



「ここ蛇しか居ないわけー?」

「ええ」


 その言葉と共に蛇が一斉に飛びかかる。


「【土の壁(リペランド)】!」


 僕の呪文と共に地面から壁がせり上がり、噴き出す大地が蛇たちを次々と凪払う。


 そろそろ蛇を見るのもうんざりしていた所だ。

 ここで一気にかたをつけなくては。

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