38. スターズの会合
人の帰還を告げるワープ音が扉の向こうから聞こえる。
「ピアース」
「……」
「な?」
「ああ」
どうやらピアースが帰還したらしい。
しかしピアースとスマートは、どうも私の知らない何かを共有しているみたいだ。
「なんだなんだ、ピアースもやられたのか?」
ああ、そう言う事か。
「何なんだあれは!」
「伏兵、だな」
「そんなにヤバい奴なのか」
声を察するに、扉の向こう側にいるのはスマートとピアースそしてセルヴォLだ。
話している内容もまたあの地球人の話だろう。最近、スターズの間では一人の地球人の話題で持ち切りだ。
「ヤバい。オマケにちゃっかりしてる」
「ちゃっかり?」
「遺跡の壁をぶち抜いておきながらその罪を俺に擦り付けてきた」
「なんだそれは、傑作だな」
しかし……そろそろ部屋に入らなくてはいけない。私はドアノブを手に取り勢い良くドアを開けた。
「騒がしいですね」
「ファントム様」
「スマートに続き、ピアースもですか……情けない」
2人が驚いたような目で一瞬こちらを伺う。
自分とて扉の後ろに潜んでいた訳では無いのだが、話を聞いてしまっては仕方がない。
「申し訳ありません」
「ふむ。放置しておくのは危険ですねぇ」
星野彗。
最近X-CATHEDRAに現れた、地球人の男。
此方から潜入させていたスパイによれば、どうも彼は魔法使いに最近進化した様子だった。
しかしスマートの兵器を排除したとの事で後日ハブルーム星にこっそりと行ってみた時にその残留魔力の波長を見て、私はその名を独断でブラックリストに放り込んだ。
波長が、あの歩くラグナロクと同じだったのだ。
宇宙最強の生物とも言われる、その魔力と波長が瓜二つであった。
もし彼が純粋に『救世主』こなの魔力を受け継いで進化したコピー体だとしたら。
それは前代未聞の異常事態だ。
未だかつて、そんな物が存在した事は無い。
未だその男の実力などは未知数であったが、なるほどどうやらブラックリストに入れて正解だったようだ。
暗い会議室をざっと見まわすと、今会議に出席していないのはセルティネスとデュセルヴォR。そう言えば、次に彼と接触する確率が最も高いのはセルティネスだ。
「……あなた達は引き続き幹部としての仕事を全うしなさい、私はセルティネスとコンタクトをとる」
その時セルヴォLがびっくりしたような声を上げた。
「セルティネスですか?」
「そう、セルティネスです。考えがあります。座標を」
「……」
手渡された座標が指していた場所はラルリビのサーペン火山。
彼処は確か彼女の一族が根城を構えていた場所。今X-CATHEDRAには、その周辺に対する依頼がそこの幹部から着ているのだ。
「分かりました」
ぐずぐずしている場合ではない。
立て続けにルナティック・スターズと接触しているのなら、セルティネスにも接触をする可能性があるのだ。
それならば、そのタイミングで自分の目でそれを見極める必要がある。
「お気をつけて」
「何、戦いに行くわけではない」
スマートの言葉を借りるなら、知恵の種を一粒与えるだけだ。




