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魔法使いは銀河を駆ける  作者: 星キノ
別視点〜Separate Sights〜
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36. ブラックホール

「はあ……それにしても、なんでまた懲りずにこんな事をするのかな……」


 こな・レジーナ。

 メタリック帝国レジーナ朝第2皇女。

 姉マヨカの皇位継承権放棄宣言により、皇位継承権は繰り上げ第1位。

 そんな彼女の正体は、宇宙が滅亡の危機に晒される際に現れるとされる『救世主』の称号を持つ者で、この宇宙で最も魔力量の多い生命体でもある。

 その魔力量は常人を1だとすると、こなの魔力量は京を超える。

 文字通り宇宙最大の生体兵器であり、単一で宇宙のパワーバランスを破壊する、どうして生命体として存在していられるのかすらも分からない意味不明な女だ。


 ……肩書きだけを並べると凄そうに見えるが、その実態と言うか中身は本当に自由人というか、自分本位な女というのが自分の感想だった。


 自分がチートじみたスペックである事を思いっきり鼻に掛け、好き勝手に行動をする。権力も金も全力で悪用するし、自分に宿っている無限とも言える魔力も必要に迫られれば惜しげも無く使う。


 それが、こな・レジーナと言う女。


 今回もそうだ。

 また屋上ドームに無駄にデカい風穴を開けやがった。どうせ訳の分からない破壊光線でもぶっぱなして壁とかを抉りとったに違いない。

 施設の修復をするのはいつも自分だ。この規模を修復するとなると流石に体への負担が大きいのに。


「どれ……」


 スカウターで屋上ドームの負傷具合をチェックして、ガックリとうなだれる。

 酷い。


「メインブラックホール1つとサブブラックホールを7つやられたか……」


 この宇宙には『戦闘』と言う文化がある。

 戦闘がどんな物かはアクションゲームとかロールプレイングゲームをやったことある人なら大体検討つくだろう。

 大きく分けて2つあり、片方はスポーツとしての戦闘。もう一つは本来の意味での戦闘だ。


「【ブラックホール(ベントノアール)】」


 スポーツとしての戦闘は主にこう言ったドーム等の広いスペースで行う。

 そしてドームの周囲には、俺が唱える呪文によって出現する人工ブラックホールやワームホール、障壁に時間魔法やバリアなどが無数に存在し、周囲へ戦闘の被害が出ることを防いでいる。


「【物体修復(レノベート)】」


 ――修復魔法を唱えても壁は瞬時には直ってはくれない。仕方がない事とは言え、イライラする。

 しかも壊れている範囲がだいぶ広い。いくら魔法でも常人では直す事すら出来ないだろう。必要な魔力が多すぎる。


 ……こなが京の世界という理解に苦しむ領域にいるから全員霞んでしまうが、俺だって魔力は億単一で保有している。その億単一の魔力を注がないといけないレベルで木っ端微塵と言うと被害状況が分かりやすいだろうか。


「【反復魔法(レペティス)】」


 ブラックホールのある理由は、戦闘をする際に生じる光線やミサイルにその他大量破壊兵器レベルの物を吸い込み、町や星を守り自重せずに楽しく戦闘を行うためである。

 ちなみに、ブラックホールは物を吸い込んでいくとやがて蒸発する。こなの破壊光線は沢山のブラックホールを瞬時に蒸発させた訳だが……


「これでよし」


 我ながら良い出来だ、ピカピカの新築みたいだ。

 ブラックホールは自分で生み出した固有魔法だ。

 この固有魔法による収入だけでもかなり食っていける。


「おっ、ザント」

「……チッ」


 自分の修復術を自画自賛していると、ザントが大きな音を立てながら空間転移(ワープ)で出現した。恐らくは負けて拗ねている。


「落ち込まないで」

「別に落ち込んではいない。ただ俺の力が及ばなかっただけだ」


 ザントは昔からの友人と言うか、幼馴染みと言うか。同じ師匠の元で昔は良く一緒にトレーニングをした。


「こなに傷ひとつ付けられないのは普通の人なら当然のことだから……」

「うるさいぞ」


 ザントの槍術はこなのそれに匹敵する。生まれながらの槍使い。

 一方の自分は剣使いだ。自分の使う武器は双剣。同じ師匠に師事していたはずだが、使う魔法や武器などはまるで違っている。


「指一本触れることすらままならないのは常識的な生き物の範囲内にある証左なのだから、むしろ誇ってもいいと思うよ」

「……このドームより貴様のサディスト精神を先に治した方がいいぞ」


 ついつい悪い癖が出るのを咎められる。

 こんなやり取りも昔からのものだった。


「ごめんごめん」

「……こなは?」

「資料見に行ったよ」


 ザントは俺がX-CATHEDRA(エクス・カテドラ)に引き入れた。提携先の一つとしての直接交渉をしたのも俺だ。


 この宇宙を守っていく上ではどうしても裏方仕事をしなければならない時が存在する。

 そんな時にそれを行う出先機関として、ザントの組織とは戦略的に提携しているのだ。

 リーガル部門はピンキー率いる宇宙警察に協力をお願いすることもあるが、それが出来ない時の奥の手というものだ。


「そうか」

「しかしまあ、よく本気のこなと戦うなんて無謀な事をするね。有限の魔力では話にならないことはもちろん理解して挑んでいるんだよね?」

「……」


 サングラス越しの殺人視線と目が合う。


「……」

「じゃ、仕事は終わったし僕は失礼するよ」

「……チッ」

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