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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
第4章〜Slithering Slaughterer〜
41/269

40. 地球って素晴らしい

Slither

[動](自)ずるずる滑る;滑り降りる

―(他)…をずるずる滑らせる

――[名]ずるずる滑ること


Slaughterer

虐殺者,人殺し

「そしてこの大陸斜面の上に有るのが大陸棚です」



「……星野君」


「星野君!」

「ぅふぁい!?」


 せっかく寝ていたのに。


「今僕の指してるこの地点、どこだか分かります?」


 先生が明らかに怒りながら僕にそう問題を投げる。どこだか分かりますって、分かるも何もついこないだピーカブーと泳いだ場所だ。


「大陸棚」


 そう答えると先生は驚いた様な顔をした。


「そ、そう。この大陸棚は――」



 何処か遠くで、チャイムの鳴る音がした。丁度いい目覚ましの音。


「っしゃー終わりだぁー」



 どこかで巧がそう騒いだような気がした。二度寝が出来るとか最高だ。先生ありがとう。感謝の気持ちをよそに僕はまた寝た。


「星野くーん」


「星野くん!」


 何やら騒音が聴こえる。僕の安眠を妨げる不届き者は誰だと、仕方なく見あげたらそこには制服に隠された猥褻物があり、思わず飛び起きた。



「星野くんってば!」

「は、はと、鳩峰さん……」


 巧の狙っている巨乳だ。


「今度の体育祭の事なんだけど、どの種目に出るの?」

「体育祭?」


 言われてみれば鳩峰さんは体育祭実行委員だ。二重生活でちょっと疲れが溜まっていて、非宇宙世界と地球での出来事が何だかごちゃ混ぜになっている気がする。


「鳩峰さんは何に出るの?」

「四人五脚」


 あんな面倒臭そうな競技によくもまあ。


「巧は何に出るの?」

「四人五脚に決まってんじゃん」


 コイツは多分、鳩峰さん目当てだ。


「じゃあ私も四人五脚に出ようかな?」


 天野さんも鳩峰さんの後ろからそう声をかけてきた。


「じゃあ後一人か~」

「じ――」

「じゃあ巧がやるならやろうかな」


 考えるのも面倒で投げやりにそう答えると、鳩峰さんがニッコリと笑った。今誰かが発言した気がするが気のせいかだろうか。


「じゃあ決定だね! 空ちゃんと私と星野くんと巧くんだね!」


 鳩峰さんがそう嬉しそうに言ったものだから、頬が緩む。その表情を見て、たまにはこっちの交流も大事にしないといけない気がした。宇宙人よりも地球人の方がやはり接しやすい。






「ちくしょうリア充め……氏ねじゃなくて死ねよ……」

「木本くん、落ち着いて」



「そうだ、星野くん」

「うん?」


 体育の後、伊集院くんがふと声を掛けてきた。更衣室での出来事だ。


「後で渡したい物があるから、今日中にでいいからちょっと寄ってってね」

「分かった」

「じゃお先に~。更衣室の鍵も任せた」


 それにしても今日の体育は何だか疲れてしまった。最近全く部活にも顔を出してないし、ちゃんとしなくては。


「お前転びすぎだろ~」

「それはだって……」


 今日は体育祭で行う競技の練習をしていた。まさか四人五脚で鳩峰さんの胸を至近距離で拝めるとは。いや考えてみたらこの間拝んだか。

 後は転びそうになった時に天野さんが咄嗟に僕の腕を取って引っ張ってくれた。今日はなんだかいい日だ。


「つ、つーかお前下心見え見えなんだよ」

「うるせーなー、お前だって」

「僕は決して下心が有った訳じゃなくてだな」


 そんなやり取りを巧としていたら、もう次の授業の始まる時間だ。


「やばっ、早くしないと時間が……」

「あっ、ホントだ」


 そして、放課後。


「気をつけー、礼ー」


「んじゃな!」

「おう!」


 何だかんだで今日もこっちでは平和な一日だった。問題はこっちではなくて『あっち』な訳だが。


 巧と別れて僕はまたいつかの廃墟へと向かっていた。この廃墟も初めは何だか怖かったが、今では来るのが楽しみになってしまっているぐらいだ。埃の匂いも心なしかフレンドリーに感じる。

 地下の広間で巨大な蜘蛛を倒したのもいい思い出。


「エリアX、X-CATHEDRA(エクス・カテドラ)本部」


 ただ、あの時のナナのモノマネと言うか、不気味な怪物の声は思い出すだけでも未だに鳥肌が立つ。そう言えば、僕はナナの犬種を知らない。どんな種類なんだろう。



「思ってたより来るのが早かったね」

「そうかな?」

「友達は大事にしておいた方がいいよ」


 到着早々伊集院君からそんな言葉が飛来する。


「どう言うこと?」

「A型魔法使いの地球人によく見られる傾向なんだ。ある日突然宇宙人が現れて『はいあなたは魔法使いです』と通告されて魔法世界に飛び込み非日常的な生活を歩み始めると、こっちにのめり込んで本来居た世界での交流関係が全て破綻する」


「そうなんだ」

「でも一通りこっちの世界を理解しちゃうと、そっちの世界が恋しくなるって人が99%を占めるからね。元の世界の繋がりは大事にした方がいいよ」


 そこまで言われると、最近巧と遊びに行ってない気がする。


「うん、そうする」

「で、来て貰った本題だが、今日は給料日だぞ」

「給料日……あ!」


 すっかり忘れてた。給料日。貰った報酬は金銭の場合手数料が引かれる事になっているけれど、手数料ぼったくりとかはされてないだろうか。


「給料は受付で受け渡しだから、行ってらっしゃい」

「受付?」

「そうだよ。終わったらまたここに来てね」


 なぜそんな面倒臭いシステムなのか、僕には理解できない。


「分かった、行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」


「給料日かぁ……」

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